インドネシア進出ガイド:知的財産権の保護~商標・特許・著作権の登録プロセス~ インドネシア進出ガイド:知的財産権の保護~商標・特許・著作権の登録プロセス~

インドネシア進出ガイド:知的財産権の保護~商標・特許・著作権の登録プロセス~

インドネシア進出ガイド:知的財産権の保護~商標・特許・著作権の登録プロセス~

目次

  1. インドネシア知的財産庁(DGIP)概要と出願制度
  2. 商標の登録プロセスと要件
  3. 特許出願の種類と審査プロセス
  4. 著作権の保護制度とデジタル分野への対応
  5. 日本やASEAN諸国との制度比較
  6. 知財に関するよくあるトラブル事例と対策
  7. 外資系企業が現地代理人を利用する際の注意点
  8. One Step Beyond株式会社による知財戦略支援
  9. まとめ

1. インドネシア知的財産庁(DGIP)概要と出願制度

インドネシアにおける知的財産権は、法務人権省の下にある知的財産総局(通称:DGIP)が管轄しています。商標・特許・著作権のほか、意匠、地理的表示、営業秘密など、幅広い分野の知財権をカバーしています。インドネシアは主要な国際条約や協定(パリ条約、ベルヌ条約、マドリッド協定議定書、特許協力条約、TRIPsなど)に加盟しており、外国企業や個人が国際的枠組みを通じて権利取得することも可能です。

特に外国企業が注意すべきなのは、インドネシアでの手続きには現地言語(インドネシア語)を使う点、そして外国人・外国法人は現地代理人(弁理士や法律事務所)を通じて出願する必要がある点です。オンライン申請システムも拡充されつつあり、以前に比べると審査期間の短縮が図られていますが、なお日本や一部の先進国よりも審査に時間がかかる傾向があります。

知的財産権は基本的に「先願主義」を採用しているため、他人に先を越される前に出願しておくことが極めて重要です。また、インドネシアならではの法制度や運用上の特徴(不使用取消制度、年金や更新時の使用証明など)を把握しておかないと、せっかく取得した権利が意図せず失効したり、先取りされてトラブルが発生したりするケースもあります。


2. 商標の登録プロセスと要件

2.1 出願方法と必要書類

インドネシアで商標を取得するには、知的財産庁(DGIP)に出願し、審査に合格して登録証の発行を受ける必要があります。日本企業が自社ブランドを保護するためには、以下のいずれかのルートで出願を行うのが一般的です。

  • 直接出願:インドネシア国内の代理人に依頼し、インドネシア語による出願書類を作成してDGIPへ提出する
  • マドリッドプロトコル経由:日本で商標を基礎とする国際出願を行い、インドネシアを指定国に加える

必要な書類としては、商標見本、指定商品やサービスを列挙した明細、そして出願人情報や委任状、宣誓書などが挙げられます。インドネシアはニース分類に準拠しており、一出願で最大3区分まで指定可能です。ただし、類似群の解釈などで日本との相違点もあるため、現地代理人と連携しながら商品区分を正確に選ぶことが重要です。

2.2 審査と公告期間

提出された商標出願は、まず形式審査を経て問題がなければ官報に公告されます。インドネシアでは公告期間が2か月間設けられ、この間に第三者が異議申立てを行うことが可能です。公告中に異議が出されなければ、続いて実体審査に入り、商標の新規性や識別力、既存商標との類似度がチェックされます。不登録事由(公序良俗違反や悪意による出願など)に該当する場合は拒絶理由が通知され、応答期間内に反論または補正を行う必要があります。

商標審査にはおおむね1~2年ほどかかるケースが多いとされ、審査完了後に登録査定が出れば最終的に登録料を納付し、登録証が付与されます。権利期間は出願日から10年(先願主義)であり、10年ごとに更新が可能です。ただし、インドネシアでは更新時に使用宣誓が求められたり、3年連続で使用していない場合に他人から不使用取消請求が可能だったりと、日本とは異なる運用が存在する点に注意が必要です。

2.3 先願主義と防衛出願の重要性

インドネシア商標法は厳格な先願主義を採用しているため、外国企業の知名度が高いブランドでも、第三者が先に出願・登録してしまうケースがあります。こうし*先取り出願(トロール行為)が多発している実情があり、高額な和解金を要求されたりブランド名が使えない事態に陥ったりするリスクがあります。日本企業が進出を計画する段階で、まだインドネシアで事業を始めていないとしても、主要ブランドやロゴを防衛出願しておく戦略が広く推奨されています。


