インドネシア公共事業・政府プロジェクト入札制度 実務ガイド インドネシア公共事業・政府プロジェクト入札制度 実務ガイド

インドネシア公共事業・政府プロジェクト入札制度 実務ガイド

インドネシア公共事業・政府プロジェクト入札制度 実務ガイド

はじめに
インドネシアではインフラ整備や公共サービス向上のため、毎年数多くの公共事業プロジェクトが政府によって発注されています。インドネシア進出を目指す日本企業にとって、こうした政府調達案件は大きなビジネスチャンスとなり得ます。しかし、入札制度や関連規制について十分な理解と準備がなければ、プロジェクトへの参加は容易ではありません。本ガイドでは、インドネシアの公共事業・政府プロジェクト入札制度の基礎知識を網羅的に解説し、参加に必要な実務ポイントを整理します。さらに、日本企業向け支援サービスを提供するOne Step Beyond株式会社によるサポート内容についても簡単に触れます。

目次

  1. インドネシアの公共調達制度の概要
  2. 参加可能なプロジェクトの種類(中央政府・地方自治体・国営企業)
  3. 外資系企業が参加できる枠組みと条件
  4. 入札への参加資格要件(登録制度・技術実績・財務条件)
  5. 電子調達システム(LPSE)と国家調達庁(LKPP)の役割
  6. 入札手続きの流れ
  7. 入札書類の準備と提出要件・注意点
  8. 贈収賄防止・倫理規定とコンプライアンス
  9. 落札後の契約履行と検収手続き
  10. 日本企業向けアドバイスとOne Step Beyond社の支援内容

1. インドネシアの公共調達制度の概要

1-1. 規制の根拠と制度の特徴

インドネシアの政府調達(公共調達)制度は、政府機関による物品・サービス・工事の購入手続きを統制する枠組みです。主要な規制根拠として、2018年大統領令第16号「政府調達に関する大統領令」が挙げられます(同令は従来の2010年大統領令第54号を廃止し手続簡素化を図ったもの)。さらに2021年の改正大統領令第12号等により一部改訂が行われています。この制度では、公正・透明・効率的な調達を確保し、国産品の優先や中小企業の参入促進といった政策目的も組み込まれています。

政府調達制度のもと、各発注機関(各省庁や地方政府など)は事業計画に基づき調達を実施します。各機関には調達実施責任者(PPK: Pejabat Pembuat Komitmen)が任命され、個々の案件について予算範囲内で調達計画・入札仕様書を作成します。調達の際には事前に自己査定価格(HPS: Self-Estimated Price)と呼ばれる参考見積価格が設定され、これは当該入札における上限価格の目安となります。入札者は提示されたHPSを超えない範囲で入札する必要があり、落札価格が適正か判断する基準の一つとなります。

契約形態についても制度上で定められており、案件の性質に応じて一括契約(Lump Sum)単価契約(Unit Price)、両者の組み合わせ、ターンキー契約、あるいは枠組み契約(Framework Agreement)等が採用されます。サービス業務の場合は時間積算方式の契約が用いられるケースもあります。契約形態の選択は発注内容と予算に応じて行われ、契約条項上で明示されます。

1-2. 国家予算制度との関係

インドネシアの政府調達は、その財源である国家予算(APBN)または地方予算(APBD)と密接に連動しています。中央政府の公共事業であれば毎年国会で承認されるAPBNから拠出され、地方自治体の事業は各自治体のAPBDに基づいて実施されます。言い換えれば、政府プロジェクトは当該年度の予算に計上されて初めて入札に付すことが可能です。このため、年度初頭(インドネシアの会計年度は1月~12月)には新規予算に基づく入札公告が集中する傾向があります。

また、インドネシア政府は国産品優先(TKDN規制)の方針を掲げており、政府調達において国内で一定以上生産・調達された製品を優先する義務があります。たとえば、調達品目の国内調達率(TKDN)が40%以上であれば「国産品」とみなされ、原則として政府は仕様を満たす限り国産品を調達することとされています。近年はこの運用が一段と厳格化されており、政府は「調達品の95%を国産品で賄う」という目標を掲げ(2023年時点)輸入品調達の抑制を図っています。その結果、例えば医療機器など多くの部品を輸入に頼る製品は、現地生産・組立や部品の国産化が一定水準に達しない限り政府調達品目から除外されるケースも出ています。日本企業にとっては、自社製品のインドネシア国内生産や現地調達率を高めることが、政府案件を受注する上で重要な要素となっています。

さらに、インドネシアの公共調達制度は中小零細企業(UMKM)や協同組合の優遇も特徴としています。一定金額以下の小規模調達案件については、インドネシア人経営の中小企業や協同組合に限定して発注するルールが設けられています。これにより、零細・小規模事業者の受注機会を保障し国内経済への波及効果を高める狙いがあります。そのため大規模案件以外では、外国企業や大企業は入札参加資格が与えられない場合もあり、後述するように外資が参画できる案件には下限金額等の制約が存在します。

2. 参加可能なプロジェクトの種類(中央政府・地方自治体・国営企業)

インドネシアの公共調達は、大きく分けて中央政府機関地方自治体、そして国営企業(BUMN)による調達に分類できます。これらはいずれも公共性の高いプロジェクトですが、予算の出所や発注主体が異なります。それぞれの概要と特徴は以下の通りです。

