海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ②「知っておきたい!主要国の会社形態と特徴」 海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ②「知っておきたい!主要国の会社形態と特徴」

海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ②「知っておきたい!主要国の会社形態と特徴」

海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ②「知っておきたい!主要国の会社形態と特徴」

1. はじめに

海外で事業を本格展開する際、多くの企業が現地法人の設立を検討しますが、実際に会社を作るとなると「どんな形態を選べばいいのか」という選択肢が存在します。日本でいう株式会社や合同会社に相当する形態が各国でそれぞれ異なるほか、外資による合弁会社や支店設置、駐在員事務所など、複数のオプションが用意されているのが一般的です。こうした多様な会社形態には、それぞれメリットとデメリットがあり、どの形態を選ぶかによって必要な許認可や税制、責任の範囲などが変わってきます。
前回(ステップ6法人設立と各種登録 ①「国別比較:法人設立手続きの難易度ランキング」)では、国や地域ごとの設立のしやすさや手続き難易度を概観しました。今回はその知見を踏まえ、主要国における代表的な会社形態と特徴を整理してみます。どの形態を選択するかは自社のビジネスモデルや資本政策、規制環境などさまざまな要因によって最適解が変わりますが、基本的な仕組みを理解しておくことで、海外進出に際して取るべきオプションが明確化するはずです。
さらに、企業がこうした法人形態の検討や設立準備を進めるには、“緊急ではないが重要”な作業が多いため、日常の業務(第一領域)に埋没しやすいのが実情です。そこを解決するうえでも、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」というアプローチを活用し、マネジメント側が計画的に時間とリソースを割いて法人設立プロジェクトを推進する枠組みを導入することが効果的と言えます。
次回(ステップ6法人設立と各種登録 ③「海外での法人設立:必要書類チェックリスト」)では、実際に会社を設立する際の具体的な書類や手続きの流れをチェックリスト形式で示す予定ですので、まずは本稿で主要国の会社形態を把握したうえで、具体的な書類準備へとステップアップしていただければと思います。

2. 海外法人設立で選択肢となる主な形態

国によって呼び名や制度が異なるため、以下はあくまで一般的・代表的な形態の概観となります。実際には各国特有の条件やローカルな名称、外資規制による制限などが加わる場合が多いです。

  1. 有限責任会社(LLCに相当)
    アメリカをはじめ多くの国で利用される形態で、出資者の責任が出資額に限定されるという点が大きな特徴です。日本の合同会社に近い仕組みとも言えます。株式ではなく持分という概念で運営され、内部的なガバナンスや配当ルールを柔軟に定められるケースが多いです。法人税の課税方式やメンバーの責任範囲が国ごとに異なる場合があるため、事前によく調査する必要があります。
  2. 株式会社(株式有限会社)
    一般的に「インコーポレイテッド(Inc)」や「コーポレーション(Corp)」などの名称で呼ばれる場合が多く、日本企業が想定する「株式を発行して出資者を募り、有限責任の範囲内で経営する」形態です。株式を第三者に譲渡しやすい、資金調達が比較的容易、ガバナンスがしっかりしているなどのメリットがありますが、通常は法人税や定款の公開・監査要件など、行政手続きがやや重くなる可能性があります。欧米の多くの国でポピュラーな形態で、イギリスの「Ltd」やアメリカの「Inc.」「Corp.」などが該当例です。
  3. 合弁会社(Joint Venture, JV)
    現地のパートナー企業と資本を出し合って作る形態です。外資規制が強い国や、ローカルネットワークや政府コネクションを活用したいケースでは有力な選択肢となります。パートナーシップのメリットとしてはリスクや投資をシェアできる、現地市場のノウハウを即座に獲得できる、規制上合弁しか許可されない業種でも事業ができるなどがあります。しかし、利益分配や経営方針をめぐるトラブルのリスクも高いので、事前の契約書設計や役員構成の合意が不可欠となります。
  4. 支店(Branch)
    本社法人の一部として現地に支店を設置し、業務を展開する形態です。新たに法人を作るわけではないため、登記手続きは比較的簡易な場合もありますが、支店の契約や負債は本社が直接責任を負うという点に注意が必要です。法規制上、支店でできる活動が制限されていることや、会計上の区分が難しい面などが考えられます。
  5. 駐在員事務所(Representative Office)
    販売や受注行為は行えず、あくまで市場調査や情報収集、連絡事務にとどまるケースが多いです。本格的な営業はできないが、新規進出前の足がかりとして利用されることがあるでしょう。登記要件が軽い場合もあり、低リスクで現地にスタッフを置けるメリットがありますが、収益活動を制限される点がデメリットです。
  6. LLP(Limited Liability Partnership)
    英米などで存在する形態で、パートナー同士が有限責任を負う組合のような仕組みです。国によって税務上の扱いが異なり、課税がパートナー個人にパススルーされるなど特徴があります。通常の法人よりも柔軟な運用が可能な反面、会社法の保護や信用面での認知が限定的な場合があるため、どの業種に向いているか精査が必要です。

