海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ⑦「法人設立後の各種登録:税務・労務・知的財産のポイント」 海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ⑦「法人設立後の各種登録:税務・労務・知的財産のポイント」

海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ⑦「法人設立後の各種登録:税務・労務・知的財産のポイント」

海外進出10ステップ:ステップ6法人設立と各種登録 ⑦「法人設立後の各種登録:税務・労務・知的財産のポイント」

1. はじめに

海外に進出する際の大きな関門として、現地法人の設立手続きを完了させることが挙げられます。しかし、法人登記が終わったからといって、すべての準備が整うわけではありません。実際の事業を動かすには、税務登録や社会保険関連の手続き、知的財産権の保護など、追加で行うべき登録や届け出が多岐にわたります。これらを疎かにしてしまうと、後からトラブルや罰則を受けるリスクが高まり、せっかく作った海外子会社の立ち上げがスムーズに進まなくなる可能性があるのです。

そこで本稿では、「海外進出10ステップ」のステップ6「法人設立と各種登録」の第7回として、「法人設立後の各種登録:税務・労務・知的財産のポイント」を取り上げます。前回までは実際に現地法人を作るための手続きや資本金設定、外国人取締役の任命などを解説してきましたが、今回は設立完了後に必須となる登録・届出をまとめ、なぜこれらが重要で、どういうタイミングで行うべきかを体系的に説明します。

また、これらの手続きは「すぐに売上を増やすわけではないが、後から必ず対応しなければならない」性質を持つため、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」の視点が活きてきます。日常業務(第一領域)に忙殺されると、税務関連や知財保護など“緊急ではないが重要”な分野が後回しにされがちで、結果的にリスクやコストが膨らむケースが少なくありません。“第二領域会議”を定期的に開催し、こうした登録・届出の進捗を最優先で確認する仕組みを作れば、後手に回らず計画的に進められるでしょう。次回(ステップ6法人設立と各種登録 ⑧「駐在員事務所 vs 現地法人:メリット・デメリット比較」)では、拠点形態として駐在員事務所と現地法人の違いや利点・欠点を比較する予定です。


2. 法人設立後に必要となる登録や届け出とは

法人を現地で登記完了しただけでは、実際にビジネスを展開するためのすべての要件を満たしたことにはなりません。多くの国で追加的に以下のような手続きが求められます。

  1. 税務関連の登録
    法人税や付加価値税(VAT/GST)などを納めるために、現地税務当局に法人として登録し、納税者番号や税務IDを取得する必要がある。業種によっては特別税の登録が必要な場合もある。
  2. 社会保険・労働関連の登録
    従業員を雇用する場合、社会保険機関への加入や労働局への届出が必要となる国が多い。労働契約や最低賃金、残業などの労働規定への適合を確認する段階でも書類提出が求められるケースがある。
  3. 知的財産権の登録・保護
    商標や特許、著作権など、自社のブランドや技術を保護するために現地での登録が欠かせない。特に商標の場合は“先願主義”をとる国が多く、他社に先に似た商標を登録されるリスクを回避する意味でも、早めの出願が望ましい。
  4. 銀行口座や金融関連の追加登録
    すでに法人口座を開設している場合でも、外資規制や送金報告、外貨管理など追加の手続きが必要になる国がある。資金移動が多い事業なら特に要注意。
  5. 業界別ライセンスや許可
    食品、医薬品、金融、物流など特定の業種では、法人設立後にさらに当局からのライセンスを取る必要がある。安全基準や資格要件を満たしているか検査されるケースが多く、時間を要する点に留意する。

これらの手続きの難易度や提出期限は国や地域によって大きく異なり、業種規制も絡むために一筋縄ではいかないことが多いです。そこで、“第二領域経営®”の枠組みを活用することで、定期的に進捗チェックや優先度付けを行い、後回しで問題化するリスクを減らすわけです。


