日本企業が活用すべきスリランカの投資インセンティブ(進出計画・準備編その5) 日本企業が活用すべきスリランカの投資インセンティブ(進出計画・準備編その5)

日本企業が活用すべきスリランカの投資インセンティブ(進出計画・準備編その5)

日本企業が活用すべきスリランカの投資インセンティブ(進出計画・準備編その5)

目次

  1. はじめに
  2. スリランカの投資誘致策:BOI(投資委員会)の位置づけと現状
  3. 投資インセンティブの全体像:税制優遇・関税免除・土地リースなど
  4. インセンティブ適用の要件:投資額・雇用創出・輸出貢献度
  5. BOI認定プロジェクトの手続きとフロー
  6. 地方自治体や特区(EPZ)が提供する優遇措置
  7. 日本企業が押さえるべき留意点:ネガティブリスト・政情リスク・実務課題
  8. One Step Beyond株式会社のサポートについて
  9. まとめ

1. はじめに

スリランカは内戦終結後の復興需要や観光業の拡大可能性、そして英語力をもつ若年労働力などの魅力を背景に、海外企業の進出先として注目されてきました。しかし、2022年のデフォルトや政治不安、インフラの未整備などのリスク要素も内包しており、十分な事前調査と計画が不可欠となっています。

こうした中で、スリランカ政府は海外からの投資誘致を促進するためにBOI(投資委員会)を中心とした多様なインセンティブ制度を展開しています。たとえば法人税や関税の減免、土地リース料の優遇などが挙げられ、日本企業にとって進出コストを大幅に削減できる可能性があります。本記事では、日本企業が活用すべきスリランカの投資インセンティブを整理し、要件や実務手順、注意点を解説します。最後にOne Step Beyond株式会社の支援内容にも触れ、インセンティブを最大限に活かしたスリランカ進出を成功へと導くポイントをお伝えします。


2. スリランカの投資誘致策:BOI(投資委員会)の位置づけと現状

2.1 BOI(Board of Investment of Sri Lanka)の役割

  • 外資企業への認可と優遇措置の管理
    BOIは海外投資家がスリランカで事業を行う際の窓口となり、審査を通じて法人税や関税の減免などインセンティブを付与
  • ワンストップ窓口としての機能
    投資計画の審査や関係省庁との調整を一括で行い、企業の行政手続きを簡素化

2.2 スリランカの経済・財政状況との関係

スリランカは財政危機や政権交代の影響を大きく受けやすい国でもあり、IMF支援プログラムのもとで経済再建を進めています。こうした状況下でもBOIは外国からの投資誘致を強く推進し、インセンティブを充実させることで外資企業を呼び込もうとしているのが現状です。ただし、政権交代などによる政策変更リスクがつきまとう点には留意が必要です。

2.3 投資セクターの重点領域

  • 製造業(繊維・アパレル、食品加工など)
  • IT/BPO分野:英語人材を活かしたバックオフィス業務
  • 観光・ホスピタリティ:リゾート開発、ホテル、アクティビティ関連
  • インフラ開発:道路、港湾、エネルギー関連など

BOIはこれらの重点セクターに対して手厚い優遇措置を用意している場合が多く、大規模投資ほど税制免除期間が長い傾向にあります。


3. 投資インセンティブの全体像:税制優遇・関税免除・土地リースなど

3.1 法人税(Corporate Income Tax)の減免

  • タックスホリデー:一定期間法人税を完全免除、または大幅に減免(投資額や業種で期間が異なる)
  • タックスアローワンス:追加投資や研究開発費用などに対して一定の控除を認める制度

3.2 関税・輸入税の優遇

  • 輸入資材や設備への関税免除:製造業や輸出指向型企業が原材料・機械を輸入する際、関税ゼロや軽減が適用
  • VAT免除:輸入時の付加価値税を免除し、キャッシュフローを改善する

