補助金活用ガイド:完了報告の作成とその後のフォローアップ―注意すべきポイント 補助金活用ガイド:完了報告の作成とその後のフォローアップ―注意すべきポイント

補助金活用ガイド:完了報告の作成とその後のフォローアップ―注意すべきポイント

補助金活用ガイド:完了報告の作成とその後のフォローアップ―注意すべきポイント

補助金採択後、事業の実施が完了すると待っているのが「完了報告書(実績報告書)」の提出と、その後のフォローアップ(事後報告や義務)の履行です。完了報告書は、補助事業が計画どおりに実施され、経費が適正に使われたことを証明する重要な書類であり、これを正確に提出しなければ補助金を受け取ることもできません。さらに、報告書提出後も一定期間にわたり収益納付財産処分の制限事業化状況の報告といったフォローアップ義務が課されます。本記事では、主要な補助金制度(省力化投資補助金、新事業進出補助金、中小企業成長加速化補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金)に共通する完了報告書作成と事後フォローアップのポイントを解説します。現場で役立つ実務的な注意点や中小企業ならではの工夫も交え、最後まで安心して手続きを遂行できるようサポートします。

1. 完了報告書の目的と構成

1.1 完了報告書の目的

完了報告書(実績報告書)は、補助事業が適切に実行されたことを証明し、補助金額を正式に確定するための書類です。補助金は事業完了後に支払われる(精算払い)ケースが多く、報告書の提出と審査を経て初めて補助金が交付されます。したがって、完了報告書を期限内に正確に提出することが補助金受給の必須条件となります。また、報告書により事業の成果や経営への効果が記録され、政府や事務局はこれをもとに補助事業の成果を評価します。完了報告書は事業の総括と責任を果たす役割を持っています。

1.2 完了報告書の構成

完了報告で提出すべき書類は多岐にわたりますが、主な構成要素は次のとおりです。

  • 事業実施結果の概要: 補助事業で実際に行った取組内容と成果をまとめる書類です。交付申請時に提出した事業計画(例えば「経営計画及び補助事業計画」)に記載したすべての項目について、どのように実施し、何を達成したかを具体的に記載し、計画と実績を対応させて未実施の項目がないようにします。
  • 経費の明細と証憑: 補助対象経費に関する支出実績を一覧表にまとめたものです。項目ごとに支出額を記載し、対応する見積書・請求書・領収書などの証憑書類を添付します。経費一覧表には、経費区分ごとの小計や合計、自己負担分と補助金分の内訳などを整理します。一覧表と証憑類を対応づけて整理します。
  • 事業成果や効果の報告: 補助事業によって得られた成果を定量的・定性的な成果を記載し、売上増加や生産性向上など計画時の目標と実績の比較も行います。
  • 収益・財産関連の書類: 補助事業の結果、収入が発生した場合の「収益納付に係る報告書」、および取得した設備等の一覧「取得財産等管理明細表」などが必要に応じて含まれます。補助事業に伴い収入が生じた場合や、取得財産がある場合には、これらの書類も併せて提出します。
  • その他の添付書類: 写真(導入設備や成果物の写真)、納品書・検収書、契約書・発注書、振込明細など、事業実施と支出を証明する書類一式を添付します。

2. よくあるミスと防止策

完了報告の提出時には、多くの企業が共通して陥りやすいミスがあります。これらのミスを事前に知り、防止策を講じておくことが大切です。以下に代表的な例を挙げます。

2.1 提出期限や手続きの失念

補助事業の終了後、報告書の提出期限を過ぎてしまうミスが散見されます。事業期間が長期に及ぶとうっかり忘れがちですが、期限までに提出しないと補助金は支給されません。採択後に必要な交付申請中間手続き(着手届提出など)を失念するケースが見られます。防止策として、採択時点でスケジュールを逆算し、提出期限を社内カレンダーやリマインダーで共有しておきましょう。万一、期限ギリギリで書類が不十分でも、まず期限内に提出し、不備があれば後から修正する方針で臨みましょう。

2.2 支払い・発注タイミングのミス

支出のタイミングに関するミスもよく起こります。事業期間内に支払いが完了していないため経費が補助対象外になるケースです。クレジットカード払いで引き落としが事業期間終了後になってしまった場合などは補助対象外となります。また、交付決定前に発注を行ってしまうミスも注意が必要です。交付決定日より前に発注・契約・支出したものは原則補助対象と認められません。交付決定通知を受けてから事業を開始する必要があります(事前着手する場合も別途承認が必要)。

