1. はじめに
多くの企業にとって、売上を支える営業の役割は極めて重要ですが、日々の受注処理や顧客クレーム対応、短期的なキャンペーン施策などに時間を取られてしまい、じっくりと戦略を練る「緊急ではないが将来的に重要」な取り組みを後回しにする状況は珍しくありません。しかし今後、競合環境が激化し、顧客ニーズが多様化する中で、営業プロセスを根本的に見直し、長期的な視点で戦略を再構築することは、企業の持続的成長において欠かせない要素です。
こうした「ついつい後回しになりがちながら、将来を大きく左右する」領域こそが、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」によってフォーカスされる部分です。具体的には、経営トップや管理職が“今すぐ売上に直結しないが長期的に不可欠な仕事”を後手にしないために、定期的に“第二領域会議”を設け、そこで第一領域(緊急かつ重要)を一切扱わないルールを貫くのが特徴です。さらに、第一領域の業務をできるだけマニュアル化や権限委譲で現場に任せることで、トップや幹部が未来に向けたイノベーションや戦略立案に時間を割ける体制を作るわけです。
本稿では、この“第二領域経営®”の考え方を営業戦略の分野に適用し、「どうすれば営業活動を短期売上確保だけの打ち手ではなく、中長期視点で強固な競争力を築くためのエンジンとして位置づけられるか」を探っていきます。まずは営業戦略がなぜ後回しにされやすいのか、その背景を整理し、次に“第二領域経営®”が営業変革にどのような効果を発揮するかを示しながら、具体的な導入ステップや注意点を考察していきます。
2. なぜ営業戦略が後回しになりがちなのか
企業における営業は、日々顧客からの問い合わせや発注、クレームなど“緊急かつ重要”な業務が多発する部門であり、とにかく先月・今月・来月の売上目標を追いかける日々に追われるのが定常化しているケースが大半です。この結果、中期的・長期的に見た顧客との関係強化策や新規市場開拓策、営業プロセスの改善やデジタルツールの活用といった“将来に向けての投資的取り組み”が後回しになりがちです。具体的には以下の構造が考えられます。
まず、月次や四半期ごとの売上ノルマ優先という企業文化があります。営業スタッフや部門長は「今期の売上を達成しなければいけない」というプレッシャーのもと、既存顧客への受注確保や直近の案件フォローに時間をかけざるを得ません。そうなると、将来の顧客獲得のためのマーケティング施策や新製品開発との連携、さらにCRMやSFAといったシステムの導入など、「今すぐ数字には直結しないが大切」な改革作業が先送りになります。
さらに、営業現場では顧客クレーム対応や緊急出荷、突発的な納期変更などイレギュラーの発生が日常茶飯事です。そうした“火消し”が優先されるため、いかに効果的な営業プロセスを設計するか、といった根幹の議論に時間を割く余裕が得られません。もしトップや管理職も“火消し”対応に追われていると、組織的に変革のきっかけを作る場がなくなるでしょう。
加えて、短期的な数字を上げる手段(値引きやキャンペーン)に頼りがちで、顧客の真の課題に踏み込んで関係構築を図るような長期戦略は後回しになるケースがあります。社内で“新規顧客の開拓法”や“顧客のLTV(顧客生涯価値)を最大化する戦略”をちゃんと練る機会がないまま、日常的な飛び込み営業や電話営業、担当者の人脈頼みで営業活動が回ってしまう企業も少なくありません。
3. 「第二領域経営®」の概要と営業戦略への応用
こうした状況を変革し、営業を単なる“目先の売上確保”ではなく、中長期的な顧客基盤強化やイノベーションの源泉に変えていくために、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」が有用です。そのポイントは主に以下の二つです。
第一に、“第二領域会議”の定期開催があります。経営トップや営業幹部が週や月ごとに1〜2時間など時間をブロックし、そこでは第一領域(売上速報やクレーム対応)の話題を扱わないルールを徹底します。代わりに、将来の顧客獲得策や市場開拓、CRM導入、営業チームの育成など“緊急ではないが重要”な議題に絞り込むことで、先延ばしを防ぐわけです。
第二に、第一領域業務の権限委譲とマニュアル化を進めるアプローチがあります。トップや管理職がいつまでも細かいクレーム処理や顧客の納期調整にかかりきりだと、“第二領域会議”を開催してもすぐ呼び戻されて機能しないリスクが高いです。そこで、営業事務や定型的なクレーム対応はマニュアル化し、現場リーダーや事務スタッフに権限委譲してトップが呼び出されない状態を作ります。これにより、経営陣や管理職が“第二領域会議”に専念でき、時間を割いて深い議論を進めることが可能になります。
4. 営業戦略を強化する具体的ステップ
では実際に、営業戦略を“第二領域経営®”でレベルアップさせるためにはどのようなステップを踏めばいいか、主な流れを示します。
4.1 現状の営業プロセスと課題の可視化
