スリランカにおける投資リスクとリスクマネジメント(進出前の基礎知識その9) スリランカにおける投資リスクとリスクマネジメント(進出前の基礎知識その9)

スリランカにおける投資リスクとリスクマネジメント(進出前の基礎知識その9)

スリランカにおける投資リスクとリスクマネジメント(進出前の基礎知識その9)

目次

  1. はじめに
  2. スリランカの投資環境とリスク概観
  3. 政治・社会リスク:政局の不安定と内戦後の課題
  4. 経済・財政リスク:デフォルトとインフレの影響
  5. 外資規制・法制度リスク:BOI枠組みと行政手続き
  6. インフラ・物流リスク:地方格差と地政学的影響
  7. 為替・金融リスク:通貨変動と資金調達
  8. リスクマネジメントの具体策:情報収集・パートナー戦略・CSR
  9. One Step Beyond株式会社のサポートについて
  10. まとめ

1. はじめに

スリランカは、世界遺産をはじめとした豊かな観光資源や、紅茶やスパイスなどの農産物、そして近年注目を集めるIT・BPO分野など、多彩なビジネスチャンスを秘めています。内戦終結後の復興需要や政府による外資誘致策により、ここ10年ほどで海外企業の進出が加速してきました。一方で、近年は財政危機に伴うデフォルトや政治的混乱、インフラ整備の停滞などが投資環境に影響を及ぼし、投資リスクの多面化が進んでいるのも事実です。

本記事では、スリランカへの進出を考える企業向けに、投資リスクの構造とそれに対応するリスクマネジメント策を包括的に解説します。政治・社会リスクから経済・金融リスク、インフラの問題や外資規制の留意点まで、幅広い視点をカバーし、企業が事業計画を立てる際に押さえておきたいポイントを提示します。最後に、One Step Beyond株式会社が行うサポートにも触れながら、スリランカ市場の可能性を最大化し、リスクを最小限に抑えるための方策を考えます。


2. スリランカの投資環境とリスク概観

2.1 内戦後の復興と成長期待

スリランカは、1983年から2009年まで続いた内戦による大きなダメージを克服し、観光産業や繊維輸出を中心に経済を再建してきました。内戦終結後の復興需要やインフラ開発の活発化、若年労働力の英語力を活かしたITサービスなどが、外資企業にとって魅力的な進出先としての地位を高めていたのは事実です。また、地理的にもインドや中東、東南アジアへのアクセスが容易な位置にあるため、物流ハブとしての可能性も評価されてきました。

2.2 デフォルト危機と政治変動

しかしながら、2022年のデフォルトを象徴とする財政危機や、政治的混乱による大規模デモ、燃料・食料不足などが相次ぎ、スリランカの投資環境は大きく揺らいでいます。IMFの支援プログラムを受ける形で経済再建を進める一方、政権交代や政策の急激な転換が進出企業の計画に影響を及ぼすリスクも顕在化しています。こうした背景を踏まえると、スリランカへの投資は高リスク・高リターンの性質が強まりつつあるとも言えます。

2.3 リスク多面化への対応

企業がスリランカで事業を行う際に直面するリスクは、一つの要素だけで説明できるものではありません。政治・社会リスク、経済・財政リスク、外資規制や法制度、インフラ不備、為替・金融リスクなどが相互に作用し、予測を困難にしています。したがって、進出を検討する段階から総合的なリスクマネジメントが必須であり、投資先を慎重に選び、複数のシナリオを想定して計画を立てることが重要となります。


3. 政治・社会リスク:政局の不安定と内戦後の課題

3.1 共和制と大統領制:政権交代の影響

スリランカは共和制を採用し、大統領が行政のトップを務める一方、議院内閣制的要素も取り入れた複合的な政治体制となっています。内戦後の復興期には安定政権が続き、外資誘致が積極的に行われた時期もありましたが、2020年代に入ると財政危機に起因する社会不安が高まり、政権への批判が強まる局面が増えています。大統領選や議会選が行われるタイミングでは、ポピュリズム的政策が採用されて投資環境が急変するリスクがあることを認識しておきましょう。

3.2 内戦後の民族・宗教対立

スリランカでは、シンハラ人仏教徒が国民の多数を占める一方、タミル人やムスリムなど少数派民族・宗教コミュニティが共存しています。内戦終結後も、少数民族地域では経済格差や政治 representation の不足などがくすぶっており、小規模な対立や暴動が発生するリスクが残っています。企業が工場や施設を地方部に設置する際は、地元コミュニティとの対話と理解が欠かせません。