  • 中央政府のプロジェクト: 中央省庁(例:公共事業・国民住宅省、運輸省、エネルギー鉱物資源省など)や国家機関が発注する事業です。資金は国家予算(APBN)から拠出され、主に全国的・広域的なインフラ整備や国家計画に基づくプロジェクトが対象となります。入札は各省庁の調達委員会によって実施されますが、その基本ルールは前述の大統領令等で定められた共通の政府調達制度に従います。
  • 地方自治体のプロジェクト: インドネシアの各州・県・市など地方政府が発注する事業です。資金源は地方予算(APBD)や特定交付金で、地域インフラ(道路、上下水道、学校施設等)や地方行政サービスに関連するプロジェクトが中心です。調達手続きは地方政府ごとに行われますが、基本的には中央政府と同様の調達規則・電子入札システムが適用されます。地方自治体ごとに入札公告サイト(LPSE)が設けられており、地域に根ざした中小企業が多く参加する傾向にあります。
  • 国営企業(BUMN)のプロジェクト: インドネシア政府が出資する公企業(例:国営電力会社PLN、国営石油会社プルタミナ、国営建設会社など)が実施する調達です。国営企業は商業企業でありながら公共性が高いため、その調達プロセスも政府調達と似た透明性・競争性が求められます。各社ごとに調達規定やシステムを持ち、一部は政府調達庁(LKPP)の電子カタログ等も活用しています。国営企業案件は大型インフラやエネルギー開発が多く、技術的難度が高い反面、予算規模も大きいのが特徴です。国営企業の入札は厳密には政府調達法の直接の適用外ですが、実務的には政府の方針(例えば国産品優先や中小企業参加義務など)を強く反映しています。

以上のように、中央政府・地方自治体・国営企業のいずれのプロジェクトであっても、基本的な入札参加の流れや要求される手続きには共通点があります。ただし発注機関の種類によって予算規模や競争環境が異なるため、日本企業としては自社の事業分野に応じてどのレベルの発注主体の案件を狙うか戦略を立てる必要があります。例えば、地方自治体案件は比較的小規模でローカル企業の競争が激しい一方、国営企業案件は巨大ですが高度な実績や資金力が求められる、といった違いがあります。

3. 外資系企業が参加できる枠組みと条件

インドネシアの政府調達案件に外国企業が参加する場合、いくつかの参画形態と制約条件があります。日本企業を含む外資系企業が入札に関与する典型的な枠組みは以下の通りです。

(1) 外国企業として直接入札参加(国際入札への応札):
インドネシア政府は、国内企業では対応が難しい大型・特殊案件に限り国際入札を実施し、海外法人にも直接応札機会を認めます。ただしその対象は非常に限定的です。現行の規定では、外国企業が直接参加できる政府調達案件は建設工事で契約額1兆ルピア超物品・一般サービスで500億ルピア超コンサルティング業務で250億ルピア超に該当する大型案件に限られます。これらの金額閾値を下回る案件については、基本的に国内企業(インドネシア企業)のみが入札参加者となります。例外的に、要件を満たす国内事業者が皆無である場合などに限り、規模が閾値未満の案件でも外国企業の参加が認められるケースがありますが、非常に稀です。

さらに、国際入札に参加する外国企業には現地企業との協力が義務付けられています。具体的には、外国企業が単独で落札した場合でも、契約履行にあたってインドネシア国内企業と何らかの形で協業する必要があります。例えば、建設工事であれば現地企業を下請け(サブコン)に起用したり、技術移転やスペア部品供給・アフターサービス提供のためパートナーシップ契約を結ぶことが求められます。こうした取り決めは契約条件に組み込まれ、履行状況の報告が義務化されます。これは国外企業の単独受注によって国内産業育成が阻害されないよう配慮した措置です。従って、日本の本社法人が直接インドネシア政府案件に入札する場合、技術力・資金力に加え、信頼できる現地協力会社の確保が成功の鍵となります。

(2) インドネシア現地法人(PT現地法人)経由での参加:
より一般的なのは、日本企業がインドネシアに設立した現地法人(PT PMA)を通じて入札に参加する形態です。インドネシアでは外国資本が株主となる現地法人(PMA=Penanaman Modal Asing)であっても、その会社自体はインドネシアの法律に基づき設立された法人です。適切な事業許可を取得し必要な要件を満たせば、インドネシア企業として政府調達に参加できます。例えば日本企業A社がインドネシアに全額出資で子会社PT ABCを設立した場合、PT ABCは国内企業とみなされ、外資比率による入札資格の差別は基本的にありません(もっとも、業種によって外資出資比率制限があるため、事前の現地法人設立段階で注意が必要です)。

現地法人であれば、小規模案件から大型案件まで幅広い入札に参画可能ですが、ただし中小企業向けに限定された案件には参加できない場合があります。インドネシアの調達制度上、特定の小規模案件は中小零細企業(内資に限る)に優先枠があるため、大企業として分類される現地法人(外資PMAを含む)はそうした案件には応募不可となります。一方で、ある程度の規模以上の案件では、外資系であっても現地法人である以上はローカル企業と同等に扱われます。日本企業にとっては、まずインドネシアでの法人設立・ライセンス取得を済ませ、その法人名義で入札に臨むのが一般的な戦略です。この場合、実務上は社内の日本人スタッフや日本本社がバックアップしつつ、法人自体はインドネシア拠点として手続きを踏むことになります。現地法人を用いることで、現地銀行からの保証取得や税番号取得など入札に必要な諸要件をクリアしやすくなる利点があります。