3. 特許出願の種類と審査プロセス

3.1 特許とシンプルパテント

インドネシアの特許法には、以下2種の制度が存在します。

  1. 特許(Patent):新規性・進歩性・産業上利用可能性を満たす発明に付与。存続期間は出願日から20年。
  2. シンプルパテント(Simple Patent):小発明や改良発明向けの保護制度。進歩性のハードルが通常特許より低いが、実体審査があり、存続期間は出願日から10年。

日本の実用新案制度に近い部分はあるものの、インドネシアのシンプルパテントでも一定の審査を経て付与される点など、手軽に権利を取得できるわけではありません。

3.2 出願ルートと審査請求

日本企業がインドネシアで特許を得るには、以下のルートが考えられます。

  • パリルート:日本出願日から12か月以内にインドネシアへ優先権主張して出願
  • PCT(特許協力条約)ルート:優先日から31か月以内にインドネシアへ国内移行

いずれの場合もインドネシア語への翻訳が必須で、さらに実体審査請求を出願日から36か月以内に行わないとみなし取下げとなるため注意が必要です。審査では先行技術調査や発明の進歩性判断などが行われ、拒絶理由が出された際は応答期間が限られているため、代理人と協力して補正・意見書を提出します。

3.3 審査期間と権利存続

特許審査には3~5年ほどかかることが多いとされ、登録後も年金(維持年費)を毎年納付し続ける必要があります。期限を過ぎると特許が失効するため、企業は代理人や管理ソフトを活用して年金管理を行うのが一般的です。インドネシア特許は日本・ASEAN各国と比較すると審査がやや遅い傾向にありますが、近年は審査官の増員や電子化により遅れが徐々に改善されています。高度な技術分野の特許取得を目指す場合はPCT活用やASEAN特許審査ハイウェイ(ASPEC)を検討することで、相互審査協力による迅速化が見込めます。


4. 著作権の保護制度とデジタル分野への対応

4.1 無方式主義と任意登録

インドネシアはベルヌ条約加盟国であり、日本企業や個人が制作した著作物も創作時点で自動的に保護されます。つまり日本で作成したコンテンツ(動画、音楽、書籍など)は、インドネシアでも原則として著作権が認められるわけです。ただし、紛争時に権利者を明確に証明するため、著作権の任意登録制度を活用すると証拠保全に有利です。オンライン登録手続きが整備されており、近年では数十分で完了するケースもあります。

4.2 保護期間と範囲

インドネシアの著作権法により、著作者の生存中および死後70年間保護される作品が多くなっています。法人名義での著作物も発行日から50年間など個別の規定があるため、該当作品の種別に合わせて確認が必要です。写真や映画、コンピュータプログラム、データベースなども保護対象となります。デジタル海賊版への対処として、インターネット上で権利侵害を行うサイトを遮断する行政措置も実施されており、著作権侵害に対して刑事罰や損害賠償請求が可能です。

4.3 デジタルコンテンツと二次利用

昨今のデジタル環境下では、音楽や映像、ソフトウェアなどをインドネシア国内で配信・販売する際にも注意が必要です。ローカルプラットフォームやパートナー企業とのライセンス契約を結ぶ場合、著作権の帰属や収益分配の条項をしっかり明記しないと想定外の利用や二次頒布が行われるリスクがあります。著作権登録をしていないと、仮に侵害が起こっても裁判所で立証が難しい場合があるため、戦略的に登録を活用する企業が増えています。


5. 日本やASEAN諸国との制度比較

インドネシアと日本、あるいは他のASEAN諸国を比較すると、以下のような差異が見られます。

  1. 先願主義:日・ASEAN諸国とも一般的に先願主義だが、インドネシアは周知・著名商標であっても先取りされる例が多く、防衛出願の重要性が高い。
  2. 審査速度:日本の商標審査は6~12か月程度が目安だが、インドネシアは1~2年を要する傾向があり、特許でも3~5年と長期化する場合が多い。
  3. 不使用取消や使用証明:日本では更新申請に使用実績は基本不要だが、インドネシアは3年間使用しない商標が不使用取消の対象になるなど、実際の使用が重視される。
  4. 実用新案制度:日本は無審査登録の実用新案だが、インドネシアはシンプルパテントにも実体審査があり、10年保護で日本のような手軽さはない。
  5. 著作権登録:日本では一切登録不要だが、インドネシアでは任意登録が運用されており、紛争時の立証を強化する意味で推奨されている。
  6. ASEAN特許審査ハイウェイ(ASPEC):ASEAN内の各特許庁が連携し、ある国で特許性が認められた出願を他国で迅速審査できる制度を整備。インドネシアも参加しており、日本企業がシンガポールなどで先に特許化した発明をインドネシアへスピード審査させるなどの活用が可能。