3. 主要国の会社形態と特徴

前述した一般的な類型を踏まえ、代表的な国や地域でどの形態がよく使われるか、簡単に概観してみます(あくまで一般論であり、各国の法改正や業種規制に左右される場合があります)。

3.1 アメリカ

アメリカは州ごとに法律が異なるものの、大枠でInc(Corporation)とLLC(Limited Liability Company)が広く利用されています。投資家から大きく資金を集めるなら株式形態のIncが主流ですが、税務面でパススルーされるLLCを好む中小企業も少なくありません。デラウェア州など法人登記が簡易で企業フレンドリーな州を選び、そこでペーパーカンパニー的に登記しておき、実際の活動を別の州で行うパターンも多い点が特徴です。

3.2 イギリス

イギリスではLimited Company(Ltd)が主流で、日本の株式会社に相当します。Public Limited Company(PLC)は株式公開前提で要件が厳しく、Private Limited Company(Ltd)は非公開会社として設立が容易です。オンラインでの登録が進んでおり、短期間で完了する利便性がメリットです。一方、コンプライアンスや会計報告義務もきちんと遂行する必要があります。

3.3 シンガポール

シンガポールはPrivate Limited Company(Pte. Ltd.)として設立するのが代表的で、外資制限がほとんどなく、オンライン登記が充実しているため短期間で会社を作れます。また税制上も法人税率が比較的低く、外国人起業家に優しいためアジアの拠点として選ばれやすい国です。ただし一定の要件(現地取締役の設置など)を満たさなければならない点に注意が必要です。

3.4 中国

中国ではWFOE(外商独資企業)が一般的な形態となりますが、業種によっては合弁(JV)を組むことが必須になる、あるいは外資規制があって自由に設立できない場合もあります。日本の株式会社に近いしくみですが、地方政府や中央当局との許認可手続きが複雑で、定款審査や投資登録など段階的な承認が不可欠です。特に業種指定や資本金要件などをクリアしないと設立許可が下りないリスクもあります。

3.5 インドネシア

インドネシアではPT PMA(外資系会社)が代表的で、BKPM(投資調整庁)の許認可が必須となる場合が多いです。外資出資比率に制限がある業種もあり、合弁会社を求められるケースも見受けられます。オンラインシステム(OSS)が導入され手続きが簡易化されたとされるものの、実務では書類不備や追加要件で時間がかかることがあり、ローカルパートナーや専門コンサルの支援がほぼ必須と言えます。

3.6 スリランカ

スリランカはPrivate Limited Companyの形態が一般的で、外資が100%出資することも可能な業種が多いですが、政府規制や投資優遇制度の適用有無などを考慮する必要があります。BOI(Board of Investment)に投資申請を行い、プロジェクト規模や業種によって特典を得るパターンもある一方、政治・経済情勢による影響が大きい点を考慮しなければなりません。書類主義の手続きも残っており、公的機関との交渉に時間を要するケースがしばしば見受けられます。


4. 会社形態選択時の主要判断ポイント

ここまで見てきたように、各国には共通する形態(株式会社やLLCに相当するもの)がある一方、外資規制やローカル特有の形態が存在します。そのうえで、どれを選ぶか考える際の判断ポイントをまとめると以下のような要素が重要になります。

まず、出資比率や経営権をどう確保するかです。完全子会社であれば経営権を独占できる一方、リスクも全額負担となります。合弁や一部株式保有によるパートナーシップを組むならローカルのネットワーク活用やリスクシェアを狙えますが、利益分配や意思決定での対立リスクが増加します。

