はじめに

海外進出を検討する際、現地視察は極めて重要なステップです。しかし、準備不足や不適切なアプローチにより、貴重な機会を無駄にしてしまうケースも少なくありません。本ガイドでは、失敗しない現地視察の進め方について、チェックリストと注意点を交えて詳しく解説します。

1. 事前準備のチェックリスト

1.1 目的の明確化

現地視察を成功させるためには、まず目的を明確にすることが不可欠です。

• 視察の具体的な目的を3つ以上リストアップする 例：
  • 現地の労働市場の実態を把握する
  • 有力な販売代理店候補を見つける
  • 工場立地の適地を探す
• 各目的の優先順位を決める
• 目的に基づいた具体的な質問リストを作成する 例：
  • 現地の平均賃金はいくらか？
  • 熟練労働者の採用はどの程度困難か？
  • 販売代理店の typical な利益マージンはどの程度か？
  • 工業団地の空き状況はどうか？

1.2 情報収集

• 訪問先の基本情報（人口、GDP、主要産業など）を調べる
• 現地の商習慣や文化的特性について学ぶ
• 最新の政治経済状況をチェックする

1.3 ロジスティクス

• ビザの要否を確認し、必要な場合は取得する
• 航空券と宿泊先を手配する
• 現地での移動手段を確保する（レンタカー、ドライバー手配など）

1.4 アポイントメント

• 訪問したい企業や機関のリストを作成する
• 現地のコネクションを活用してアポイントを取る
• 訪問スケジュールを組み立てる

1.5 健康・安全対策

• 必要な予防接種を受ける
• 旅行保険に加入する
• 現地の緊急連絡先を確認する

2. 現地視察中のチェックリスト

2.1 ビジネス環境の確認

• オフィス賃料や人件費の実態を調査する
• 物流インフラの状況を確認する
• 現地企業との面談で、ビジネス上の課題を聞き出す

2.2 市場調査

• 小売店やショッピングモールを視察し、競合製品の価格や陳列状況を確認する
• 現地消費者にインフォーマルなインタビューを行う
• 展示会や商談会があれば参加する

2.3 パートナー候補との面談

• 準備した質問に基づいて質問する
• 相手の反応や態度を観察する
• 施設や工場がある場合は視察を申し出る

2.4 行政機関との面談

• 投資インセンティブについて詳細を確認する
• 許認可プロセスについて質問する
• 今後の政策動向について情報収集する

2.5 生活環境の確認

• 駐在員向け住宅エリアを視察する
• 現地の日本人コミュニティと接触を図る
• 医療機関の状況を確認する

3. 注意点

1. 文化的配慮を忘れずに
   • 現地の習慣や宗教的タブーに注意を払う
   • 適切な服装やマナーに気を配る
2. 時間感覚の違いを理解する
   • 多くの国で、日本ほど時間に厳格でない場合がある
   • 柔軟な対応を心がける
3. 通訳の質にこだわる
   • 可能であれば、ビジネス経験のある通訳を手配する
   • 専門用語や業界特有の表現を事前に共有する
4. 記録を取ることを忘れずに
   • メモ、ボイスレコーダー、写真（許可を得て）を活用する
   • 視察後すぐに情報を整理し、所感をまとめる
5. フォローアップの準備
   • 面談後のお礼状送付や追加情報の要求を計画する
   • 帰国後のアクションプランを事前に考える
6. 柔軟性を持つ
   • 予定外の機会や提案に対応できるよう余裕を持たせる
   • 本社との連絡体制を整える
7. 安全対策を怠らない
   • 貴重品の管理や治安の悪いエリアの把握を徹底する
   • 緊急時の連絡手段を確保し、常に充電しておく

4. 視察後のフォローアップ

1. 報告書の作成
   • 視察の目的に照らし合わせて、得られた情報を整理する
   • 客観的な事実と主観的な印象を明確に区別する
   • 視覚的にわかりやすい報告書を作成する
2. 社内での共有
   • 経営陣や関係部署向けに報告会を開催する
   • 多角的な議論を促す
   • 視察結果に基づく提案や推奨事項を示す
3. アクションプランの策定
   • 具体的なアクションプランを策定する
   • 短期的な事項と中長期的な課題を区別する
   • 各アクションの責任者と期限を明確にする
4. 外部関係者へのフォローアップ
   • 面談した相手先へのお礼状送付と追加情報の要求
   • 継続的なコミュニケーションの体制構築
   • 次回の訪問や商談の日程調整
5. 追加調査の実施
   • 新たな疑問点や課題について追加調査を行う
   • 必要に応じて外部専門家のアドバイスを求める
   • 継続的なモニタリングが必要な事項を特定する