3. 税務関連の登録

3.1 法人税関連

  • 法人設立後、最初に行うべきは現地の税務当局への登録で、法人税の納付先や税務IDを取得する手続きが含まれることが多い。
  • 国によっては、事業開始前に必ず「納税者番号」(TINなど)を取得し、決算期や申告義務を設定する必要がある。届け出が遅れると罰則金や行政指導を受けるリスクがあるため、早めに調べておくべき。
  • 税率や控除制度が日本と大きく異なるため、ローカルの税理士や会計事務所との連携が不可欠となる場合が多い。

3.2 付加価値税/GST/売上税

  • シンガポールやマレーシアなど多くの国で、ある一定の売上額を超えると必須となる付加価値税(VAT)や消費税(GST)の登録が義務づけられている。
  • もし事業開始初期から規定売上を上回る見込みなら、法人設立後すぐに登録しないと納税義務違反とみなされかねない。
  • “経費としてのVAT控除”を受けるにも登録が必須というケースが多く、キャッシュフロー確保のためにも早い段階で登録するメリットがある。

3.3 源泉徴収税やその他の税

  • 国や地域によっては、法人の役務提供や利息支払いなどに対して源泉徴収税が掛かることがある。法人として源泉徴収義務を負うのかどうかを理解しておかないと、予想外の追徴を受けるリスクがある。
  • さらに、地域税や特定業種向けの追加税(デジタルサービス税など)が存在する場合があるため、早い段階でローカル会計士と相談し、すべての納税義務を把握するのが望ましい。

4. 労務・社会保険関連の登録

4.1 社会保険と労働保険

  • 一般に、従業員を1人でも雇用する場合は社会保険機関への届出が必要となる国が多い。具体的には医療保険、年金、失業保険、労災保険などの種目があり、国によって制度名や保険率が異なる。
  • 中国などでは社会保険計算が複雑で、当局への月次申告や企業負担分・従業員負担分の区分など管理が煩雑になりやすい。現地ローカルの労務スタッフか専門の人事アウトソーサーを活用するのが一般的。

4.2 労働局への届出

  • 国によっては、従業員を採用する際に雇用契約書の届け出や最低賃金遵守の証明、外国人採用枠の取得など追加的手続きが必要となる場合がある。
  • 特に外国人を雇う場合は就労ビザとの整合性を労働局が審査するため、法人設立後すぐに労働局に登録を行い、従業員数や職種、外国人比率などを報告する必要があるケースが多い。

4.3 給与計算と源泉徴収

  • 給与計算に関連して、各種社会保険料の天引きや源泉所得税(個人税)の控除を正しく行い、当局に納付することが義務づけられる。
  • 立ち上げ段階でこれを整備していないと、従業員を雇い始めた直後から違反扱いとなる恐れがあるため、早い段階で給与計算と納付のフローを構築することが重要。

5. 知的財産権(IP)の登録と保護

5.1 商標登録の早期化

  • 多くの国が「先願主義」を採用しており、他社に先に商標を登録されると自社が使いたいブランド名を使えないリスクが生じる。
  • 特に中国やASEAN諸国では、悪意ある第三者が海外企業のブランドを先に商標登録してしまい、後から使えなくなる事例が後を絶たない。法人設立と同時期に商標出願を済ませておくのが基本戦略と言える。

5.2 特許・実用新案

  • ハイテクや製造業の場合、現地での生産や販売に先立って特許出願を検討する必要がある。書類は現地語や英語で提出する場合が多く、提出までに弁理士などの専門家を使うのが通例。
  • 国際出願(PCT)を活用して優先日を確保し、国内移行手続きで各国へ展開するスキームがあるため、どのタイミングで現地出願を行うか計画を練る必要がある。

5.3 著作権やデザイン保護

  • デザインやソフトウェアなどを扱う企業では、著作権登録や意匠登録が可能な国もある。これを怠ると模倣品が出回った際の法的対抗力が弱まるため、将来的に事業展開を拡大するなら保護措置を取っておくのが無難。