3.3 社会不安とデモ・ストライキ

燃料・食品価格の高騰や汚職疑惑などが理由で、デモやストライキが突発的に発生することがあります。大規模な社会運動が生じると交通遮断や物流混乱が起き、企業のサプライチェーンにも影響が及ぶ可能性があります。事業継続計画(BCP)を構築し、従業員の安全確保や業務継続手段を検討しておくことが重要です。


4. 経済・財政リスク:デフォルトとインフレの影響

4.1 2022年のデフォルトとIMF支援

スリランカが2022年に事実上のデフォルト状態に陥ったことは、世界的に大きな注目を集めました。巨額の対外債務を抱えたまま、観光収入や輸出収益が減少し、外貨不足による輸入難が深刻化。最終的にIMFをはじめとする国際金融機関の支援を受けて財政再建を進める方針が打ち出されました。しかし、支援プログラムの実施には歳出削減や補助金削減などの痛みを伴う政策が求められ、国民の反発や社会不安が高まる懸念があります。

4.2 通貨安とインフレ率の上昇

財政危機や社会不安から通貨価値が下落し、インフレ率が高騰するリスクが大きくなります。輸入に依存している企業は仕入れコストが増大し、商品価格の転嫁が難しい場合は利益率が圧迫される可能性があります。また、為替の不安定さにより輸出企業には追い風となる一方、資金調達や返済が外貨建ての場合、為替リスクが大きくなる点にも注意が必要です。

4.3 政府の経済政策不確実性

政権が変わるたびに経済政策が揺れ動く点は、スリランカの投資リスクとして挙げられます。たとえば、海外からの投資を積極的に誘致する政権が出現すると法人税や輸入関税が一時的に緩和される反面、反対勢力が政権を握ると保護主義的な政策が再び強化される可能性もあり、企業は長期的なシナリオプランニングが難しくなります。


5. 外資規制・法制度リスク:BOI枠組みと行政手続き

5.1 BOI(Board of Investment)の役割

スリランカで外資投資を行う際、多くの企業はBOI枠組みによる優遇措置や簡素化された手続きを活用します。BOIは投資家と政府の調整役として、法人税減免や関税優遇などを付与する代わりに、一定の投資額・雇用創出などの要件を定めています。BOI合意書を締結することで複雑な行政手続きが比較的スムーズになる一方、要件を満たせなかった場合には優遇措置が取り消されるリスクがある点に注意が必要です。

5.2 ネガティブリストと出資比率制限

インドネシアと同様、スリランカにも外資参入を制限するリストや法規制が存在しますが、業種によっては出資比率や合弁要求を設けていない場合もあり、一概に厳格だとは言い切れません。ただし、戦略的産業や一部の公共インフラについては外資規制が存在する可能性があり、事前調査が不可欠です。明確なネガティブリストが存在しない分、個別交渉が必要になるケースもあるため、専門家のサポートが重要です。

5.3 行政手続きの煩雑さ

地方自治体や省庁間の連携が十分でない点は、スリランカに限らずアジア新興国でよく見られる課題です。BOIがワンストップ窓口として機能するとはいえ、環境許可や地方政府の建築許可など別途オフラインでの申請が必要な場面もあり得ます。書類不備や審査の遅延によって事業開始が数カ月遅れるリスクを考慮して、早めのスケジュールを立てておくことが賢明です。


6. インフラ・物流リスク:地方格差と地政学的影響

6.1 道路・港湾インフラの不十分さ

スリランカはインド洋航路の要衝に位置し、コロンボ港を中心に国際物流拠点としての可能性を持っていますが、道路や鉄道などの内陸輸送インフラは地方部で未整備や老朽化が進んでいるケースがあります。農産物や素材の調達を地方から行う企業は、輸送時間の予測が難しくなったり、季節的な豪雨や地滑りによる交通断絶が発生したりするため、サプライチェーンをどう組むか慎重な検討が必要です。

6.2 中国やインドの投資と地政学リスク

大規模港湾開発や高速道路建設など、スリランカ政府は中国の「一帯一路(BRI)」構想やインドの開発支援を受けてインフラ整備を進めています。しかし、対外債務が膨張した結果、ハンバントタ港の運営権を中国企業に長期譲渡するといった事例があり、地政学的な思惑がインフラ開発に影響を与えている現状です。政権交代の際に過去のプロジェクトが見直されるリスクもあり、長期インフラ利用計画には注意が必要です。


7. 為替・金融リスク:通貨変動と資金調達

7.1 通貨リスクとインフレ

財政危機や政治混乱によって、スリランカルピーは大幅に下落する可能性があります。輸入原材料の仕入れコストや借入金の返済が外貨建てである場合、この為替変動が企業収益を直撃する懸念があります。また、高インフレ局面では給与コストなども上昇し、価格転嫁が難しいビジネスモデルでは利益を圧迫されるでしょう。