2.3 書類の不備・整合性の不足

提出書類自体の不備も頻発します。例えば、見積書・発注書・納品書・請求書・領収書の日付や金額の矛盾があります。見積→発注→納品→請求→支払の順序が前後していると不備指摘の対象になります。その場合は経緯を補足説明しましょう。また、要求されている書類の提出漏れもよくあるミスです。特に納品書や作業完了報告書(検収書)の添付忘れが多い傾向にあります。提出前にチェックリストや第三者の確認を活用し、書類の漏れや記載ミスを防ぎましょう。

2.4 成果物の確認漏れと証拠不十分

補助事業の成果物の確認が取れないと判断されると、不備扱いとなります。例えば、購入した機械の設置状況や台数を示す写真がないと、事務局は本当に購入・設置されたか判断できません。また、外注等で制作したソフトウェアや広告物であれば、その完成物のスクリーンショットや現物写真が必要です。納品時には忘れずに写真撮影を行いましょう。さらに、支払証拠の不備も注意点です。振込控えの情報不足で支払い完了が確認できないケースがあります。通帳のコピーや振込完了画面など、支払い完了の証拠を提出しましょう。法人の場合は必ず法人名義の口座から支払い、やむを得ず代表者個人が立替えた場合は社内で清算記録を残すなど、基本を徹底してください。

3. 証拠書類や写真、経費管理の注意点

完了報告書の質を左右するのが証拠書類の充実度と経費管理の適切さです。日頃からの準備と工夫で、報告時の手間やミスを大幅に軽減できます。

3.1 証拠書類の整理と保管

補助事業では、証拠書類(証憑類)をどれだけ揃えられるかが勝負です。見積書から領収書・振込記録まで、一連の取引を証明する書類はすべて必要です。これらを事業期間中から計画的に収集・保管しましょう。おすすめは、経費項目ごとにファイルやデータフォルダを用意し、関連する書類一式をまとめておくことです。書類には日付や金額、発注者・受注者名が明記されているかを確認し、不備があればすぐ再発行や修正依頼をします。証憑類はコピーを提出し、原本は社内で保管します。

3.2 写真資料の撮影と活用

写真は補助事業の成果を直感的に示す重要な証拠です。設備導入や施工のビフォー・アフター写真は撮影しておきましょう。特に、機械装置の設置前後の写真は忘れずに残しましょう。また、ソフトウェアやウェブ制作など形のない成果についても、動作中の画面を保存しておきます。写真には撮影日や内容説明を付記し、報告書の該当箇所で言及します。

3.3 経費支出の管理ポイント

「いつ・誰に・いくら支払ったか」を明確に記録しましょう。補助金対象経費の支払いは原則として銀行振込のみです。手形・小切手・ファクタリング等や高額の現金払いは認められません。また、支払いは事業期間内に完了させる必要があります。分割払い(割賦払い)は認められません。クレジットカード利用時も、引落日が期間内に来るようにします。なお、支払いは補助事業者名義の口座から行いましょう。法人の場合は法人名義の口座を使いましょう。適切な経費管理により、後日の監査や確認にも耐えうる透明性を確保できます。

4. 収益納付、財産処分制限、事業化報告などの事後義務

補助事業が完了し補助金を受領した後も、一定期間にわたりいくつかの重要なフォローアップ義務(事後義務)が課されます。これらは補助金等適正化法や各補助金の交付規程で定められており、違反すると補助金の返還命令等のペナルティ対象となります。共通する主な事後義務を押さえておきましょう。

4.1 収益納付の義務

補助事業の結果として収入(収益)が生じた場合、補助金額を上限にその一部または全部を国庫へ返納する義務があります。これを収益納付といいます。例えば、補助金で導入した設備による売上などが該当します。該当する場合は実績報告時に所定の収益納付報告を行いましょう。

4.2 取得財産の管理と処分制限

補助事業で取得した設備やシステムなどの取得財産は、完了後一定期間(通常5年間程度)は処分(目的外使用や譲渡など)が制限されます。取得価格が1件50万円以上のものは「処分制限財産」とされ、完了時に一覧表を提出して社内でも管理台帳を保管する必要があります。その間、制限期間中に目的外使用や譲渡・廃棄等を行うには事前に事務局の承認が必要です。無断で処分すると補助金の返還命令につながります。承認を受け処分した場合でも、残存価値に応じ補助金の一部返納が求められることがあります。処分制限期間中、やむを得ず処分する場合は必ず事務局に相談しましょう。

4.3 事業化状況の報告(フォローアップ報告)