5. 成功事例と失敗事例

成功事例：A社のベトナム進出

A社は、ベトナムでの製造拠点設立を検討するために現地視察を行いました。以下の点が成功の鍵となりました。

• 事前準備：JETROのレポートや現地コンサルタントの助言を基に、詳細な質問リストと視察計画を作成。
• 多角的アプローチ：政府機関、工業団地、現地企業、日系企業など、多様な関係者と面談。
• 生の声の収集：工場労働者や現地消費者との直接対話を通じ、現地の実情を深く理解。
• 柔軟な対応：予定外の工場見学の機会を活かし、生産現場の実態を把握。
• 迅速なフォローアップ：帰国後すぐに報告会を開催し、3ヶ月以内に進出計画を策定。

結果：A社は1年後に製造拠点を立ち上げ、3年で黒字化を達成しました。

失敗事例：B社のインドネシア進出

B社は、インドネシアでの販売網構築を目指して現地視察を行いましたが、以下の点で失敗しました。

• 不十分な事前準備：現地の商習慣や文化的背景の理解が不足。
• 偏った情報収集：日系企業のみとの面談に終始し、現地企業や消費者の声を聞く機会を逃す。
• 言語の壁：質の低い通訳に頼ったため、重要な情報を見逃す。
• 時間管理の失敗：タイトなスケジュールにより、深い議論や追加の質問の機会を逃す。
• フォローアップの遅れ：帰国後の報告や意思決定に時間がかかり、商談の機会を逃す。

結果：B社は2年後に進出を断念し、市場機会を逃しました。

6. まとめ

現地視察は、海外進出の成否を左右する重要なプロセスです。本ガイドで紹介したチェックリストと注意点を参考に、綿密な準備と戦略的なアプローチで視察に臨んでください。

効果的な現地視察の実施には、以下の点が特に重要です：

1. 明確な目的設定と入念な事前準備
2. 多角的な情報収集と柔軟な対応
3. 文化的配慮と現地の実情への理解
4. 詳細な記録と迅速なフォローアップ
5. 視察結果の効果的な社内共有と次のアクションへの連携

これらのポイントを押さえることで、現地視察を通じて得られた洞察を最大限に活用し、海外進出の成功につなげることができるでしょう。

現地視察の計画や実施において、専門家のサポートを受けることで、より効果的かつ効率的な視察が可能になります。One Step Beyond株式会社では、特にアジア地域での豊富な経験と強力なネットワークを活かし、以下のようなサポートを提供しています：

1. 事前ブリーフィング: 現地の最新情報や注意点について、詳細なブリーフィングを提供します。
2. アポイントメント取得: 政府機関や有力企業とのアポイントメント取得をサポートします。
3. 同行通訳: ビジネス経験豊富な通訳を手配し、円滑なコミュニケーションをサポートします。
4. 視察後のフォローアップ: 視察結果の分析や次のステップの提案など、視察後のフォローアップも行います。
5. カスタマイズされたサポート: お客様のニーズに合わせて、柔軟かつ包括的なサポートプランを提供します。

One Step Beyond株式会社は、特にインドネシア、スリランカ、インドにおいて豊富な経験と強力なネットワークを有しています。これらの国々での現地視察に関しては、より詳細かつ具体的なサポートが可能です。

その他の国々においても、当社の幅広いネットワークを活用し、効果的な現地視察のサポートが可能です。

当社の専門家が、御社の具体的なニーズや課題をお伺いし、最適なサポート方法をご提案いたします。海外進出の成功に向けて、共に歩んでいきましょう。

効果的な現地視察の実施でお悩みの方、専門家のサポートをお求めの方は、ぜひお問い合わせください。One Step Beyond株式会社が、御社の海外進出の成功に向けて、実践的なアドバイスと支援を提供いたします。