まずは“第二領域会議”で、現在の営業活動がどのように行われているかを改めて洗い出します。具体的な項目としては、ターゲット顧客の設定、顧客との接点チャネル(訪問、電話、オンラインなど)、使っているツール(CRMソフトやSFA)、顧客への提案プロセス、商談からクロージングまでの平均期間などです。そこから、課題をヒアリングやデータ分析で浮き彫りにします。例えばリードが不足しているのか、既存顧客への深耕が足りないのか、担当者ごとに営業手法がバラバラなのか、などを把握したうえで問題の優先度を合意します。
4.2 目標設定と戦略オプションの提示
次に、中期的にどんな営業体制や売上構造を目指すかを“第二領域会議”で合意します。例えば「来年までに新規顧客を100社増やす」「既存顧客のリピート率を20%高める」「営業担当1人当たりの商談数を○%改善する」といった具体的KPIを設定し、それを達成するためにデジタルマーケティングを強化するのか、営業人材を増員するのか、代理店と組むのかなど複数の戦略オプションを検討します。ここでは一度に全部やろうとせず、優先度の高いテーマから着手することがポイントです。
4.3 第一次アクションプランの策定と進捗管理
“第二領域会議”で特定の施策(例:CRMの導入やオンライン商談体制の整備など)を正式決定し、担当者とデッドラインを明確にします。これまで後回しになっていた導入検討などを週や月の会議で進捗確認し、問題があればトップが追加リソースや外部コンサルを承認する形を取ります。こうして小さくPDCAを回すことで、営業チームが新しいやり方を実装しやすくなるわけです。
4.4 拡張と文化醸成
一定の成果が見えてきたら、成功した施策を横展開し、社内全体に共有します。担当者個人の努力や属人的な知識を蓄積しているのではなく、組織としての営業ナレッジとしてマニュアル化や研修に落とし込むことが重要です。こうして“営業イノベーションを続けていく”文化が育つよう、“第二領域会議”で定期的に新しい施策候補を検討し続けると良いでしょう。
5. 成功事例と注意点
“第二領域経営®”を導入した企業の事例では、経営トップが週1回の会議で“売上報告・在庫・クレーム”といった緊急課題を一切扱わず、CRMの活用や新規顧客のターゲッティングなどを議題にした結果、数か月のうちに営業担当全員が新ツールを使いこなし始め、顧客管理の精度が大幅に高まったという成功ストーリーがあります。トップが第一領域をマニュアル化して権限委譲したため、トラブルが起きても会議がキャンセルされることなく継続し、施策の進捗が止まらなかったことが要因だと言われています。結果的に顧客データの把握や提案履歴の共有がスムーズになり、セールスのクロージング率が向上したとのことです。
一方で注意点としては、形骸化のリスクが挙げられます。会議を設定しても、トップが顧客クレームで呼び出され続ければ開催できませんし、“第二領域のテーマ”の範囲が曖昧になると第一領域の話題が混入して結局火消し議論に終始してしまうこともあり得ます。また、せっかく戦略を決めても部門間連携が弱く、営業以外のサポート部門が協力しなければ成立しない施策が進まないという事態も起こりがちです。これを防ぐには、部門長や関連担当者を“第二領域会議”に参加させ、合意形成を徹底する運営が欠かせません。
さらに“失敗を許容する”文化がない企業だと、“新しい営業手法を試す”ことが担当者にとってリスクと見なされ、どうしても保守的なやり方に逃げる傾向が強まります。ここでトップが「失敗も学習の一環である」と組織にメッセージを発し、“小さく試して結果をレビュー”するアジャイルな進め方を推奨すると成功率が高まります。すなわち、第二領域会議で小規模なテストを承認し、失敗しても責めずに次回会議で分析し、次の施策につなげるPDCAサイクルを回すわけです。
6. まとめ
営業は企業の売上を支える重要な機能ですが、どうしても“今月や今期の数字”に追われて、長期的視点の戦略策定やプロセス改革が後回しにされやすい構造があります。そこを解決し、営業を継続的に進化させる仕組みとして、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」が注目される理由は明白です。“第二領域会議”の導入と第一領域業務のマニュアル化・権限委譲を行うことで、経営トップや営業幹部がしっかりと中長期の視点で営業戦略を議論し、施策を実行に移せる時間を確保できます。
具体的には、まず現状の営業プロセスと課題を“第二領域会議”で可視化し、次に目標やアクションプランを合意し、担当者に責任を持たせてPDCAを回し続ける流れが効果的です。導入後も形骸化を防ぐために、会議のルール(第一領域話題を持ち込まない・定期開催)を厳守し、部門間連携やフィードバック共有を徹底することで、結果的に新しい営業手法やツール導入、顧客データ活用、チーム全体のスキルアップなどが可能になります。
営業は短期志向が強い領域だからこそ、あえて“第二領域の視点”を導入して長期的競争力を磨かなければ、世界的な競争の波の中で埋もれてしまうリスクがあると言えます。“第二領域経営®”を活用した計画的な営業戦略の再構築は、単なる目先の売上増ではなく、顧客との持続的関係を築き、イノベーションを生み出す基盤を作る道筋となるでしょう。