7.2 資金調達・送金制限

資金不足の政府が外貨準備の流出を防ぐために、送金規制や海外送金手続きの煩雑化を行うリスクが高まる可能性があります。過去に燃料・食料不足が生じた際、為替管理を強化して輸出企業に対して一定比率での外貨売却を義務付けるなど、企業のキャッシュフローに影響を与える政策が発動された例があります。海外本社への配当送金やライセンス料の支払いにもリスクが及ぶ点を想定しておきましょう。


8. リスクマネジメントの具体策:情報収集・パートナー戦略・CSR

8.1 現地情報の継続的収集

政治・財政リスクを適切に評価するには、政府や国際機関、メディア、専門家など多様な情報源を活用し、タイムリーにアップデートを得る必要があります。企業としては現地に駐在員を置くか、信頼できるコンサルタントやローカルパートナーと連携し、政変や法改正、通貨動向に素早く対応できる体制を整備すると良いでしょう。

8.2 パートナー選定とネットワーク構築

ローカルパートナーとの合弁事業や代理店契約を検討することで、行政機関や地域社会との調整が円滑に進むケースが多いです。ただし、パートナー選定を誤ると、汚職や契約不履行といったトラブルに巻き込まれるリスクもあるため、バックグラウンドチェックや契約書の精密策定が欠かせません。

8.3 CSRとコミュニティ貢献

政治・社会リスクを緩和するうえでは、地元住民や社会と良好な関係を築くことが不可欠です。現地雇用の創出やインフラ支援、教育プログラムなどのCSR活動を積極的に行うことで、地域からの支持を得やすくなり、突発的な社会運動やデモの影響を和らげる効果が期待できます。


9. One Step Beyond株式会社のサポートについて

スリランカ進出は、政治・財政リスクを含む多面的なリスクを抱える一方、内戦後の復興需要や若年人口による経済成長など大きな潜在力を持つ魅力的な市場でもあります。こうしたハイリスク・ハイリターンの環境で成功を収めるためには、現地の法制度や社会構造、文化的背景を熟知し、総合的なリスクマネジメント戦略を練る必要があります。

One Step Beyond株式会社では、アジア各国への進出コンサルティング実績を活かし、下記のような形で企業をサポートいたします。

  • 政治・経済リスク分析:財政危機や選挙リスク、社会運動のモニタリングと情報レポート
  • 外資規制・行政手続き支援:BOI認可取得、ライセンス手続きなど、法律面・行政面のサポート
  • ローカルパートナー紹介・合弁事業設計:パートナー候補の選定と株主間協定の作成
  • CSR戦略・コミュニティ連携:地元社会との摩擦を回避し、ブランド向上に寄与する施策の提案
  • 事業継続計画(BCP)策定:政治変動や通貨暴落などシナリオ別対応策の構築

こうした総合的なサポートを通じて、企業がスリランカでリスクを最小限に抑えつつ、大きな可能性を追求できるよう包括的に伴走いたします。


10. まとめ

スリランカ進出を検討する企業にとって、内戦後の復興と多様な産業機会が魅力的に映る一方で、政治不安・財政危機・外資規制・インフラ不足・為替リスクなど多様なリスクが存在します。成功をつかむためには、以下のポイントを踏まえたリスクマネジメントが欠かせません。

  1. 政治・社会リスクの把握:政権交代やデフォルト危機による政策変動、デモ・社会運動の頻度を考慮
  2. 経済・財政リスク:IMF支援下の財政再建状況や通貨変動、インフレの影響をモニター
  3. 外資規制・法制度対応:BOI認可やネガティブリストの確認、地方自治体の独自ルールを調査
  4. インフラ・物流の不確定要素:地方部の交通網・電力網の脆弱性、地政学的投資の影響
  5. 為替・金融リスク:資金送金規制や外貨調達に備え、複数の金融プランを用意
  6. コミュニティ連携とCSR:宗教・文化を尊重し、社会貢献を行うことで地域社会との信頼を醸成
  7. 専門家のサポート活用:現地情報をタイムリーに収集し、適正な投資スキームを構築

One Step Beyond株式会社は、これらのリスクを理解しながらスリランカ市場でのビジネスチャンスを最大限に引き出すための専門コンサルティングを提供しています。複雑なリスクを多面的に分析し、実務的な解決策を提案することで、企業が安心してスリランカで事業を展開できるよう全力で支援いたします。投資先としてのスリランカを選ぶ際は、十分な情報収集と戦略的なリスク管理を行い、大きな成果を手にしていただきたいと思います。

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