こうした差異により、インドネシアでの最適な知財保護戦略は日本国内とは必ずしも同じにはなりません。たとえば商標であれば、日本より早期出願を計画し、不使用取消リスクに備えてブランド運用計画を明確にする。特許であれば、PCTルートとASPECを組み合わせて審査を効率化する。著作権では、権利発生自体は無方式だが紛争時を考慮して登録する、など、国情に合わせた方策が重要になります。


6. 知財に関するよくあるトラブル事例と対策

6.1 先取り出願(トロール行為)によるブランド使用不可

日本で有名なブランド名が、インドネシアでは第三者に先に出願・登録されてしまい、当の日本企業が後から進出して商標を使えないというケースが後を絶ちません。事前に防衛出願をしていなかった結果、高額な買戻し費用を要求されたり訴訟で長期化するリスクも発生します。対応策としては、(1) 市場進出の計画があるなら早めの出願、(2) すでに先取りされた場合は悪意出願による無効訴訟や協議での買い取り交渉、といった手段が考えられます。

6.2 模倣品やパッケージのデザインコピー

インドネシア国内で製品のパッケージや意匠を盗用した模倣品が横行する例もあります。製造元が特定しにくく摘発が難しい場合もあるため、(1) 商標・意匠をきちんと登録して権利を主張できるようにする、(2) 税関での水際措置を要請(あらかじめ権利を届出し、偽造品を輸出入段階でブロック)、(3) 依頼調査会社と契約し国内市場でのモニタリングを徹底、といった総合的対策が重要です。模倣品を見つけた際には警告書を送付し、従わない場合は訴訟や刑事告訴も辞さない態勢を示すことで抑止効果が生まれます。

6.3 不使用取消による権利喪失

インドネシア商標法では、登録から3年間使用されていない商標は他者が取消請求できる制度が定められています。日本企業が取得だけして現地で全く使わないまま放置した結果、第三者から不使用取消を申し立てられ、商標権を失ったケースがあるので注意が必要です。経営判断や不測の事情で現地での販売が遅延した場合は、使用実績を一時的にでも作る(広告・ライセンスなど)か、現在は事業計画が遅れているが将来的には使う意思があることを立証できる証拠を集める必要があります。

6.4 コミュニケーション不足による更新忘れ

特許・商標などは定期的な年金や更新料を払わないと権利が失効します。特にインドネシアの特許では付与後に毎年年金を払う必要があり、商標は10年ごとの更新前に書類準備が必要ですが、現地代理人や社内担当との連絡不足で期限切れとなるトラブルがあります。会社組織の変更や担当者交代の際に情報が引き継がれず、気付いたら大事なブランドが失効済みになっていた、という事態を防ぐには、社内で管理台帳を整備したり現地代理人と定期連絡を行うなどの仕組み作りが肝心です。


7. 外資系企業が現地代理人を利用する際の注意点

インドネシアでの知財出願には、国内に所在する公認代理人を通じて手続きを進めるのが一般的です。代理人を選ぶ際、以下の点に留意しておきましょう。

  • 経験・専門性のチェック:商標専門なのか、特許に強いのか、あるいは総合的に対応できるのか。希望する分野に実績があるか確認。
  • コミュニケーション体制:英語または日本語でのやり取りがスムーズか、担当者が頻繁に変わらないか。応答の早さも重要。
  • 費用構造:代理人費用、官庁手数料、翻訳費などが明確に提示されているか。見積りと実際の最終コストにギャップがないか。
  • 継続サポート:出願→登録だけでなく、紛争対応や更新管理などアフターケアも提供してくれるか。

契約時には、業務範囲(出願手続き、拒絶理由対応、年金管理など)をはっきり定義し、期限管理の方法や支払い条件、もし代理人側に過失があった場合の責任範囲などを契約書で取り決めておくとトラブルを防ぎやすいです。さらに、出願状況や拒絶理由通知の情報共有を密にしてもらい、社内でダブルチェックすることでリスクを軽減できます。


8. One Step Beyond株式会社による知財戦略支援

インドネシアでの知的財産権保護に関しては、企業単独での情報収集・手続きが難航するケースが少なくありません。日本企業にとっては、インドネシア語での書類作成や現地特有の手続き文化に対応する負担が大きく、スケジュールや予算管理を誤ると肝心のビジネス機会を逃してしまうことも考えられます。

