インドネシア進出ガイド:外資系企業の取締役・株主構成に関する規制と必要手続き インドネシア進出ガイド:外資系企業の取締役・株主構成に関する規制と必要手続き

インドネシア進出ガイド:外資系企業の取締役・株主構成に関する規制と必要手続き

インドネシア進出ガイド:外資系企業の取締役・株主構成に関する規制と必要手続き

目次

  1. はじめに
  2. インドネシア会社法(PT法)における取締役(Director)・株主の基本要件
  3. 外資規制(ネガティブリスト)とPT PMAでの株主構成
  4. 「コミサリス(Komisaris)」の役割:取締役を監督する仕組み
  5. 取締役・株主構成の注意点:外資比率と業種制限
  6. 取締役・株主を変更する際の手続きフロー
  7. 実務で直面しやすい課題と対処法
  8. One Step Beyond株式会社のサポートについて
  9. まとめ

1. はじめに

インドネシアは東南アジア最大規模の経済を持ち、豊富な人口と伸びしろのある消費市場を背景に、海外企業が進出を検討する魅力的な国といえます。デジタル経済やインフラ開発、製造業など、多様なチャンスが広がる一方、外資規制や会社法に関わる煩雑な手続きを理解しないまま進出すると、思わぬリスクや運営上のトラブルに直面する可能性が高いです。

本記事では、インドネシアで外資系企業(PT PMA)を設立する際に押さえておきたい取締役(Director)と株主(Shareholder)の構成規定、さらに日本の「監査役」に近い役割を担う「コミサリス(Komisaris)」の位置づけについて解説します。会社設立や事業運営の段階で生じる具体的な注意点と手続きフローを整理しながら、企業がスムーズにインドネシア市場へ進出できるよう情報を提供します。最後に、One Step Beyond株式会社のサポート内容にも軽く触れ、進出検討中の企業様が安心して事業を立ち上げるためのヒントを示します。


2. インドネシア会社法(PT法)における取締役(Director)・株主の基本要件

2.1 インドネシア会社法の概要

インドネシアの株式会社(PT:Perseroan Terbatas)は、Law No. 40 of 2007(通称:インドネシア会社法)によって統括されています。この法律では、取締役(Director)および「コミサリス(Komisaris)」、株主(Shareholder)など会社の基本的な構造や責任、登記・管理義務などが定められています。日本の商法や会社法と類似点が多い一方、外資企業向けに追加的な規定が存在するのが特徴です。

2.2 会社設立の最低要件

  1. 株主数
    インドネシアでは、株式会社(PT)を設立する際、最低2名以上の株主が必要です(1名の株主のみでは設立不可)。
  2. 取締役(Director)の配置
    会社法上、少なくとも1名の取締役を置かなければならず、複数名で取締役会を形成することが一般的です。
  3. コミサリス(Komisaris)の配置
    監督役として最低1名以上のコミサリスを置くことが義務付けられています。

2.3 外資企業(PT PMA)への追加要件

PT PMA(Penanaman Modal Asing)として外国資本が経営に参画する場合、外資規制やネガティブリストとの整合を確認し、BKPM(投資促進庁)認可を受ける必要があります。出資比率や投資額、業種によって異なる要件が課されるため、事前に十分な調査が求められます。


3. 外資規制(ネガティブリスト)とPT PMAでの株主構成

3.1 ネガティブリストの基本概念

インドネシアは外資を広く受け入れる方針を打ち出しつつも、特定業種では国内産業保護や国家安全保障を理由に外資比率を制限・禁止する「ネガティブリスト(Daftar Negatif Investasi:DNI)」を発行しています。外資企業が進出を検討する業種がこのリストに該当するか否かを確認し、必要に応じてローカルパートナーとの合弁形態を検討することが重要です。

