目次
- はじめに
- Positive List(優先産業リスト)とは:従来のネガティブリストとの違い
- Positive Listが導入された背景:投資促進と経済改革
- Positive Listの構成と記載内容:投資家はどこをチェックすべきか
- Positive List掲載業種のメリット:優遇措置や手続き簡略化
- Positive Listの読み解き方:KBLIコードと投資要件の確認
- 業種別の事例:製造業・デジタル分野・インフラなど
- Positive Listの最新動向と注意点:改正や運用実態
- One Step Beyond株式会社のサポートについて
- まとめ
1. はじめに
インドネシアは東南アジア最大の経済規模を持ち、人口約2.7億人という巨大マーケットを背景に、多数の海外企業が投資先として注目しています。従来はネガティブリスト(DNI:Daftar Negatif Investasi)を通じて外資が参入できない、または条件付きで参入が認められる業種を規定していましたが、近年はPositive List(優先産業リスト)を発行し、外資企業に積極的に投資してほしい業種を明確に示す手法が取り入れられています。
本記事では、このPositive Listとは何か、どのような背景で導入され、どんな優遇措置やメリットが用意されているのかを解説します。さらに、外資企業がPositive Listを読み解くうえで重要となるKBLIコードの扱いや、投資要件、注意点などを整理。インドネシア進出をスムーズに進めるために押さえるべきポイントを紹介していきます。最後に、One Step Beyond株式会社で行っているサポート内容にも触れながら、インドネシアのポテンシャルを最大限に活用し、リスクを最小限にするためのヒントを提供します。
2. Positive List(優先産業リスト)とは:従来のネガティブリストとの違い
2.1 ネガティブリストからポジティブリストへ
インドネシア政府は長年、外資規制をネガティブリスト(DNI)という形で示してきました。つまり、「外資が進出不可または制限される業種」を列挙して、原則的にはそれ以外の業種は開放とする方式です。しかし、投資家が“どの業種が積極的に奨励されているか”を一目で把握しにくいという課題がありました。
最近では、政府が外資誘致を強化するためにPositive Listを策定し、「奨励(優先)業種」や「特別な優遇措置を受けられる業種」を明確に示す方向にシフトしています。投資家にとっては、ポジティブリストを見ることで「この分野はインドネシアが積極的に投資を求めており、何らかの優遇が得られる可能性が高い」と判断しやすくなります。
2.2 Positive Listの役割
- 投資家への明確なメッセージ:政府が重点を置く産業分野を明確化し、外資企業が投資先を検討しやすい
- 行政手続きの簡素化:リストに含まれる業種は投資許可取得や優遇措置の適用がスムーズになる傾向
- ネガティブリストとの補完:ネガティブリストが制限対象を示すのに対し、Positive Listは奨励対象を示して相互補完
ポジティブリストに記載がないからといって必ずしも投資できないわけではありませんが、リスト記載業種より優遇度合いが下がる可能性があるため、外資企業は自社事業がポジティブリストのどのカテゴリに当たるかを確認することが重要です。
3. Positive Listが導入された背景:投資促進と経済改革
3.1 外資誘致に向けたイメージ転換
インドネシア政府は、ASEAN地域のなかでも大きな経済規模を誇る強みを活かし、世界的な投資を呼び込むための施策を多面的に進めています。過去には外資規制が厳しい国というイメージが定着していたため、「積極的に開放・優遇する業種」を公式に打ち出すポジティブリストは投資家へのメッセージとして効果的です。
3.2 産業高度化と雇用創出
特定の製造業やサービス業、デジタル分野などを重点的に育成することで、国内の雇用を創出し、技術移転や産業高度化を図る狙いもあります。ポジティブリストに掲載される業種は、雇用効果や外貨獲得、サプライチェーン強化などが期待されるため、BOI(投資促進庁)や関連省庁が積極的に投資家を誘致します。
3.3 過去のネガティブリスト緩和との連動
インドネシアは以前から大統領令や省令によってネガティブリストを改訂し、外資の参入制限を緩和してきました。ポジティブリストはその流れをさらに加速させ、単なる“規制緩和”以上に“積極的奨励”の姿勢を明確化するステップと言えます。ただし、実際の運用や地方政府との連携に課題も残り、企業には最新情報の定期的なチェックが求められます。
4. Positive Listの構成と記載内容:投資家はどこをチェックすべきか
