スリランカの税制と優遇措置(VAT, CIT, 関税など)(進出計画・準備編その4) スリランカの税制と優遇措置(VAT, CIT, 関税など)(進出計画・準備編その4)

スリランカの税制と優遇措置(VAT, CIT, 関税など)(進出計画・準備編その4)

スリランカの税制と優遇措置(VAT, CIT, 関税など)(進出計画・準備編その4)

目次

  1. はじめに
  2. スリランカの税制概要:VAT・CIT・関税の基本
  3. VAT(付加価値税)の仕組みと注意点
  4. CIT(法人所得税)の課税ルール:税率・控除・申告サイクル
  5. 関税・輸入税:輸入手続きと税率の概観
  6. その他の主要税金:WHT・STAMP DUTY・EXCISEなど
  7. BOI(投資委員会)の優遇措置と企業が得られるメリット
  8. 税制上のリスクとトラブル回避:定期報告・アップデートの重要性
  9. One Step Beyond株式会社のサポートについて
  10. まとめ

1. はじめに

南アジアの要衝として歴史的・地政学的に重要な立地をもつスリランカは、内戦終結後の復興や観光業の再興に力を入れてきました。近年は財政危機によるデフォルトや政治不安が注目されていますが、それでもアジア新興市場としての魅力は依然大きく、多くの海外企業が長期的な成長ポテンシャルを見据えて進出を検討しています。

その一方で、スリランカ固有の税制や外資優遇措置を正しく理解しないまま進出を進めると、コスト試算やキャッシュフロー計画が大きく狂うリスクがあります。そこで本記事では、スリランカの税制全般(VAT・CIT・関税など)と、政府機関(BOI)が提供する主な優遇措置について整理します。進出計画を作成する段階で早めに把握し、正確な財務試算や申告手続きの準備を行うことで、トラブルを防ぎつつインセンティブを最大限に活用できるようにしましょう。


2. スリランカの税制概要:VAT・CIT・関税の基本

2.1 税制の全体構造

  • CIT(Corporate Income Tax):法人所得税
  • VAT(Value Added Tax):付加価値税
  • Custom Duties / Import Tariffs(関税・輸入税):国境を越えた物品取引に対する課税
  • その他の税金:印紙税(Stamp Duty)、源泉徴収税(WHT)、物品税(Excise Duty)など

2.2 内戦後の財政再建

スリランカ政府は内戦後の復興と開発資金確保のため、法人税やVATを主とした税収を重視してきました。近年の財政危機を経て、IMF支援を受けながら税制改革を進めており、税率や優遇措置が変更される可能性があります。最新情報を定期的にチェックすることが重要です。

2.3 BOI(投資委員会)の役割

スリランカで海外投資を行う際、BOI(Board of Investment of Sri Lanka)*認定を受けることで、法人税や関税、VATなどに関して特別な免除や減免措置を利用できる可能性があります。特定業種や投資額を満たす場合、BOI枠組みが極めて有利な税制環境を提供するため、会社設立前に検討する価値が大きいです。


3. VAT(付加価値税)の仕組みと注意点

3.1 VATの基本概要

スリランカのVAT(Value Added Tax)は国内取引および輸入取引に広く適用されます。標準税率は時期により変動してきましたが、近年は8~15%程度の範囲で変更された経緯があります。具体的な税率は財政状況や政策によって調整されるため、最新の政府発表や税務当局のサイトを確認する必要があります。

3.2 免税対象や還付

  • 一部必需品や医療関連:食料品や医薬品など、生活必需に関わる商品は非課税もしくは軽減税率になるケースがある
  • 輸出品への還付:基本的に輸出型ビジネスではVATが還付対象となり、キャッシュフロー管理上で大きな差が出る

VAT還付を受ける際は、請求書や仕入れ税額(Input VAT)の整合性を厳密に管理して申告しないと、税務当局から還付を拒否されたり、遅延が発生することがある点に注意してください。

3.3 実務での課題

  • 税務当局による監査:書類不備や不正申告が疑われると、厳しい監査や追加徴収があり得る
  • レポーティング頻度:納税・申告サイクルを守るために会計システムと連動した月次・四半期管理が不可欠
  • 免税事業との混在:投資事業が一部免税・一部課税となると、会計処理が複雑化する