(3) ジョイントベンチャー/コンソーシアム(共同企業体)として参加:
三つ目の形態は、インドネシア企業と外国企業が共同企業体(Joint OperationやConsortium)を組んで入札する方式です。現地で「KSO(Kerja Sama Operasi)」と呼ばれる契約形態で、特定プロジェクトの遂行を目的に複数企業が連帯して応札・契約を行います。日本企業にとっては、実績や技術を持つ現地有力企業とのコンソーシアムを組むことで、単独では参加が難しい大型案件にも参画しやすくなります。ジョイントベンチャー形態では、各企業が役割分担し、契約上は連帯責任を負います。一般的に代表企業(Leading Firm)を現地企業とし、日本企業はパートナーとして技術や資機材提供を担うケースが多く見られます。

コンソーシアムでの入札参加には、共同企業体協定書(Joint Bidding Agreement)を事前に締結し、入札書類提出時にその写しを添付する必要があります。協定書には各社の出資比率や責任範囲、代表者などを明記します。インドネシアの調達制度では、共同企業体メンバーのうち少なくとも一社が資格要件を満たしていれば参加が認められる場合もありますが(案件により細則あり)、実際には主要要件を各社それぞれが備えることが期待されます。また、共同企業体構成員も落札後は単独入札時と同様の義務(例えば税務・法令遵守や保証金提供など)を負うため、事前にパートナー間で役割とリスク分担を明確化しておくことが重要です。

以上のように、日本企業がインドネシア政府プロジェクトへ参画するには、直接入札・現地法人経由・共同企業体参加といった複数のルートがあります。一般に、まずは現地パートナー企業との協業や現地法人設立によって足場を固め、現地の商習慣や制度に慣れた上で本格的な大型案件に挑戦するといった段階的アプローチが推奨されます。

4. 入札への参加資格要件(登録制度・技術実績・財務条件)

実際にインドネシアの公共調達入札へ参加するには、企業として一定の資格要件・事前手続きを満たしておく必要があります。主なポイントとなる登録制度技術的実績要件財務上の条件について解説します。

(1) 供給者登録(事前登録)制度:
インドネシア政府の入札に参加する企業は、原則として事前に電子調達システム(LPSE)上の供給者登録を完了させ、公式の業者IDを取得しておく必要があります。LPSE登録では、企業基本情報(社名、所在地、代表者)、設立証書、取引許可証(事業許可証/営業許可: NIBやSIUP等)、納税者番号(NPWP)などの証憑をオンラインで提出し、審査を受けます。国外企業が直接参加する場合も、入札参加前に所定のフォーマットで書類提出・登録を行いID発行を受けなければなりません。登録内容はLKPPの管理するデータベースに蓄積され、一度登録すれば各発注機関のLPSEで共通に利用できます(ただし情報更新や有効期限管理に注意が必要です)。

特に建設工事分野では、別途建設業許可(IUJK)の取得や、建設業者等級登録も重要です。建設分野の現地法人は、国家建設業サービス発展委員会(LPJK)による企業格付け審査を受け、業種別・等級別の認定を得る仕組みがあります。大規模工事を落札するには最高ランク(Utama)の資格や、専門技術者の保有(技術者資格証明SKAなど)が必要となります。よって、参入分野に応じて所定の業法上の免許や認証を事前に取得・登録しておくことが入札参加の前提条件となります。外国企業が直接入札する場合でも、提携先の現地企業がこれら資格を保持しているかがチェックされます。

(2) 技術実績・過去の経験に関する要件:
政府調達では、入札参加者に対し過去の業務実績技術能力が求められます。一般に、公告時の資格要件として「直近○年間に類似プロジェクトの経験を有すること」「規模△以上の工事を完了した実績があること」などの条件が明示されます。例えば建設案件なら「同種工事で直近10年以内に契約額××以上の施工実績を1件以上有すること」といった具体的基準があります。物品調達でも「要求仕様と同等の製品を納入した実績○件以上」等が課される場合があります。

このため入札に際しては、企業の過去実績証明(完工証明書や発注者からの引渡し証明書など)を提出し、要件を満たすことを示す必要があります。共同企業体で参加する場合、メンバー企業間で実績を補完し合えるケースもありますが、基本的に主要メンバーはいずれも一定の実績を有していることが望ましいとされます。また技術者個人の資格・経験も評価対象となります。特にコンサルタント入札では、提案する専門家が「関連資格保有者で経験○年以上」など細かな要件が規定されます。施工系でも、プロジェクトマネージャーや主任技術者に国家資格や一定のキャリア年数を要求する場合があります。提出書類として履歴書や資格証(インドネシア人技術者の場合SKA/SKT、外国人の場合は学位証明等)が求められ、入札委員会が資格要件充足を審査します。

(3) 財務上の条件・信用力:
大規模プロジェクトほど入札者の財務的安定性も重視されます。一般的な要件として、自社資本金や自己資本額が契約予定額の一定割合以上あること、直近数年間の売上高や純資産が所定水準以上であること、などが挙げられます。応募時には財務諸表(貸借対照表・損益計算書)を提出し、経営の健全性を示すことになります。また銀行からの信用証明書(支援意向書)を要求されることもあります。例えば「当社は応募企業Xに対し、本プロジェクト遂行に必要な与信枠や融資を提供する用意がある」旨を記載した銀行発行レターを提出することで、資金調達面の裏付けとします。