4.1 KBLIコードによる分類
インドネシアの産業分類はKBLI(Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesia)によって管理され、事業許可申請や税務で用いられます。ポジティブリストでもこのKBLIコードに基づき、A(農業)、C(製造業)、G(小売業)、J(情報通信)などの大分類から細かい小分類まで該当業種が示されています。企業は自社ビジネスがどのKBLIコードに当たるのかを正しく把握した上で、リスト上の規定(外資比率条件や優遇措置)を確認する必要があります。
4.2 追加要件や投資額要件
ポジティブリストに掲載されている業種でも、以下のような追加要件が付されることがあります。
- 最低投資額:一定金額以上の投資が必要
- ローカルパートナー要件:外資比率を100%にできない、または技術移転義務を要求される
- 輸出比率:製造した製品の一定割合を輸出することが条件になる場合
こうした要件を満たすことで、法人税減免や関税優遇、土地リース条件の特別扱いなどを受けられるケースもあるため、詳細を読み解くことが投資計画の成功につながります。
4.3 OSS(Online Single Submission)との連動
ポジティブリスト情報は、OSS(Online Single Submission)システムと連携しており、投資家が事業登録する際にKBLIコードを入力すると、該当業種がポジティブリスト対象かどうかが画面上で表示される仕組みです。投資許可申請の段階で即時に優遇対象か判断できるため、書類を一度に揃える効率が高まります。
5. Positive List掲載業種のメリット:優遇措置や手続き簡略化
5.1 税制優遇:法人税の減免や関税免除
ポジティブリストに該当する業種では、インドネシア政府が定めるタックスホリデー(一定期間の法人税免除)やタックスアローワンス(減税措置)が適用される可能性があります。また、製造業で設備投資を行う場合、輸入関税や付加価値税(VAT)が軽減される仕組みが整備されているケースもあり、大幅なコスト削減が期待できるでしょう。
5.2 投資許可取得の簡素化
ネガティブリストで部分開放や制限が明記される業種と比べ、ポジティブリスト掲載業種は外資比率の上限が緩やかだったり、合弁要件が免除されたりすることが多いです。そのため、BKPM審査やOSSでの投資許可申請がスムーズに運びやすく、事業開始までのリードタイムが短縮されます。
5.3 BOIや地方政府からの優先サポート
ポジティブリストに掲載されている産業分野は、政府の重点育成分野であることが多く、BOI(投資促進庁)や地方政府がサポートプログラムを用意している可能性があります。土地のリース料減免やインフラ接続の優先権、労働力育成支援など多彩な施策が検討されており、ローカルパートナーとの協力体制構築で事業効率が大きく向上する場合もあるでしょう。
6. Positive Listの読み解き方:KBLIコードと投資要件の確認
6.1 企業が行うべき事前準備
- 自社ビジネスモデルの整理
製造工程やサービス内容をKBLIコードレベルで定義し、どの業種分類に該当するかを確定 - ポジティブリストの最新版を入手
大統領令や省庁からの発表、BKPMウェブサイトなどで公表される情報をチェック - 追加要件の存在を確認
最低投資額や雇用人数要件、輸出割合などの条件が記載されていないかを精査
6.2 実務上の流れ
- OSSアカウント登録:企業情報とKBLIコードを入力
- ポジティブリスト該当の確認:システム上で優遇対象となるかどうかを判断
- 投資計画書と優遇申請書類の作成:要件を満たすための詳細を記載(投資額、雇用創出、技術移転など)
- BKPM審査・現地視察:必要に応じてBKPMや関係省庁が企業計画を審査し、追加資料を要求する場合あり
- 優遇措置確定・事業許可発行:すべての要件がクリアされれば、法人税減免や関税優遇などが正式に認められる
7. 業種別の事例:製造業・デジタル分野・インフラなど
7.1 製造業(電子・自動車部品など)
ハイテク製造や電子部品・自動車関連の生産は、インドネシアの工業団地や特区において活発な誘致対象となっています。ポジティブリストにも含まれている場合が多く、一定額以上の投資で法人税ホリデーが適用される例もあります。ただし、環境アセスメント(AMDAL)や地元雇用要件に注意し、地場サプライチェーンとの連携をどう構築するかが鍵です。
7.2 デジタル・ITサービス分野
