令和7年度の当初予算および令和6年度補正予算の執行が進むなか、中小企業庁を中心とした中小企業支援施策がどのように変化していくのか、関心を持つ企業は多いことでしょう。コロナ禍を経て経済活動が本格的に動き出しつつある今、政府としては新たな成長の波を作り出すために多様な補助金や融資制度、支援施策を充実させる方針を示しています。
本記事では、中小企業庁が予算案を通じて明らかにしている最新の支援策・補助金施策のトレンドを読み解き、「政策の流れがどのように変わり、今後どんなチャンスが広がるのか」を整理します。ものづくり補助金やIT導入補助金、小規模事業者持続化補助金といった既存の主要制度に加え、新事業進出や省力化投資、脱炭素関連など、新設・強化される見通しの制度を含めて概観しながら、企業が今から準備しておくべきポイントを解説します。
目次
- 令和7年度当初予算・令和6年度補正予算に見る中小企業支援の大枠
- トレンド①:新事業・スタートアップを後押しする施策の拡充
- トレンド②:DX推進と省力化投資への重点シフト
- トレンド③:脱炭素・省エネ関連施策のさらなる強化
- トレンド④:地域経済の持続性確保と人材育成への視点
- 既存補助金の最新動向―ものづくり・IT導入・持続化補助金
- 補正予算連動で新たな枠や追加公募が生まれる可能性
- 政策の流れを捉えるために企業が取るべき行動
- まとめ:政策活用で中小企業の未来を切り拓く
1.令和7年度当初予算・令和6年度補正予算に見る中小企業支援の大枠
1-1. コロナ禍からの回復と新成長の両立
中小企業庁の最新予算では、コロナ禍で傷んだ経営体力を回復させつつ、今後の日本経済を支える新成長領域への投資を促す、“守りと攻めの両面”が強く意識されているのが特徴です。経営基盤を安定させるための低利融資や税制優遇に加え、新規事業や省エネ投資、デジタル化などを積極的に支援する方向性が示されています。
1-2. 多様化する支援ニーズに合わせた施策設計
コロナ以前に比べると、中小企業が直面する経営課題はより複雑化しています。たとえば、人手不足への対応と新技術導入、海外市場開拓と地域密着の二軸展開など、企業ごとに必要なサポートは大きく異なります。中小企業庁はこうしたニーズの多様性に応えるため、既存補助金の柔軟な運用や新たな特別枠の創設など、手立てを拡充させる方針です。
2.トレンド①:新事業・スタートアップを後押しする施策の拡充
2-1. 新事業進出補助金の新設・拡大
令和7年度予算案では、中小企業が新規分野に踏み出す際のハードルを下げる「新事業進出補助金」が大きな注目を集めています。スタートアップ企業だけでなく、既存事業を持つ中小企業が異業種や海外市場、オンラインサービスなどへ新たに展開する場合、初期投資費用を一部補助する仕組みが予想されています。
ポイントとなる審査項目
- ビジネスモデルの革新性
- 市場規模の見通しと成長ポテンシャル
- 財務的基盤と実行体制
2-2. スタートアップ支援全体の強化
中小企業庁は、大学発ベンチャーや地域ベンチャーの育成にも力を入れており、起業家向けの補助金・助成金を既存のJ-Startupプログラムなどと連携させる可能性があります。たとえば、研究開発型ベンチャーが試作品を市場投入する段階での実証実験費用を補助する枠組みなど、新設が期待される枠を注視する価値があります。
3.トレンド②:DX推進と省力化投資への重点シフト
3-1. デジタル化支援からDX本格化への移行
IT導入補助金などを通じて中小企業のデジタル化を推進する動きは以前からありますが、令和7年度では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を加速する施策がさらに強化される見通しです。単に会計ソフトや受発注管理を導入する段階から一歩進み、業務プロセス全体を再設計する投資が評価される可能性が高まります。
DX化に関わる投資例
- クラウドサービスの活用による全社的データ共有・分析
- AI技術を用いた需要予測や生産スケジュール最適化
- IoTセンサーによる在庫・設備稼働状況のリアルタイム管理
3-2. 省力化補助金で人手不足を解消
中小企業庁は、中小企業が抱える人手不足問題を省力化・自動化投資で克服する取り組みにも着目しています。「省力化補助金」は、ロボットや自動機器、セルフレジや無人店舗システムなど、人件費を削減しながら生産性を高める設備導入を後押しする制度として期待されています。
4.トレンド③:脱炭素・省エネ関連施策のさらなる強化
4-1. グリーン分野への投資支援を拡充
政府全体として2050年カーボンニュートラルを目指すなか、中小企業にも省エネ・脱炭素化の取り組みが求められています。令和7年度の中小企業庁予算では、省エネ設備導入や再生可能エネルギー活用に対する補助金制度が一段と充実する見通しです。特に、大きなCO2削減効果が見込める投資ほど高率の補助を得られる可能性があります。
具体的な支援例
- 高効率空調・ボイラーの導入、断熱工事
- 太陽光パネルや蓄電池の設置
- 排出量モニタリングシステムによる生産性の最適化
4-2. GX(グリーントランスフォーメーション)関連特別枠
政府はカーボンニュートラル推進のために多額の予算を計上する方針であり、中小企業向けにも特別枠が設けられる可能性が高いです。例えば、ものづくり補助金や新事業進出補助金のなかに「グリーン特化枠」を用意し、高度な省エネ技術開発・導入を行う企業を選抜的に支援する仕組みが考えられます。