さらに、入札段階で入札保証金(Bid Bond)の提出が義務付けられる案件も多くあります。入札保証金はプロジェクト金額の数%(通常3~5%程度)を上限に設定され、銀行保証状や保証会社の保証証券で差し出します。これは落札後の契約辞退や入札撤回を防ぐための担保で、落札者以外には後日返還されます。保証金を用意できるだけの信用力が必要であり、資金面でも十分な準備が求められます。加えて、過去に政府調達で不誠実な履行をしていないこと(ブラックリストに掲載されていないこと)も重要な信用要件です。LKPPは不正行為や契約不履行を起こした業者を一定期間入札参加禁止とするブラックリスト制度を運用しており、応募時に「当社は現在政府調達の参加禁止措置を受けていない」旨の自己申告を求められることがあります。もちろん日本企業が初めて参加する際はリスト非該当でしょうが、将来的にもコンプライアンスを守り信用失墜しないことが肝要です。

5. 電子調達システム(LPSE)と国家調達庁(LKPP)の役割

インドネシアの公共調達では、電子入札システム(LPSE) の活用が原則化されています。LPSEとは「Layanan Pengadaan Secara Elektronik」の略で、各政府機関が運用する電子調達サービスを指します。全国の中央省庁・地方自治体・主要公的機関にはそれぞれLPSEポータルサイトが設置されており、入札公告の掲載から応募書類の受領・開札・落札結果公表まで、一連のプロセスがオンライン上で行えるよう統一されています。

LPSEを利用するため、前述の通り企業は事前に利用者登録を行いIDとパスワードを取得します。ひとたび登録すれば、各機関のLPSEサイト上で公開される入札情報を閲覧し、参加申し込みや入札書類の電子提出が可能となります。LPSEシステム上では入札への参加表明(登録)、入札説明会のオンラインQ&A、技術提案書や価格見積書ファイルのアップロード、電子署名を用いた提出、開札結果の閲覧などが統合的に管理されます。これにより地理的に離れた企業も参加しやすくなり、透明性・効率性が飛躍的に向上しました。特に2020年代に入り、新型コロナ禍等の影響で非対面の手続き需要が高まったこともあり、現在ではほぼ全ての政府調達案件がLPSE経由で実施されています。紙媒体での提出や対面での開札は大規模案件など一部を除き減少傾向にあります。

LPSEの統括的な運営と調達行政全般を司っているのが、国家公共調達庁(LKPP: Lembaga Kebijakan Pengadaan Barang/Jasa Pemerintah)です。LKPPは大統領直属の政府機関で、インドネシア唯一の調達政策策定機関として位置付けられています。LKPPの役割は、調達に関する法令・規則の立案・改定、標準入札書式や契約約款の策定、各機関への調達実務の指導・研修、電子調達システム(LPSEや電子カタログ)の開発・管理など多岐にわたります。実際の各案件の入札執行自体は各省庁や地方政府の調達委員会が行いますが、その全体的な枠組みと指針を与えるのがLKPPです。

具体的には、LKPPは電子カタログ(E-Catalog)と呼ばれるオンライン商品データベースも運営しています。電子カタログには政府が調達可能な様々な製品・サービスが登録されており、各発注機関は入札を経ずに必要な物品をカタログから直接購入(E-Purchasing)することも可能です。カタログ掲載には一定の条件があり、サプライヤー企業はLKPPに対して製品登録の申請と審査を受けなければなりません。国産品優先の原則から、基本的に国産品だけがカタログ掲載され、輸入品は代替国産品が無い場合に限定されます。電子カタログの活用は、小額反復購入品の調達効率を上げる一方で、未掲載品目については引き続き個別入札が行われます。

要するに、LKPPがインフラとして整備するLPSE電子入札システムE-カタログは、インドネシアの政府調達における重要な柱です。入札に参加する企業としては、まずLKPP管轄の登録・システムに対応できるよう準備すること(利用者登録、電子証明書取得、担当者の操作習熟など)が不可欠です。また、LKPPは調達に関する公式情報やガイドラインを公開していますので、最新の規則改正や運用動向を常にフォローするようにしましょう。日本企業の場合、言語の壁がありますが、LKPPサイトは基本インドネシア語のため、現地スタッフやコンサルタントの協力を得て情報収集するとよいでしょう。

6. 入札手続きの流れ

ここでは、典型的な公開入札(オープンテンダー)の手続きフローを順を追って説明します。実際の案件では発注者により多少手順が異なることもありますが、一般的な流れは以下の通りです。

6-1. 事前準備と入札公告の確認

まず、入札に参加する企業側の事前準備として、前述の供給者登録(業者登録)を完了させておくことが前提となります。登録済みの企業は、各発注機関のLPSEサイト上で案件情報を検索し、自社の業務範囲に合致する入札公告を探します。公告にはプロジェクトの概要(工事/調達の名称、場所、規模)、発注機関名、入札参加資格要件、募集スケジュール(登録期限や提出期限等)、担当窓口などが記載されています。企業は公告内容を注意深く読み、自社が要件を満たすかを判断します。もし不明点があれば、後述の説明会やQ&Aの場で確認することになります。

公告後、参加希望者はLPSE上で当該案件への入札参加登録(エントリー)を行います。これは「○○プロジェクト入札に応募する意思があります」とシステム上で表明する操作で、所定の期限までに実施する必要があります。参加登録を行った企業のみが後日の詳細な入札資料(招標ファイル)をダウンロードできたり、質問を投稿できたりする仕組みになっています。参加登録の時点では資格証明書類などは提出しませんが、登録を済ませないと先に進めないため期限管理が重要です。なお案件によっては、参加登録前に資格審査(Pre-Qualification)が課される場合もあります。高額で高難度の案件では、入札前に書類審査や技術提案の評価によって有力企業を絞り込む「事前資格審査(PQ)」方式が採られることがあります。PQが行われる場合、その通過者(ショートリスト企業)のみが本入札に招請されます。