6. “第二領域経営®”を活かすメリット

前述の通り、法人設立後に待ち受ける各種登録(税務・労務・知財など)は、“今すぐ売上を増やすわけではないが、後々のリスクを回避し、事業を円滑に進めるうえで不可欠”なタスクです。これを計画的に進めないと、後から追徴税や行政処分、商標トラブルなどに直面して事業に大きな損失が生じる恐れがあります。そこで、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」を導入して、経営トップや幹部が週・月の定例“第二領域会議”を設け、この登録関連の進捗を優先的に確認する仕組みを作ると下記のような効果が期待できます。

  1. 書類準備の遅れ防止
    “火消し”に追われる状況を作らないよう第一領域をマニュアル化・権限委譲しておけば、トップが必要書類や認証手続きの承認を迅速に行えるため、差し戻しや期日超過を回避しやすい。
  2. 段階ごとのPDCA管理
    税務登録や労務登録、知財出願など個別の進捗を“第二領域会議”で定期的に報告・検証し、不足書類があれば追加投入を速やかに決定し、トラブルがあれば外部専門家を起用するなど柔軟な対応が可能になる。
  3. 社員への周知・教育
    登録作業は担当部署だけでなく社員全体の協力が必要な場面も多い(例:労務データの提出、マニュアル遵守など)。“第二領域会議”を通じて全社的に「今こういう手続きを進めている」と共有すれば、社内理解が進み協力を得やすい。

7. 次回予告:ステップ6法人設立と各種登録 ⑧「駐在員事務所 vs 現地法人:メリット・デメリット比較」

今回のステップ6法人設立と各種登録 ⑦「法人設立後の各種登録:税務・労務・知的財産のポイント」では、無事に法人を登記した後に必須となる数多くの登録や届け出について整理しました。税務登録や社会保険、知財保護などを怠ると、後に思わぬリスクが顕在化してしまうため、初期段階で計画的に済ませる必要があります。この段階でも“第二領域経営®”を活用し、経営トップが日常業務から離れてコミットできる体制を作れば、漏れや差し戻しを最小化しスムーズに手続きを完了できるでしょう。

次回(ステップ6法人設立と各種登録 ⑧)では、「駐在員事務所 vs 現地法人:メリット・デメリット比較」を取り上げ、そもそも現地法人を作らず駐在員事務所(Representative Office)で事業調査や初期活動を行う選択肢について検討します。駐在員事務所は法人登記ほどのコストや手続きが要らない場合もある半面、営業活動や契約締結が制限される国が多いなど、一長一短があるわけです。本稿の内容と組み合わせることで、自社がどの形態をどう運用すべきかを一層明確にしていただけるはずです。


8. まとめ

海外法人を設立して登記を完了しても、そこからさらに税務や労務、知的財産など多方面への登録・届け出が必要となり、これらを適切に行わなければ事業開始後にリスクや混乱が生じやすいのが現実です。特に中小企業の場合、日常的な売上対応や顧客クレームに忙殺される中で、こうした“緊急度は低いが今後の経営を左右する”タスクが後回しにされがちですが、後手に回れば罰金や行政処分、商標トラブルなど大きな代償を支払うことになりかねません。

ここで活用すべきが、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」です。週や月ごとに“第二領域会議”を設定し、そこでは第一領域(売上・クレーム対応)を扱わないルールを明確化することで、経営トップや幹部がこれら登録・届け出の進捗を最優先で協議できるのです。さらに、第一領域をマニュアル化・権限委譲しておけばトップが“火消し”に駆り出されずに済み、計画的な登録作業を滞りなく進められます。

今回(ステップ6 ⑦)で提示した「法人設立後に必要となる各種登録」の全体像を把握し、税務・労務・知財など多方面の届け出を忘れずスケジュールを管理すれば、海外法人が法的にもビジネス上も万全の状態で運営をスタートする可能性が高まるでしょう。次回は「駐在員事務所 vs 現地法人:メリット・デメリット比較」を取り上げ、海外拠点をどう設計するかに関する戦略的選択肢を考察しますので、あわせて参考にしていただければ、海外進出における法人設立・運営の最適解により近づけるはずです。

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