3.3 長期リースや公有地の割当

  • 政府管理の工業団地や特区での優先権:土地リース料やインフラ利用費を抑え、初期投資を軽減
  • 公有地の長期リース:99年などの長期間にわたって実質的な土地活用が可能

3.4 その他の支援策

  • 人材育成サポート:職業訓練や大学との連携による専門人材の確保
  • 簡易的なライセンス発行:環境許可や建築許可などでBOIが調整し、手続きを一括化

4. インセンティブ適用の要件:投資額・雇用創出・輸出貢献度

4.1 投資額・雇用要件

多くのインセンティブは、一定の投資額以上雇用創出人数の基準をクリアしたプロジェクトに適用されます。具体的には数百万ドル以上の投資や新規雇用100人以上など、業種や優遇措置の種類によってハードルが異なります。大規模投資ほどインセンティブの幅が大きくなることが一般的です。

4.2 輸出志向型への優遇

スリランカ政府は外貨獲得を重視しており、輸出指向型企業に対して特別な優遇を提供するケースが多いです。輸出売上が全売上の一定割合を上回る企業は法人税や関税でより大きなメリットを享受できる一方、要件未達の場合は優遇措置が取り消されるリスクもあるため注意が必要です。

4.3 LOI(Letter of Intent)やBOI Agreement

BOIのインセンティブを享受するには、LOI(Letter of Intent)を提出し、BOI審査を経てBOI Agreementを締結するプロセスが基本となります。投資計画書(Project Proposal)で明示した投資額や雇用創出・輸出目標などを順守する義務が生じるため、後から計画が大幅に変更されると契約違反になる可能性がある点に留意しましょう。


5. BOI認定プロジェクトの手続きとフロー

5.1 初期相談と投資計画書の作成

  • BOIとの協議:企業が業種・投資額・予定立地をBOIに伝え、インセンティブ適用の可否を概略確認
  • 投資計画書(Project Proposal):投資総額、雇用計画、事業収益予想、CSR方針などを記載
  • 社内承認と書類準備:親会社の財務状況や技術力を証明する書類も必要になる場合あり

5.2 審査と合意書締結

  • BOIによる審査:投資モデルの実現性、経済波及効果を評価
  • LOI(Letter of Intent)受領:審査が通ればLOIが発行され、条件を満たすことが合意される
  • BOI Agreement締結:正式に投資契約を結び、税制優遇や関税免除などの適用が確定

5.3 会社設立・ライセンス取得

  • Registrar of Companiesへの登記:会社名予約、定款作成、株主構成の登録
  • 税務登録(TIN取得):法人としての納税義務を開始
  • 追加ライセンス:業種によって食品安全、環境許可などの手続きを進め、最終的に事業開始

6. 地方自治体や特区(EPZ)が提供する優遇措置

6.1 地方政府との連携

スリランカの地方自治体も、独自の開発計画を通じて外資誘致を行っています。BOI認定プロジェクトが地方レベルでさらに優遇される場合があり、以下の支援が期待できます。

  • 地方税の減免:固定資産税や広告税などが軽減される
  • 土地リース費の割引:特定の地方開発区域(Industrial ParkやExport Processing Zone)に入居する企業向け

6.2 Export Processing Zones(EPZ)

  • 輸出志向型企業向け特区:輸入関税やVATが免除され、製造・加工品を外国へ輸出する際のコストが抑えられる
  • インフラ整備:電力・上下水道・通信などが予め整備され、投資家が追加コストを負担するリスクが小さい
  • 管理会社との契約:EPZ運営会社とリース契約を結び、工場スペースや倉庫を利用

6.3 観光特区

リゾート開発やホテル運営を対象とした**観光特区(Tourism Zone)**が設置されている地域では、BOIとの連携で土地使用権や免税期間が長期にわたって与えられるケースも。観光省や地方自治体の施策に合致するプロジェクトなら、公共インフラとの連携が得やすいです。