若年人口の多さと英語力を生かして、ITオフショア開発やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を推進する取り組みがインドネシア全土で見られます。ポジティブリストでもデジタル関連サービスが優遇対象として明示される場合があり、創業フェーズでの投資要件やローカルパートナー不要など、外資比率に関する制限が緩やかな事例があるかもしれません。
7.3 インフラ・エネルギー分野
港湾・空港・道路などインフラ開発や再生可能エネルギー案件もインドネシア政府が注力している分野で、ポジティブリストで特別に扱われる場合があります。ただし、一部は国営企業とのジョイントベンチャーが必須だったり、地方政府の許可が必要だったりと、追加要件が発生しやすい点に留意しましょう。大型プロジェクトほど政治リスクや資金調達リスクが高まるため、事前のリスクアセスメントが肝要です。
8. Positive Listの最新動向と注意点:改正や運用実態
8.1 政権交代や大統領令の影響
インドネシアでは、政権交代や大統領令の発令に伴い、ポジティブリストが急に改正される可能性があります。新政権が重点産業を変更したり、国内産業保護のため再びネガティブリストの強化を打ち出すケースもあり、企業は最新情報をフォローする体制を整える必要があります。
8.2 地方自治体との温度差
中央政府がポジティブリストで優遇を明示していても、地方自治体が独自の規制や課税を維持している場合があり、実務では両者の折衝が不可欠です。たとえば、土地利用許可や環境許認可に関して地方政府が厳しい基準を独自に設けているケースもあり、中央から提示された優遇措置が十分に活かされない可能性があります。
8.3 実際の運用と業種解釈
ポジティブリストに記載されるKBLIコードが広範にわたるため、企業の事業内容がどのカテゴリに該当するのかグレーゾーンが生じることも考えられます。システム上で該当が示されても、BKPMの担当者解釈や追加資料要求により、優遇措置を確定させるまでに時間がかかるケースが報告されています。こうした解釈の差を埋めるには現地専門家との綿密なコミュニケーションが欠かせません。
9. One Step Beyond株式会社のサポートについて
インドネシアが導入したPositive List(優先産業リスト)は、外資企業にとってチャンスを広げる一方で、法改正や地方自治体の運用などに伴うリスクが残る複雑な制度でもあります。企業が最適なKBLIコードを選択し、優遇措置を確実に受け、適正な投資計画を作成するには専門知識が必要です。
One Step Beyond株式会社では、アジア各国への進出コンサルティング実績をもとに、以下のようなサービスを提供しています。
- ポジティブリスト調査・業種分類支援:企業の事業内容をヒアリングし、KBLIコードとのマッチングを検討
- 投資許可取得(OSS申請)代行:オンラインシステムでの入力やBKPM審査対応を一括サポート
- 優遇措置活用プラン策定:法人税減免・関税免除などの恩恵を最大化する投資スキームの提案
- 地方自治体や省庁との交渉:インフラ・環境許認可や合弁事業の設計など、現地調整
- リスクマネジメントとトラブル対応:政権交代や法改正に伴う不意の変更に対処し、計画修正をアドバイス
これらの総合的なサポートを通じて、企業が短期間で投資許可を取得し、ポジティブリストを活用して安定的にインドネシア事業を展開できるよう尽力します。
10. まとめ
インドネシア政府が打ち出すPositive List(優先産業リスト)は、ネガティブリストに対する「外資企業に積極的に進出してほしい業種」の明確化という新たなアプローチです。外資比率や投資要件が緩和され、法人税減免などの優遇措置が得られる可能性が高いメリットがある一方、法改正や地方自治体との温度差などが実務上の障壁となり得ます。進出検討企業は、以下のポイントを押さえながら計画を進めることが重要です。
- KBLIコードと投資計画の一致:OSS上で正しいカテゴリを選択し、要件を満たすこと
- 最低投資額・雇用創出などの追加要件:ポジティブリストで提示される条件を具体的に把握
- 地方規制や省庁独自ルール:中央政府の優遇策がそのまま地方で適用されるとは限らない
- 法改正・政策変更への対応:大統領令や政権交代で方針が急変するリスクを考慮
- 専門家の活用:OSS申請やBKPM審査を含む複雑な手続きを効率化し、時間とコストを節約
One Step Beyond株式会社は、こうしたインドネシアの法規制環境やポジティブリストの運用実態を熟知しており、企業が最新情報を取り入れつつ最適な投資スキームを構築できるよう総合的にサポートします。インドネシアのポテンシャルを活かし、成長市場で長期的な事業拡大を狙うために、ポジティブリストのメリットを最大限に活かしていただければ幸いです。