4. CIT(法人所得税)の課税ルール:税率・控除・申告サイクル

4.1 法人所得税率(CIT Rate)

スリランカの法人所得税率は一定の基礎税率が設けられていますが、業種や所得額により複数の区分が存在することがあります。たとえば、製造業やサービス業で標準税率が24~28%程度、特定優遇セクター(IT、観光など)では低率や免除期間が適用される場合もあり、BOI認定でさらに軽減されるケースがあります。

4.2 申告・納税プロセス

  • 年間申告:会計年度終了後、一定期間内に法人税申告を行い、税額精算を行う
  • 分割納付:四半期ごとに概算前払いを行い、年末に確定申告で差額を清算(Pay-As-You-Earn方式)
  • 監査報告書:一定規模以上の企業は監査法人による監査報告書を添付する必要がある

4.3 優遇策(タックスホリデーなど)

BOI認定を受けた企業は、投資額や雇用創出などの要件を満たす場合、タックスホリデー(法人税ゼロ期間)や段階的減税、加速償却など多彩なインセンティブが得られます。こうした優遇措置を利用するには事前申請と年次報告が必須で、要件未達成で取り消しになるリスクもあるため注意が必要です。


5. 関税・輸入税:輸入手続きと税率の概観

5.1 スリランカの輸入体制

スリランカは外貨確保のため、輸入品に対して関税や輸入手数料、物品税(Excise)などを課し、国内産業保護を図る面も持ち合わせています。特に贅沢品や特定の農産物には高率の関税が設定されることが多いです。

5.2 優遇対象となる品目

BOI認定企業として認められると、製造装置や原材料などの輸入については関税免除や軽減が適用される場合があります。輸出志向型企業(製造品の多くを海外へ輸出する企業)はこうした優遇によってコストを抑え、国際競争力を高めることができるのが大きなメリットです。

5.3 免税申請手続きの実務ポイント

  • HSコードの適切な分類:輸入品を正確に分類し、インセンティブ対象か判断
  • 輸入ライセンスや通関手続き:一部商品に輸入ライセンスが必要で、許認可が遅延する可能性も
  • 税関検査と証明書:BOI企業は特別レーンを利用できる場合もあるが、書類不備があれば通関が止まる

6. その他の主要税金:WHT・STAMP DUTY・EXCISEなど

6.1 源泉徴収税(WHT)

スリランカでは利子、配当金、ロイヤルティ、役務提供料などに対して源泉徴収税(WHT)が適用されます。二重課税防止条約(DTA)を締結している国との間では軽減税率や免税が可能な場合もあり、日本とスリランカのDTA適用手続きを確認することが大事です。

6.2 印紙税(Stamp Duty)

契約書や不動産取引、株式売買などに際して発生するStamp Duty(印紙税)も注意すべき税目の一つです。契約金額や資産評価額に基づいて一定の税率が適用されるため、大型契約や土地リース契約などではコスト増となる可能性があります。

6.3 物品税(Excise Duty)

特定の嗜好品(アルコール飲料、たばこ)や贅沢品、一部車両などにはExcise Dutyが課され、輸入通関時に支払いが必要となるケースが多いです。事前にHSコードごとの税率を把握し、ターゲット商材の採算を精査することが不可欠です。


7. BOI(投資委員会)の優遇措置と企業が得られるメリット

7.1 BOI認定プロジェクトのインセンティブ

  • 法人税免除・減免:投資額に応じて一定年間の法人税(CIT)を免除
  • 輸入関税・VAT免除:製造装置、原材料、建設資材の輸入コストを低減
  • 簡易化されたライセンス手続き:省庁間での調整をBOIが代行し、書類不備リスクを軽減

7.2 合弁形態や所有形態の自由度

BOI枠組みでは、一部ネガティブリスト規制が緩和されたり、ローカルパートナーを必要としない場合があるなど、企業にとって柔軟な形態で事業を行う道が開けることも多いです。投資家はBOI Agreementを締結し、約束した投資額や雇用創出などの目標を達成する代わりに、優遇措置を享受できます。