6-2. 入札説明会と質疑応答

入札公告後、応募登録した企業を対象に入札説明会(現地ではAanwijzingと呼ばれることもあります)が開かれることがあります。説明会は発注者側(調達委員会)が主催し、プロジェクトの詳細な説明や入札手続き上の留意点を共有する場です。昨今はオンライン上のフォーラムや質疑応答システムで代替される場合も増えていますが、大型案件では直接会場に招集して開かれることもあります。説明会では、発注者側から技術仕様書、設計図書、スケジュール、契約条件などについて説明があり、参加企業は不明点を質問できます。質疑応答で出た内容は議事録や補遺(アドエンダ)としてまとめられ、後日全参加者に共有されます。補遺には質問と回答、仕様書の修正事項等が含まれ、入札条件の一部変更が正式に通知されることもあります。

企業側にとって説明会・質疑期間は極めて重要です。疑問点を解消するだけでなく、競合他社の関心事項や発注者の意図を把握する機会となります。説明会に参加できなかった場合でも、LPSE上で公開される質疑応答記録を必ず確認しましょう。発注者からの回答や補足情報は、後々提出する入札提案の方向性や留意点に直結します。また質疑は決められた期限内にしか受け付けられないため、自社内で仕様を検討した上で早めに質問事項をまとめ、期限までに投稿することが大切です。

6-3. 入札書類の作成・提出と開札・評価

質疑応答期間を経て、いよいよ入札書類(提案書類)の提出期限が訪れます。参加企業は要求された書類一式を準備し、LPSEシステム上で電子的に提出します。一般に提出が求められる書類は以下の通りです。

  • 資格・行政書類: 企業登録証、営業許可証、税務登録証(TIN)、過去実績証明書、財務諸表、共同企業体契約書(JVの場合)、入札保証金の保証状 等
  • 技術提案書: プロジェクトの実施アプローチ、技術仕様適合性の説明、施工計画やスケジュール、投入人員計画、保守サービス計画 等
  • 価格提案書(見積書): 内訳明細付きの見積金額(インドネシアルピア建てが基本)、工事の場合は項目別単価と総額、サービスの場合は人件費・経費等の詳細見積 等

インドネシアの入札では、公用語であるインドネシア語での書類作成が原則となります。技術提案等で英文併記が許されるケースもありますが、公式にはインドネシア語版が優先されます。また証明書類が外国語の場合は、現地公認翻訳士によるインドネシア語訳の添付を求められることがあります。提出様式は発注者が示すテンプレートに沿う必要があり、フォーマット逸脱や記載漏れがあると失格となり得ます。特に価格見積書は指定フォーマット(Excel等)に従い正確に入力しましょう。さらに、電子入札では暗号化された提出電子署名が求められます。LPSEでは提出ボタンを押すと自動暗号化され締切まで保管される仕組みで、開札時刻になるとシステムが一斉にこれを開封します。締切時刻以降は一切提出・修正できないため、時間厳守かつ余裕を持ったアップロードが大前提です。アップロードに予想以上の時間がかかる場合もあるため、締切ギリギリではなく早めの送信を心がけてください。

提出期限を過ぎると、LPSE上で開札(Bid Opening)が行われます。これは調達委員会が電子システム上で暗号を解き、各社の提出価格や主要書類を確認するプロセスです。開札結果(参加者一覧と価格)は原則公開され、LPSE画面上で全参加者が閲覧できます。続いて調達委員会による入札評価が行われます。評価は多くの場合二段階評価(二封筒方式)です。まず第1段階として資格書類と技術提案の評価を行い、基準を満たさない企業は失格(失格者には理由が通知されます)。技術評価を通過した企業のみを対象に、第2段階として価格の評価に移ります。工事・物品調達では最低価格または基準価格に最も近い者が有利となり、コンサル業務では技術点と価格点を総合した最高点の者が有利となるといった評価基準が事前に示されています。調達委員会はそれに沿って慎重に審査を行い、必要に応じて見積内訳の妥当性確認やヒアリングを経て暫定落札候補者を決定します。場合によっては、技術提案に一部不明瞭な点がある企業に対しネゴシエーション(交渉)が実施されることもあります(例えば唯一の合格者がいた場合に仕様や価格の詳細確認・交渉を行う等、LKPP規則で限定的に許容)。

6-4. 落札者の決定・契約手続き

評価の結果、最も有利と認められた企業が落札候補者となります。調達委員会はその企業を落札予定者としてLPSE上で公示します(落札者公示)。通常、公示後一定の異議申立期間が設けられます。他の参加者は公示内容に不服があれば所定のプロセスで異議申し立て(不服申立て)を行うことができます。ただし異議申立てを行う場合、事前に異議申立保証金(Objection Bond)の提出が必要とされます。この保証金は無効・棄却と判断された場合に没収されるため、根拠の薄いクレームを防止する効果があります。異議が出されなかった場合、あるいは出されても調達委員会が却下した場合、落札予定者が正式に落札者(契約相手候補)として確定します。