そこで活用したいのが、アジア各国への進出支援に特化したOne Step Beyond株式会社のサポートです。同社では、以下のような幅広いサービスを用意し、知財面での企業負担を大きく軽減します。

  1. 出願戦略と計画立案
    • 現地市場や競合状況を調査し、商標・特許・著作権どの分野でどのタイミングで出願すべきか、中長期的な権利取得計画を共同で策定する
  2. 現地代理人ネットワーク活用
    • 信頼できるインドネシア人弁理士・法律事務所を複数提携先として確保しており、費用・分野・対応力に合わせて最適な代理人をマッチング
  3. 書類作成・翻訳・期限管理
    • インドネシア語への翻訳や、各種委任状・宣誓書の公証など煩雑な作業を代行し、企業担当者の負担を削減
    • 出願後も特許の年金支払や商標更新期限などをモニタリングし、リマインドを行う
  4. 紛争対応と模倣品対策
    • 商標先取りや模倣品の流通が発生した際、現地警察・税関・法務当局との折衝や調停・訴訟手続きを支援
    • 必要があれば自社調査チームや第三者調査会社と連携し、不正業者を特定して摘発するサポートも行う
  5. 費用最適化と国際連携
    • 日本の弁理士を介さず現地代理人と直接契約するモデルなどでコストを抑えつつ、PCTやマドリッドプロトコルなど国際枠組みの活用についても助言

このようにOne Step Beyond株式会社は日本企業の要望に合った柔軟なサービス設計を行い、単なる手続き代行だけでなく、知財を軸とした現地ビジネスの成長戦略をともに考えてくれるパートナーを目指しています。インドネシア進出が初めての中小企業から、既に現地で大規模展開している大手企業まで、幅広く対応可能です。


9. まとめ

日本企業がインドネシアで事業を成功させるには、商標・特許・著作権などの知的財産権をしっかり確立し、模倣やトラブルから自社の技術・ブランドを守ることが不可欠です。インドネシアの知財制度は、日本と同じ先願主義を採用しており、マドリッド協定議定書やパリ条約、PCTなどの国際条約にも加盟していますが、審査に時間がかかる、年金管理や不使用取消など独自運用がある、先取り出願のリスクが大きい、といった点に留意する必要があります。

また、著作権は無方式主義で自動保護される一方、任意の著作権登録を行うことで紛争時の証拠力を高められます。デジタル時代にはオンライン侵害への対策や追加要件が生じるため、制度改正や司法判断の動向にもアンテナを張っておきましょう。特に先取り商標や模倣品の問題は深刻で、事前に商標を出願し、防衛出願を行うことがリスク回避の基本戦略となります。

実際の出願手続きでは、インドネシア語での書類作成や期限管理など煩雑な作業が発生し、現地代理人や専門コンサルの支援が不可欠です。費用やコミュニケーション面でハードルを感じる方も多いですが、One Step Beyond株式会社のように日本企業向けのサポート体制を整えたパートナーを活用すれば、スムーズに権利取得や維持が可能になります。今後、インドネシア市場がさらに成長していくことを見据えて、自社の技術やブランドを守るための知財戦略をしっかり確立し、安全かつ効率的にビジネスを拡大していきましょう。

参考リンク一覧

  • インドネシア知的財産総局(DGIP)
    https://dgip.go.id/
  • ASEAN Briefing – Intellectual Property Protection in Indonesia
    https://www.aseanbriefing.com/news/intellectual-property-protection-in-indonesia/
  • 龍華国際特許事務所 – インドネシアへ商標を出願する前に
    https://www.ryuka.com/asia/indonesia/
  • JETROビジネス短信 – 著作権の登録手続き、10分程度で可能に(インドネシア)
    https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/12/0fa8b8ceaf6ef42a.html
  • Tilleke & Gibbins – Intellectual Property in Indonesia
    https://www.tilleke.com/wp-content/uploads/2022/04/Intellectual-Property-in-Indonesia-2022.pdf
  • 商標登録ファーム J-star – インドネシアの商標制度
    https://j-startrademark.com/column/indonesia
  • プライムワークス国際特許事務所 – インドネシアで商標登録するポイント
    https://www.patent.gr.jp/country/indonesia/
  • One Step Beyond株式会社 ブログ – 海外知的財産権保護戦略:コスト削減と権利取得の秘訣
    https://onestepbeyond.co.jp/blogs/ip-strategy-global

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