次に、法人税や会計・監査要件の面も大きいです。国ごとに税率や優遇制度が異なるので、投資回収の見通しをしっかりシミュレーションする必要があります。規模が大きい場合は公開会社を視野に入れられる一方、監査や報告義務が重くなる点とのトレードオフが発生します。

また、複数国間でのサプライチェーンや取引を考慮した時の拠点メリットも無視できません。中継拠点としての利便性や金融面での優遇(例:シンガポールや香港)を優先する企業もあるでしょうが、その場合、現地での法人形態をどう最適化するか、そもそも駐在員事務所で十分なのかなどを再度検討する意義があります。


5. 「第二領域経営®」を活かした検討プロセス

会社形態の選択や設立手続きは“今すぐに売上を生むわけではないが長期的には極めて重要”なタスクの典型です。日常業務(第一領域)の中で後回しにされることを防ぐためにも、“第二領域経営®”を導入し、経営トップと幹部が定期的に法人形態の検討・意思決定を行う場を設けることが効果的です。

まず、経営トップが週や月に“第二領域会議”をスケジュールし、そこでは売上やクレーム対応など第一領域を扱わないルールを明確化します。そのうえで、海外進出プロジェクトの担当チームが各国の会社形態とメリット・デメリット、設立難易度や税制をリサーチし、会議で報告する形を取ります。トップや幹部はそこで提案を精査し、追加データを要求するか、もしくは専門コンサルを呼んで質問し、合意に向けて調整できるわけです。

また、権限委譲やマニュアル化を進めておくことで、経営トップが第一領域の突発対応に呼び出されにくい状態を作り、計画的に海外法人形態の選択を進められます。これにより“忙しすぎて形態を決められない”“何となく合弁にしたが、後から調べて完全子会社のほうが良かった”という失敗パターンが減少し、より合理的に最適な会社形態を選びやすくなるのです。


6. 次回予告:ステップ6法人設立と各種登録 ③「海外での法人設立:必要書類チェックリスト」

今回のステップ6法人設立と各種登録②では、「知っておきたい!主要国の会社形態と特徴」と題して、各国・地域が提供する代表的な法人形態や選択肢のメリット・デメリットをざっと整理しました。法人設立には国別の難易度だけでなく、具体的な形態選択(LLCなのか合弁なのか、駐在員事務所なのか)も非常に重要であり、それによって費用や責任範囲、外資規制への対応などが大きく変わってきます。
次回(ステップ6法人設立と各種登録③「海外での法人設立:必要書類チェックリスト」)では、実際に会社を設立する際に一般的に必要とされる書類や情報をチェックリストとしてまとめる予定です。例えば定款案や株主リスト、資本金証明、現地当局への申請書類などを国ごとにどう準備すればいいのかをイメージしやすい形で解説します。今回扱った会社形態の知識と合わせて確認いただければ、具体的な準備ステップをより明確に把握できるはずです。


7. まとめ

海外進出において、“どの形態で現地拠点を設立するか”は、難易度やリスク、税制上のメリットなどに大きく左右されるため、極めて重要な戦略判断です。国や地域ごとに、株式会社やLLC(有限責任会社)、合弁会社、駐在員事務所など多様なオプションがあり、それぞれに特徴や要件が異なるからこそ、事前の情報収集と慎重な比較検討が求められます。しかし、こうした法人形態の検討や設立準備は“今すぐに売上を生むわけではないが将来的に事業運営に不可欠”という第二領域に位置付けられ、日常業務(第一領域)に流されて後回しになりがちです。
そこを解決する手法として、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」は大きく役立ちます。経営トップや幹部が“第二領域会議”を定期的に行い、ここでは売上やクレーム対応などを扱わないルールを設定することで、法人形態の検討や専門コンサルとのミーティングに専念しやすくなるわけです。さらに日常業務をマニュアル化・権限委譲すれば、トップが火消し業務に呼び出される頻度を下げられ、海外進出プロジェクトを中断なく進められます。
今回の内容を踏まえ、企業は自社のビジネスモデルや投資計画、リスク許容度を考慮しながら、どの国・地域でどの会社形態を採るかの選択をより現実的に行いやすくなるでしょう。次回はステップ6の第3回として「海外での法人設立:必要書類チェックリスト」を紹介します。今回の知識に加え、具体的な書類や手続きフローを知ることで、さらにスムーズに海外進出の法人設立を進めていただけるはずです。

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