7.3 留意すべき点

  • 合意要件不履行のリスク:投資額や輸出目標を満たせないと優遇撤回の可能性
  • 報告義務:年次で投資進捗をBOIに報告するなど管理コストが発生
  • 期間限定:免除が数年間に限定されるため、免除期間終了後の税金負担を踏まえた計画が必要

8. 税制上のリスクとトラブル回避:定期報告・アップデートの重要性

8.1 政権交代や政策転換への備え

スリランカの財政再建や政局が変動する中、法人税率やVAT率、優遇措置の適用条件が突然変更されるリスクがあります。政権交代後に以前の優遇が撤回される例もあり、契約書に安定条項(Stabilization Clause)を盛り込む、あるいは政府保証を取り付けるなどを検討しておくとよいです。

8.2 税務調査と不正防止

インドネシアなど他国同様、スリランカでも税務当局が不正や脱税を疑うと厳しい調査が行われ、追徴金や罰則が発生する可能性があります。VAT還付の審査も時間を要するため、会計書類や取引証憑を精密に管理し、月次・年次で正確な申告を続けることがリスク回避につながります。

8.3 最新法令アップデート

企業はスリランカ政府の官報や税務当局のウェブサイト、国際機関のレポートなどを活用し、常に最新の税制情報を把握すべきです。ローカルメディアからの情報取得や専門家(弁護士・コンサルタント)との連携によって、法改正を踏まえた迅速な計画修正が可能となります。


9. One Step Beyond株式会社のサポートについて

スリランカでのビジネス成功を目指す企業が、VAT・CIT・関税など多岐にわたる税制と優遇措置をマスターするには、現地法令・財政事情、BOI認定枠組みの詳細などを総合的に理解する必要があります。One Step Beyond株式会社では、以下のサービスを提供し、企業の負担軽減とリスク回避をサポートします。

  1. 税制アドバイス・計画策定
    • 事業モデルに合わせた最適な税務スキームを提案し、移転価格や源泉徴収リスクなどもカバー
  2. BOI認定手続き支援
    • 投資計画書作成や雇用計画など要件の確認から合意書締結までをトータルサポート
  3. 会計・労務・法務の実務代行
    • 月次申告、年次決算、監査対応、ローカルスタッフ雇用管理など幅広いバックオフィス機能を担う
  4. リスクモニタリング
    • 政治・財政リスクや税法改正の動向を定期的にレポートし、迅速な対応策を提案
  5. 企業研修・ワークショップ
    • スリランカ特有の税制・文化背景を社員向けにレクチャーし、現地事業を円滑にスタート

企業のニーズや規模に応じたカスタマイズプランを用意し、成功確率を高めるための伴走を行います。


10. まとめ

スリランカは内戦後の復興や観光・IT分野の期待が続く一方、財政再建や政情変化によるリスクも内包する難しい市場です。こうした状況でも、適切な税制対応BOI枠組みの優遇措置を活用することで、コストを抑えたうえで順調に事業を立ち上げることが可能です。成功のためには、以下のポイントを改めて確認しましょう。

  1. VAT・CIT・関税の基本理解:税率や還付制度を把握し、コスト計算を正確に行う
  2. BOI認定枠組み:投資額や雇用創出で要件をクリアすれば、法人税免除や関税減免など大きな恩恵
  3. 財政危機や政権交代リスク:法改正で税率が突然変わる可能性を念頭に入れ、常に情報をアップデート
  4. 会計・税務管理:月次・年次申告を適正に行い、不備や追徴を回避する
  5. 専門家との連携:言語や行政手続きの違いを補完するため、現地コンサルや弁護士を活用する

One Step Beyond株式会社では、上記の課題やリスクを総合的にフォローし、スリランカならではのビジネスチャンスを活かしながら企業が安定的に成長できるよう多角的に支援いたします。内戦後の復興需要と地理的優位性を持つスリランカ市場で、正確な税務戦略を基盤に成功への一歩を踏み出してみませんか。

スリランカ進出のご相談はOne Step Beyond株式会社へ

CONTACT
お問い合わせ

水谷経営支援事務所についてのご意見やご要望などは
お気軽に以下のフォームからお問い合わせくださいませ。