落札者に対しては、発注機関から落札通知書(Letter of Award)ないし契約締結指示書が発行されます。落札企業は所定の期限内に契約準備を行います。主な手続きとして、まず履行保証金(Performance Bond)の提出があります。これは契約金額の5~10%程度を上限とする保証で、契約履行を確実にするための担保です。銀行保証や保険保証として発行し、発注機関に差し入れます(契約完了まで保持され、問題なく完了すれば返還)。また希望により前払金(頭金)の請求を行うこともできます。政府調達では契約時に契約額の一部を前払い受領できる制度があり、一般案件で上限20%、小規模調達は30%、複数年契約は15%までなど制限があります。前払を受ける場合、同額の前払保証金(Advance Payment Bond)を別途提出する必要があります。

これらの準備が整うと、発注者と落札者との間で正式な契約締結が行われます。契約書はインドネシア語で作成され(必要に応じて二言語併記)、契約金額・工期・諸条件が明記されます。契約署名後、プロジェクトの実行段階へ移行します。

7. 入札書類の準備と提出要件・注意点

第6章で手続きの流れを説明しましたが、その中でも入札書類の準備・提出は企業にとって最も労力を要するステップです。本章では、書類作成および提出上の具体的な要件や注意すべきポイントを整理します。

(1) 提案書作成全般のポイント:
まず基本として、要求事項を漏れなく満たすことが最重要です。入札説明書(TORやRFPと呼ばれる仕様書)および補遺で指示された事項を洗い出し、一つ一つ書類に反映させます。評価基準が明示されている場合は、それらの観点(例:技術アプローチの妥当性、スケジュールの実現可能性、価格の合理性など)を意識した内容構成にします。技術提案では、発注者が求める課題解決策や独自の技術優位性を具体的に示しつつ、ページ数やフォーマットの制限を遵守します。図表や写真を用いる場合も、わかりやすさと同時に提出ファイル容量の上限に注意してください(LPSEシステム上、アップロードファイルサイズに制限があるため)。また提出言語はインドネシア語が原則であることを再度強調します。日本本社で作成した英文提案書をそのまま提出することは避け、必ず公用語であるインドネシア語に翻訳・校正したものを用意しましょう。専門用語の訳語は現地の一般的な表現に合わせるなど、ローカライズも重要です。場合によっては翻訳者やネイティブチェックを活用して、読み手(調達委員会メンバー)が理解しやすい文章に仕上げます。

(2) 資格・行政書類の整備:
技術提案や価格見積と並行して、資格証明書類もしっかり整備しておきます。具体的には、第4章で触れた営業許可や登記証明、税務証明、実績証明書などです。これらは通常、スキャンPDFで提出しますが、公的書類は写りが不鮮明だったり有効期限切れだったりすると減点・失格の原因になります。あらかじめ有効期限を確認し、必要に応じて最新の更新版を取得しておきましょう。社内で許認可管理台帳を作成し、入札時に必要な証明書が網羅されているかチェックリストを用いると確実です。また代表者署名が必要な誓約書類(Integrity Pactや反社会勢力排除宣誓など)がある場合、漏れなく記名押印してPDF化します。インドネシアでは会社実印と担当者署名の両方が求められる文書もありますので注意してください。

(3) 入札保証金と金融機関手続き:
前述の通り、高額案件では入札保証金(Bid Bond)の提出が必要です。保証は銀行または保険会社による保証状(スタンバイL/C形式やBond形式)で提供するのが一般的です。これを取得するには、自社の取引銀行等に依頼し、保証額に相当する担保提供や手数料支払いを行う必要があります。日本企業の場合、日本の銀行本店からではなく現地インドネシアの銀行支店(もしくは提携先銀行)が発行することが望ましいです。保証状は必ず入札有効期間+数十日程度の有効期限が求められますので、規定通りの日付か確認しましょう。もし入札締切直前に保証状取得が間に合わないと致命的ですので、早めに金融機関と調整を開始してください。保証状原本は電子提出で一旦PDF提出しますが、落札時には原本提出を求められる場合もあります。

(4) 提出後のフォロー:
入札書類提出が完了したら、それで終わりではありません。提出後もLPSEを通じて発注者から追加連絡が来る可能性があります。例えば、提出物に軽微な不備があった場合、発注者がLPSE上で補足資料の追加提出を求めてくることがあります(ただし本来は提出期限後の修正は禁止ですが、資格証明の不足書類提出程度は認められることもあります)。その際迅速に対応できるよう、提出後もしばらくは担当者がLPSEをチェックし、連絡があれば即応しましょう。また開札結果も確認し、自社の見積価格がどの位置だったか把握します。他社より大幅に高かった場合は次回以降の参考情報となりますし、極端に低い価格で敗れた場合はダンピング入札の可能性も疑われます。いずれにせよ、結果の分析次回への改善は常に心掛けるべきです。

8. 贈収賄防止・倫理規定とコンプライアンス

インドネシアの公共調達において、腐敗防止と倫理遵守は極めて重要なテーマです。日本企業にとっても、現地の慣習誤解や第三者に任せきりの営業が思わぬ贈賄リスクを招かないよう十分な注意が必要です。

インドネシアには汚職防止法(1999年法律第31号および2001年改正法律第20号)があり、公務員への贈賄行為は厳しく禁じられています。公務員等(政府の発注担当者も含む)に対し職務に関連して金品を供与した者は、金額の多少に関わらず処罰対象となります。同法は域外適用もあり、例えインドネシア国外で行った行為でも、インドネシアの公的調達に影響を与える目的での賄賂提供であれば摘発され得ます。取締り機関としては強力な権限を持つ汚職撲滅委員会(KPK)が設置され、政府調達に絡む贈収賄事件の摘発にも積極的に取り組んでいます。