多くの補助金では、事業完了後も毎年度の事業化状況報告が義務付けられており、一般に完了後5年間程度続きます。報告内容は、補助事業の成果を活用した事業の売上や付加価値の増加状況、知的財産権の取得状況、従業員給与の増加状況など多岐にわたります。特に賃上げや付加価値向上を要件とする場合、目標未達なら補助金の一部返還を求められることがあります。報告を怠ると返還の対象となり得ます。フォローアップ報告は手間ですが、自社の成果を振り返り、計画との差異を検証する機会にもなります。単なる義務でなく、自社の経営改善に活用する姿勢も大切です。

4.4 その他の事後手続き

このほか、取得知財の報告や社名変更・事業承継時の届出、事務局によるフォローアップ調査への協力なども求められます。補助金を受けた企業として誠実に報告義務を果たし、事後の連絡を怠らない姿勢が信頼にもつながります。

5. 実践事例や中小企業の工夫

最後に、実際に補助金を活用した中小企業が行っている工夫や取り組み例を紹介します。現場ならではの知恵を取り入れ、自社の手続き円滑化に役立ててください。

  • 書類管理のルール化: 補助事業を遂行したある製造業の企業では、社内に「補助金書類管理ルール」を策定しました。見積から支払いまでの書類を時系列にファイリングし、経費の台帳管理も行いました。その結果、報告書作成時に必要書類がすべて揃い、不備ゼロで補助金額が確定できました。こうしたプロジェクト期間中から書類整理を習慣化することが肝心です。
  • 写真・エビデンスのチェックリスト化: ITサービス業のB社では、補助事業の主要マイルストーンごとに撮影すべき写真や保存すべきデータのチェックリストを作成してチームで共有しました。担当者はそのリストに沿ってエビデンスを残し、クラウド上で共有しました。これにより、報告段階で証拠不足によるやり直しを防止できました。提出に必要な証拠を事前に洗い出し、抜け漏れなく準備する仕組みが効果的です。
  • 事後フォロー見据えた目標管理: 事業再構築補助金で新分野展開を図ったC社では、補助事業計画の目標値(付加価値増加率や給与アップなど)を社内の経営計画KPIに組み込み、完了後も継続して管理しました。フォローアップ報告で目標未達による返還リスクを低減する狙いです。補助事業の目標を自社の中期計画に組み込むことで、フォローアップ報告も成長の指標として活用できます。

6. One Step Beyond株式会社による完了報告・フォローアップ支援

補助金事業は採択後の実施フェーズにおいても数多くの手続きが伴い、完了報告書の作成や証拠書類の整理、フォローアップ対応まで、一つ一つを着実に進める必要があります。しかし実務に忙しい中小企業にとっては、こうした事務処理や経費の突合、写真・台帳の整備などを短期間でこなすのは大きな負担になることも少なくありません。

One Step Beyond株式会社では、補助金活用の初期計画支援に加えて、採択後の交付申請から完了報告、そして事後フォローアップまで一貫した伴走型サポートを提供しています。

具体的には:

  • 完了報告書のドラフトレビューと記載アドバイス
  • 証拠書類チェックリストの提供と実務サポート
  • 経費明細表や財産管理台帳の作成サポート
  • 写真やエビデンスの整理指導
  • 効果報告・事後報告書の記載支援(5年間対応)

これまで、ものづくり補助金や事業再構築補助金、最近では省力化投資補助金や成長加速化補助金においても、さまざまな業種の中小企業が当社のサポートを受け、完了報告の不備ゼロ・迅速な補助金受給を実現しています。

補助金は「もらって終わり」ではなく、「実行と報告までを正確に完了することで初めて意味がある」支援制度です。完了報告やその後の義務を確実に遂行することで、企業の信用と実績が蓄積され、次の成長機会につながっていきます。

「手続きに不安がある」「社内に詳しい人材がいない」「なるべくスムーズに終えたい」といったお悩みがあれば、ぜひOne Step Beyond株式会社へご相談ください。私たちは、中小企業が補助金を使いこなし、成果につなげるための実務支援のプロフェッショナルとして、最後まで丁寧にサポートいたします。

以上、完了報告の作成から事後フォローアップまで、共通して注意すべきポイントを解説しました。補助金事務は煩雑ですが、一つ一つ確実に対応していけば怖れる必要はありません。大切なのは早めの準備と計画的な実行、そして正確な報告です。自社の成長のために活用した補助金ですから、最後まで責任を持って手続きを完遂し、成果を最大限に生かしましょう。適切に完了報告とフォローアップを行うことで、貴社に対する信頼性も高まり、将来また新たな支援策に挑戦する際にも良い実績となるはずです。

補助金活用戦略のご相談はOne Step Beyond株式会社へ

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