5.トレンド④:地域経済の持続性確保と人材育成への視点
5-1. 地方創生と中小企業支援の融合
人口減少や高齢化が進む地域では、商店街や地場産業の存続が大きな課題となっています。中小企業庁は「地域経済の持続性確保」という観点から、地域資源を活かした観光・物産開発や地域コミュニティ再生に取り組む企業を優先的にサポートする方針を示すことが多く、令和7年度も同様の流れが続くと予想されます。
5-2. 人材確保・育成補助金の強化
人材不足が激化するなか、人材育成や研修費用の補助、職業訓練との連携などが制度として整備されるケースが増えています。地域企業が地元の高校・大学と協定を結び、インターンシップを行う際の費用補助や、デジタルスキル研修にかかる経費補助など、多面的な人材確保支援が期待されます。
6.既存補助金の最新動向―ものづくり・IT導入・持続化補助金
6-1. ものづくり補助金:先端技術・省エネ対応
「ものづくり補助金」は製造業だけでなく幅広い業種を対象とする代表的制度で、毎年度ごとに優先テーマが変化します。令和7年度では、先端技術(IoT、AI、ロボット等)やグリーン化の取り組みが特に評価されるとみられ、加点措置や特別枠が設けられる可能性が高いです。
6-2. IT導入補助金:DX重視とインボイス対応
「IT導入補助金」は中小企業のデジタル化を支援する主要施策として、引き続き支援規模が拡大される見通しです。DX対応の高度なITツール(AI、クラウド、IoTなど)が補助対象になりやすくなる一方、インボイス制度対応や在宅勤務システムなど、社会的ニーズに即したツールも補助対象に含まれると考えられます。
6-3. 小規模事業者持続化補助金:地域連携と人材投資
商工会・商工会議所が窓口となる「小規模事業者持続化補助金」も、販路開拓だけでなく地域経済の活性化やDX、脱炭素など複数の要素を加点する形で運用されることが多くなっています。1事業あたりの補助上限は比較的低めですが、小規模事業者にとっては使い勝手が良い制度として定評があり、令和7年度も大きな変更はなく継続される見通しです。
7.補正予算連動で新たな枠や追加公募が生まれる可能性
7-1. 令和6年度補正予算の動向を要チェック
毎年のように組まれる補正予算では、既存の補助金制度で追加公募や新枠設定が行われることがあります。たとえば、新事業進出補助金や省力化補助金なども、補正予算の資金を活用してより大規模に公募を行うシナリオが考えられます。年度途中での公募開始に備えて、最新情報を常にウォッチしておくことが重要です。
7-2. 災害対応・緊急支援策も拡大し得る
補正予算は緊急対応にも活用されるため、自然災害や国際情勢の変動などがあった場合、被災地向け特別補助や緊急融資が拡充される可能性もあります。企業のリスク管理や事業継続計画(BCP)と連動させる形で、こうした追加施策を見逃さないようアンテナを張っておきましょう。
8.政策の流れを捉えるために企業が取るべき行動
8-1. 年度前から情報収集と社内議論を開始
公募要領が公表されるのは年度初め~前半が多いですが、それより前段階で中小企業庁の予算案や関連報道をチェックし、社内でどの施策に狙いを定めるか検討することが賢明です。必要な見積もりや投資シミュレーションを早めにまとめ、公募開始後すぐに申請できる状態を作っておくと、採択率も上がる可能性があります。
8-2. 自社の経営戦略との一致が鍵
支援策はどれも政策目的が明確に設定されており、補助金申請の際には「なぜこの投資が必要か」「どう成果を出すか」を説得力ある形で示す必要があります。自社の中期経営計画や新規事業戦略と補助金要件をすり合わせて、実現性の高いプロジェクトを申請しましょう。
8-3. 専門家や支援機関を活用する
商工会議所や中小企業支援センター、コンサルティング会社などが提供する申請サポートや伴走型支援を活用することも選択肢です。複数の施策を組み合わせて資金負担を減らす場合や、採択後の事業運営にノウハウを要する場合は、外部の専門家を巻き込むことで、プロジェクト全体の成功率が高まります。
9.まとめ:政策活用で中小企業の未来を切り拓く
令和7年度当初予算と令和6年度補正予算の編成が進むなか、中小企業庁の最新予算には新事業進出や省力化、脱炭素化など多岐にわたる強化施策の流れが見られます。ものづくり補助金やIT導入補助金、小規模事業者持続化補助金など既存の制度も、DXやグリーン対応などを重視する加点要素を組み込みながら、企業の挑戦を後押しする仕組みにアップデートされていくでしょう。
ただし、どの施策も公募期間は限られており、申請書の質も求められます。政策の流れをいち早く捉え、自社の経営計画や投資ニーズに合った補助金を見極めることが、採択への近道です。さらに、補正予算連動で追加公募や特別枠が生まれる可能性もあるため、常に最新情報にアンテナを張ることが大切です。
One Step Beyond株式会社では、これら中小企業支援策の最新動向を踏まえ、お客様が最適な制度を選択し、効率的に申請・実施できるようサポートしております。新事業や省力化投資、脱炭素対応などを検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。私たちと一緒に、政策を上手に活かして中小企業の未来を切り拓きましょう。