このような背景から、政府入札に参加する企業は倫理規定(Ethics)と誓約書署名が義務付けられています。具体的には、入札書類の一部として「誓約書(Pakta Integritas)」への署名提出が求められます。誓約書には「いかなる贈賄・不正行為も行わない」「入札過程で他社と談合しない」「虚偽の書類提出をしない」等の内容が含まれており、企業の経営者または正式代理人が署名捺印します。これは法的拘束力を持つ宣誓であり、違反が発覚した場合は入札失格や契約解除、更には刑事罰・将来の入札参加禁止といった厳しい制裁が科されます。発注者側の調達担当公務員も同様に誓約書署名が求められ、不正に関与しないことを約束します。

日本企業としては、現地代理人やコンサルタントを活用する場合でも、彼らが賄賂提供など不適切な活動を行わないよう管理責任を負います。「知らない間に代理人が金銭を渡していた」という事態でも、企業本体が処罰・信用失墜するリスクがあります。従って、現地スタッフや代理人へのコンプライアンス教育を徹底し、不審な要求(例:発注機関幹部への裏金提供を示唆する助言など)があれば断固拒否する姿勢が肝心です。インドネシアでは日本同様に官製談合や贈賄は社会問題となっており、政府も外資企業にクリーンなビジネス慣行を期待しています。倫理規定を遵守し公正に競争に参加することで、長期的に信頼を勝ち得ることにつながるでしょう。

なお、仮に不当要求や賄賂の誘引を受けた場合、KPKや警察当局の相談窓口に通報することも一策です。幸い最近では電子入札化の進展で入札過程の透明度が増し、不正の入り込む余地は年々減っています。一方で、契約履行段階でも監督官への接待過多などが問題となり得ますので、企業全体で腐敗防止ポリシーを策定し遵守することが重要です。日本の親会社がすでに海外贈賄防止ポリシーを持っている場合は、それを現地法人にも適用し、全関係者に共有するようにしてください。

9. 落札後の契約履行と検収手続き

入札に勝ち抜き契約を獲得した後は、実際にプロジェクトを遂行し、最終的に発注者からの検収(受取検査)を経て契約完了となります。落札後の一般的な契約履行プロセスと留意点について説明します。

(1) 契約開始と初期手続き:
契約書調印後、直ちにプロジェクトがスタートします。建設工事であれば着工準備期間に入り、詳細設計の確定や要員機材の動員を行います。物品納入であれば製造・調達の手配、コンサル業務ならキックオフミーティング設定など、契約特有の初期行動を起こします。同時に、発注者との間でコミュニケーション体制や報告ルールを確立することが大切です。定例会議の頻度、進捗報告書の様式と提出サイクル、連絡担当窓口などを確認し、円滑な情報共有に努めます。また契約によっては履行保証金を契約期間中維持しなければならないため、万一保証の有効期限がプロジェクト完了前に切れる場合は延長手続きを取ります。前払金を受領した場合、その使途報告や定められた時点での前払精算処理も忘れずに行います。

(2) 契約履行中の変更管理:
プロジェクト遂行中、設計変更や追加工事、納期調整といった契約内容の変更が発生することがあります。政府調達契約では、契約変更には厳格な手続きがあり、契約変更合意書(アメンドメント)を締結することで正式に変更が認められます。勝手な仕様変更や口頭合意のみでの対応は後々トラブルの元ですので、必ず書面で合意を取り交わします。価格や納期が変更になる場合、調達規則上認められる範囲(価格増減の上限や契約延長要件など)が定められていますので、発注者と協議の上で適切な手続きを踏みます。また、契約履行中の中間検査モニタリングにも備えておきます。工事であれば工程ごとに監督官が品質検査を実施し、合格しないと次工程に進めません。物品納入でもロットごと検品があります。これら検査に合格するため、仕様を順守した製品・施工品質を維持することが重要です。

(3) 完了・引渡しと検収手続き:
契約上の業務が全て完了したら、最終的な引渡し・検収の段階です。発注者と受注者で合同検査を行い、成果物や工事完了部分が契約仕様どおりか入念にチェックします。問題なければ検収証明書(Berita Acara Serah Terima)が作成・署名されます。建設工事ではまず暫定引渡し(PHO: Provisional Hand Over)が行われ、一定の瑕疵担保期間(メンテナンス期間)を経た後に最終引渡し(Final Hand Over)となる二段階検収が一般的です。暫定引渡し時点で大勢の完了を確認し、その後数ヶ月~1年程度の保証期間中に不具合対応を行い、期間終了時に改めて最終検収として完全完了が認められます。物品納入や単発サービス業務の場合は、一回の検収で完了することがほとんどです。

検収が完了すると、受注者は最終的な請求書を発行できます。前払金や中間支払いが行われていた場合は、契約条件に従って残金の支払い請求を行います。政府調達では通常、検収完了から一定日数以内(例えば14日以内など)に支払いがなされることになっています。ただし実務上、書類手続きに時間がかかることもあるため、根気よくフォローしましょう。支払いが完了すれば、契約は履行完了となります。これに伴い、預けていた履行保証金や未返還の入札保証金、前払保証金等も順次解約・返戻されます。忘れずに発注機関へ解約依頼書を提出し、保証書の返却を受けてください。