3.2 株主比率と合弁スキーム

ネガティブリストで「外資最大49%」などと定義されている業種では、51%以上をインドネシア人やローカル企業が保有しなければなりません。したがって、外資100%での参入が不可能な業種の場合、合弁スキームを組みローカル株主と外資株主で株式を分け合う形をとることになります。また、合弁の際は株主間協定(Shareholders Agreement)を作成し、取締役やコミサリスの指名権、拒否権などを明確化しておくことがリスク回避に繋がります。

3.3 最新動向と改正の可能性

政権交代や経済政策の変更に伴い、ネガティブリストが改訂される場合があります。外資比率上限が一部緩和されたり、逆に制限が強化されたりするため、長期計画を立てる際は最新の大統領令やBKPMの発表をウォッチし続けることが欠かせません。


4. 「コミサリス(Komisaris)」の役割:取締役を監督する仕組み

4.1 日本の監査役に近い存在

インドネシアの会社法では、取締役(Director)が日常的な業務執行を担う一方、「コミサリス(Komisaris)」というポジションが取締役の監督と助言を行う仕組みをとっています。コミサリスは日本の「監査役」や「取締役会の監査役的ポジション」に近い性格を持ち、会社方針が法令・定款に違反していないか監視し、必要に応じて取締役に改善勧告を行います。

4.2 コミサリスの指名権・権限

コミサリスの指名は株主総会で行われ、法律上は会社経営の実務に介入するのではなく監督機能に徹します。ただし、外資比率が制限される業種のPT PMAなどでは、ローカル株主がコミサリスに就任し、実質的に経営方針へ強い影響力を行使する例もあるため注意が必要です。コミサリスの権限や報酬は定款や株主総会決議で定められます。

4.3 現地法人におけるコミサリス選任のポイント

  • 最低1名のコミサリスが必要
    外資企業でもコミサリスを置かないと法人登録ができない
  • ローカル人材が就任するメリット
    行政機関や地域社会とのパイプ役として動けるほか、文化・法律面での監督力が期待される
  • 株主との利害調整
    コミサリスが実質的にローカル株主を代弁する形になる場合、取締役との協調をどう構築するかが課題

5. 取締役・株主構成の注意点:外資比率と業種制限

5.1 資本金要件と投資額

インドネシアの外資企業では一定額以上の資本金が必要な場合が多く、BKPMの投資許可を取得するには投資総額や出資形態について明確な計画を提出する必要があります。また、業種やネガティブリスト上の区分に応じて、最低投資額や資本金の内訳(Paid-up Capital vs. Authorized Capital)を正しく設定することが求められます。

5.2 外資比率が制限される例

  • 小売・流通業:外資比率49%、67%など条件付き参入
  • メディア・広告:国民文化や情報保護の観点から外資上限が設定される場合あり
  • 農業・漁業:一部分野で国内産業保護を目的とした制限がある

株主構成を決める段階で、これらの制限に抵触すると投資許可が下りないため、ネガティブリストの該当有無を確認し、必要に応じてローカル株主と協力する合弁事業を検討するのがセオリーです。

5.3 業種による追加許認可

製造業であれば工場建設許可、食品・医薬品であれば保健当局の認可、金融サービスであれば金融監督庁(OJK)のライセンスなど、業種によって取締役や株主構成を報告する追加許認可が存在します。外資比率に制限が無くとも、こうした業種別規制の有無を踏まえて運営体制を設計する必要があります。


6. 取締役・株主を変更する際の手続きフロー

6.1 定款改正と公証人認証

会社設立後に取締役やコミサリス、株主構成を変更する場合、定款(Articles of Association)の改定が必要となり、公証人(Notaris)の認証を再度受ける手続きが通例です。株主総会において変更事項が承認され、議事録(Minutes of Meeting)を公証人が確認したうえで、電子申請を行います。

6.2 BKPM・OSSでの報告

外資企業(PT PMA)であれば、OSS(Online Single Submission)システム上の企業情報を更新し、投資促進庁(BKPM)に対して投資計画の変更を報告しなければなりません。出資比率の変更がネガティブリストに抵触しないか改めて審査される可能性もあり、要件不履行と判断されると優遇措置の取り消しやライセンス更新の拒否などリスクが生じます。