7. 日本企業が押さえるべき留意点:ネガティブリスト・政情リスク・実務課題

7.1 ネガティブリスト(業種規制)

インドネシアのネガティブリストほど明確ではないものの、スリランカでも一部業種で外資参入が制限されたり、ローカルパートナーが必須になる場合があります。BOIが適用除外の特例を持つケースもあるので、プロジェクト開始前に該当の可否を確認しましょう。

7.2 政情変動と財政危機の影響

2022年のデフォルトを経て、スリランカはIMF支援下で経済再建を進めていますが、政権交代や社会不安などによる政策転換リスクが高いです。優遇措置の取り消しや税率の突然の変更も考えられるため、投資契約に安定条項を盛り込むなど、リスクヘッジ策を検討すべきです。

7.3 会計・労務管理の複雑さ

  • 社会保障制度(EPF / ETFなど)
  • 労働法遵守(賃金、休日、解雇時補償など)
  • 複数の税金申告:VAT、CIT、印紙税などを正確に処理

法改正が頻繁に行われる傾向もあるため、定期的な情報収集と専門家の助言が不可欠です。


8. One Step Beyond株式会社のサポートについて

スリランカで投資インセンティブを最大限に活用し、成功裡に事業を進めるためには、BOI認定や税制優遇の手続きを理解するだけでなく、政情リスクや地方自治体との連携など多角的な要因を考慮する必要があります。One Step Beyond株式会社では、アジア各国への進出支援を数多く手掛けており、下記のようなサービスを提供しています。

  1. 投資戦略コンサルティング
    • BOI認定要件や投資額に応じた最適なスキーム提案
    • 業種特性やローカル市場性を踏まえた優遇措置の選定
  2. 申請書類作成・交渉代行
    • 投資計画書の作成サポート、LOI(Letter of Intent)やBOI Agreement締結プロセスを支援
    • 関係省庁との折衝を代行し、書類不備や審査遅延を最小化
  3. バックオフィス体制構築
    • 税務申告、会計、労務管理、外国人就労許可(KITAS)など一括サポートで経営リソースを本業へ集中
  4. リスク管理・情報提供
    • 政情変動や法改正情報を定期的にキャッチし、必要に応じて投資契約・事業計画を修正

私たちの専門家チームが日本企業の現地展開に伴う課題を包括的にカバーし、最適な投資インセンティブを得ながらリスクをコントロールする体制を整備するお手伝いをいたします。


9. まとめ

スリランカは、財政不安や政情変化といった課題を抱えつつも、長期的な成長ポテンシャルと投資インセンティブを組み合わせることで、大きなビジネスチャンスを生み出す市場です。特にBOI(投資委員会)が管轄する税制優遇や関税免除、長期リースなどの施策を活用することで、大幅に進出コストを削減しながら事業開始を加速できる可能性があります。ただし、それらを最大限活かすには、ネガティブリストやローカル人材活用、政権交代リスクへの備えなど、入念な準備が不可欠です。

  1. BOI認定の活用:投資額や輸出比率に応じて法人税・関税免除など恩恵を受けられる
  2. 税制優遇の種類:法人税(CIT)、VAT、関税など多岐にわたり、手続きや要件がそれぞれ異なる
  3. 政情リスク・法改正:デフォルト後の再建途中であり、優遇措置が変動するリスクを視野に入れる
  4. 会計・労務管理:地元特有の法規制を把握し、適切に対応しないと優遇取り消しやペナルティの可能性
  5. 専門家との連携:書類作成やBOI審査、ローカル自治体対応をプロに任せて効率化

One Step Beyond株式会社は、こうした多角的な観点から企業の進出計画を支援し、スリランカでの投資インセンティブを十二分に活かせるようトータルサポートを提供しています。リスクを抑えながら大きな成長機会を掴むために、ぜひ私たちのサービスをご検討ください。

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