(4) 契約完了後のフォローアップ:
契約が無事完了した後も、将来のためのフォローアップが有益です。例えば、発注者から完了証明書評価レターを取得できる場合があります。これは当該プロジェクトを契約通り履行したことを証明する文書で、今後他の入札に参加する際の実績証明として活用できます。発注者担当者に依頼し、社名・契約名・実施期間・評価コメントなどを記載したレターを発行してもらえれば、自社の信用を裏付ける資料となります。また、完了後に発注者との間で反省会(ディブリーフィング)や追加ニーズのヒアリングを行い、次の案件への提案活動につなげることも考えられます。良好な関係を維持し、継続的なビジネスチャンスの創出に努めましょう。

10. 日本企業向けアドバイスとOne Step Beyond社の支援内容

最後に、インドネシアの公共事業案件への参入を検討する日本企業に向けたアドバイスと、実務面で頼りになる支援サービスについて触れます。

日本企業へのアドバイス:
インドネシアの政府入札に挑戦する際は、何より現地事情の理解入念な準備が成功の鍵となります。制度面では本ガイドで述べたような多くのルール・手順がありますが、実際の運用では各省庁や自治体ごとの慣習や業界特有の事情も存在します。したがって、机上の知識だけでなく現地ネットワークから生の情報を収集することが重要です。現地パートナー企業やコンサルタントと連携し、発注計画の動向や有望案件の事前情報をキャッチしましょう。また言語面のハードルも軽視できません。正式書類はインドネシア語ですし、交渉においてもインドネシア語を解する担当者がいれば信頼関係構築がスムーズです。社内に対応人材がいなければ専門の通訳者や翻訳サービスを活用しましょう。さらに、競争入札ではローカルコストの把握価格戦略も成否を分けます。人件費や資材費など現地相場を踏まえつつ、自社技術の付加価値をどこまで価格に反映できるか慎重な検討が必要です。最初は収益度外視で実績づくりを優先するくらいの姿勢で参入し、実績を積んでから収益改善を図る段階戦略もあり得ます。

One Step Beyond株式会社の支援内容:
インドネシアでの公共事業入札に不安を感じる企業に対して、One Step Beyond株式会社はワンストップで実務支援サービスを提供しています。具体的な支援内容としては、まず事前登録サポートがあります。LPSEへの業者登録や現地資格取得の手続きを代行・支援し、煩雑な準備作業を円滑に進めます。次に、実際の案件に応募する際の入札書類作成支援では、提案書や見積書の作成を現地の規則・慣習に沿ってサポートします。日本語資料からインドネシア語提案書への翻訳やローカライズ、過去の成功事例に基づくドキュメンテーションのアドバイスも受けられます。さらに、入札説明会や技術協議の場面では専門通訳の手配会議同行サービスによって言語面・交渉面をバックアップします。現地で信頼できる協力会社を探している企業には、業界ネットワークを活かして現地パートナー企業の紹介も行います。適切なパートナーとのマッチングは共同受注の成功率を高めますし、文化的相性も考慮して提案します。また、案件規模に応じてコンソーシアム組成の支援も可能です。複数企業の役割整理や協定書作成、取りまとめ役としての調整など、One Step Beyond社は豊富な経験に基づき円滑なジョイントベンチャー構築をお手伝いします。

このように、One Step Beyond株式会社はインドネシア政府案件参入に必要な様々なプロセスを包括的にサポートし、日本企業が安心して現地ビジネスを拡大できるよう支援しています。初めてインドネシアの入札に挑む企業も、専門家の伴走があればリスクを低減し成功確率を高めることができるでしょう。ぜひ利用できるリソースは最大限活用し、インドネシア市場での一歩を踏み出してみてください。

おわりに:
本ガイドでは、インドネシアの公共事業・政府プロジェクト入札制度について、その概要から具体的手続き、実務上の注意点まで詳述しました。新興国最大級の人口と経済規模を持つインドネシアでは、今後もインフラ需要が旺盛であり、日本企業にとって大きな潜在市場です。とはいえ、その調達制度には独自のルールとハードルが存在します。本稿の内容が、日本企業の皆様がインドネシアの公共案件にチャレンジする際の一助となれば幸いです。グローバルな事業展開に向け、適切な知識とパートナーシップを武器に、是非インドネシアでのご成功を勝ち取ってください。

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参考資料

  • インドネシア共和国大統領令2018年第16号「政府による物品・サービス調達に関する規定」および同2021年第12号改正令(インドネシア政府調達の基本法令)
  • Fair Consulting Group「公共調達についての大統領令」(2018年7月2日付、インドネシア新調達制度のポイント解説記事)
  • 国土交通省 海外建設市場データ「インドネシアの建設業に関する外資規制等」(外国企業の参加条件や参加可能金額に関する説明、2023年更新)
  • JETRO「インドネシアで強まる国産品優先政策と国産化率」(2022年5月27日付、政府調達における国内製品優遇策に関する分析レポート)
  • JETRO海外ニュース「2023年の政府調達品の国産品比率は95%目標へ」(2022年11月11日付、インドネシア政府の国産品調達目標に関するビジネス短信)
  • インドネシア国家公共調達庁(LKPP)公式サイトおよびLPSEポータル(調達制度のガイドライン、電子カタログ情報、各種統計等)
  • OECD「外国公務員贈賄防止条約」に関するワークショップ資料(インドネシアの腐敗防止施策に関する記録、ジェトロニュース 2023年)
  • ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)「インドネシアの汚職・贈賄に関する法令ガイダンス」(企業向けコンプライアンス解説資料)
  • Chambers and Partners “Public Procurement 2025 – Indonesia”(インドネシアの公共調達法制に関するグローバルガイド、2024年)
  • One Step Beyond株式会社 公式サイト(インドネシア進出支援サービス紹介ページ)

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