6.3 実務的影響と二次手続き

取締役が交代すると、銀行口座の署名権限や取引先との契約権限も更新が必要です。新たに就任した外国人取締役なら、就労ビザ(KITAS)や外国人雇用許可(IMTA)を取得する手順が発生します。こうした二次的な手続きを失念すると、日常業務に支障を来すため、変更手続き全体を網羅的に管理する体制が望まれます。


7. 実務で直面しやすい課題と対処法

7.1 コミサリス(Komisaris)との権限バランス

ローカル株主が多数を占める業種や合弁事業では、コミサリスにローカル側が就任し、実質的に事業方針へ強い影響力を持つ例があります。取締役との意見対立が生じる場合、株主間協定(Shareholders Agreement)で重要事項に対する拒否権や決定方法を明確に定めるのが望ましいです。

7.2 ネガティブリスト改正への迅速対応

企業が法改正情報を把握しきれず、出資比率が突然違法状態となるリスクも考えられます。政府系ウェブサイトや専門家からのアラートを定期的に受け、必要があれば株主構成や取締役会を再調整するなど機動的に対応できる体制が肝心です。

7.3 バックオフィス人材・システム整備

取締役・コミサリスを法令通りに設置しても、会計や税務、労務管理を担うバックオフィス人材の不足によって企業運営が滞るケースがあります。特に外資系企業は多言語でのコミュニケーションや国際基準の会計処理が要求されるため、現地の人材市場を踏まえた採用・育成計画、或いは外部委託を活用する方法を検討すべきでしょう。


8. One Step Beyond株式会社のサポートについて

インドネシアで外資企業(PT PMA)を設立・運営する際、取締役(Director)・コミサリス(Komisaris)・株主の構成が適正であることは、投資許可取得や日常の経営判断に直結する非常に重要な要素です。One Step Beyond株式会社では、アジア各国への進出支援ノウハウを活かし、次のようなサービスを提供いたします。

  1. ネガティブリスト・外資規制調査:該当業種の出資比率制限や合弁要件を事前に精査
  2. OSS申請・BKPM審査対応:定款作成、公証人手配、投資計画書の作成など実務を一括サポート
  3. コミサリス・取締役構成プラン策定:合弁事業の場合の株主間協定や役員任命プロセスを最適化
  4. 変更手続き代行:取締役交代や株主比率変更時の定款改訂・BKPM報告などを迅速に実行
  5. リスクマネジメント・追加許認可サポート:業種別ライセンス取得や地方自治体との交渉をフォロー

こうしたトータルサポートにより、企業は余計な時間と労力を削減し、コアビジネスへの集中が可能となります。


9. まとめ

インドネシアで外資企業を展開する際、取締役(Director)コミサリス(Komisaris)株主の構成をきちんと把握・管理することは、スムーズな投資許可取得と安定的な事業運営の鍵となります。以下のポイントを踏まえた上で戦略を立てましょう。

  1. 会社法と外資企業の基本要件:PT PMA設立時に取締役・コミサリスが最低各1名、株主が2名以上必要
  2. ネガティブリストで外資比率制限:業種別にローカル株主の比率や合弁事業義務が生じる
  3. コミサリスの監督機能:取締役の業務執行を監視し、法や定款に違反しないかチェック
  4. 取締役・株主の変更手続き:定款改正やBKPMへの報告義務があり、時間とコストがかかる
  5. ローカルパートナーとの合弁リスク:株主間協定で経営権や拒否権を明確にし、対立を防ぐ
  6. 専門家と連携:OSS申請、労務・税務管理を含め、一括支援が効率的

One Step Beyond株式会社では、インドネシア会社法やネガティブリストの細かい規定を踏まえながら、企業の事業規模と業種に適した株主・取締役体制を提案し、書類作成や交渉を全面的にサポートいたします。インドネシアでの大きなビジネスチャンスを逃さず、リスクを最小限に抑えた形で進出を検討する際は、ぜひ私たちの専門家チームにご相談ください。

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