海外進出10ステップ:ステップ7人材の確保と育成 ②「海外子会社の組織図:立ち上げ期に必要な職種と人数」 海外進出10ステップ:ステップ7人材の確保と育成 ②「海外子会社の組織図:立ち上げ期に必要な職種と人数」

海外進出10ステップ:ステップ7人材の確保と育成 ②「海外子会社の組織図:立ち上げ期に必要な職種と人数」

海外進出10ステップ:ステップ7人材の確保と育成 ②「海外子会社の組織図:立ち上げ期に必要な職種と人数」

1. はじめに

海外に子会社を設立して、実際に事業を動かす段階になったとき、どのような組織図を描き、どんなポジションにどれだけの人員を配置するかは、海外進出の成否を大きく左右する重要な要素です。特に立ち上げ期には、初期コストを抑えつつ、必要最低限の役割をカバーする体制を整えなければなりません。しかし、あまりに人員を絞りすぎると、日常業務や顧客対応、品質管理などが回らず、トラブルが頻発してビジネスが安定しないというリスクもあります。

本稿では「海外進出10ステップ」のステップ7「人材の確保と育成」第2回として、「海外子会社の組織図:立ち上げ期に必要な職種と人数」をテーマに取り上げます。前回(ステップ7 ①)で論じた「現地採用 vs 駐在員」の議論を踏まえながら、最初の1〜2年を乗り切るために最低限どんな部署・職種を用意すべきか、国や業種の違いを考慮しつつ、文章での解説中心に示します。また、組織図を作成するうえで留意するポイントや、人員配置の目安も整理していきます。最終的には自社の事業規模や将来計画に応じてカスタマイズが必要ですが、この記事が基礎的な指針となるはずです。

さらに、このような「立ち上げ期の人材配置計画」は“今すぐ売上に直結しないものの、将来の運営安定を大きく左右する”要素です。ここでOne Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」を用いれば、日常業務(第一領域)で忙殺されず、経営トップや幹部が週や月の定例“第二領域会議”を通じて人材配置を最優先議題として扱い、PDCAを計画的に回すことが可能となります。次回(ステップ7 ③)「現地スタッフの採用方法:効果的な求人と面接テクニック」では、具体的な採用活動の進め方にフォーカスする予定ですので、今回の組織図の考え方とあわせて活用していただければと思います。


2. なぜ立ち上げ期の組織図が重要か

海外進出初期は、市場の需要や競合状況の把握が十分でない状態で事業を始めることが多く、予想外のトラブルや追加対応が発生しやすい時期です。したがって、どの業務をどんな部署やポジションが担うのかを明確にしておくことが欠かせません。もし組織図が曖昧だと、担当不在や情報伝達ミスなどが増え、結果的にクレームや品質問題に直面して海外拠点の信頼が揺らぐおそれがあります。

また、立ち上げ期に予想以上の業務量が発生して、人手不足でパンクする事例は少なくありません。適切に職種を配置しておけば、トラブルシュートや顧客対応、会計処理などがスムーズに行われ、軌道に乗りやすくなります。さらに、最低限の人員で回すにも限界があるため、コスト抑制と業務カバーのバランスを見極めることが大切です。ここに戦略的な組織図策定が必要となるわけです。


3. 立ち上げ期に必要な職種と役割

企業の業種や進出先によって微調整は当然必要ですが、多くの場合、以下のような職種は最低限用意されることが望ましいと言えます。

3.1 総経理/拠点長(General Manager)

  • 役割
    海外子会社全体の運営責任を担うトップポジションであり、事業計画の実行やKPI管理、現地スタッフの指揮命令、行政・税務対応の最終責任者となる。
  • 駐在員か現地採用か
    多くの企業で本社から駐在員を派遣するケースが多いが、現地上がりの幹部を登用する企業もある。信頼できるローカル幹部がいれば文化的スムーズさがあり、一方で本社方針を強く反映するには駐在員が適している場合もある。

3.2 営業担当(Sales / Business Development)

  • 役割
    現地市場での商品・サービスの拡販、顧客との商談や契約締結を担う。リード獲得からアフターサポートまで含め、まずは最低1〜2名を配置して需要開拓を進めるイメージ。
  • 現地人材の活用
    言語・ネットワーク面でローカルスタッフが強みを発揮しやすいポジション。特殊な技術商品でなければ、現地の営業経験者を採用するメリットが大きい。

3.3 カスタマーサポート/技術担当

  • 役割
    製品の技術問い合わせ対応や不具合対応、顧客の導入支援などを行う。システム系なら技術サポート、機械系ならエンジニアが必要となる。
  • ローカルスタッフ中心か
    言語サポートや現場トラブルを考えると、ここも現地人材が有効。ただし製品知識や日本式品質意識を要する場合、駐在エンジニアを補佐に配置する企業も少なくない。

3.4 管理部門(Finance / HR / 総務)

  • 役割
    会計・経理、税務申告、社会保険手続きなど管理業務全般を担う。小規模の立ち上げ期であれば、1人が経理と総務を兼務するケースが多い。
  • 現地規制への対応
    現地通貨や税法の知識が必要であり、ローカルの会計スタッフを雇うか、外部会計事務所と契約するかの選択がある。正確な書類作成と提出期限の厳守が不可欠。

3.5 ロジスティクス/調達担当(必要に応じて)

  • 役割
    製造業や小売業などで、現地での物流・在庫管理・通関手続き・サプライヤーとの交渉を担当。
  • 現地慣習対応
    通関や輸出入管理が複雑な国では、ローカルの物流担当が不可欠。小規模なら外部のフォワーダーや物流会社へ外注して社員を置かないケースもある。

4. 組織図作成時の考慮ポイント

組織図を描く際、以下のような観点を押さえておくと、混乱や重複、漏れが生じにくい体制を構築しやすくなります。

4.1 スタート時の最小限構成

  • コスト最適化
    初期投資を抑えたい場合、各部門を1名ずつとし、総務・経理・人事を兼務させることなどで対応する。あまりに人手を絞ると業務負荷が高まり離職リスクが上がるため、バランスを考慮する。
  • 多能工アプローチ
    立ち上げ期には、一人で営業とサポートを兼任するなど、複数業務をこなせる社員を採用して柔軟に回す方法が有効。

4.2 階層と役職設定のシンプル化

  • フラット構造
    初期段階はあまり多層化せず、全スタッフが拠点長に直報告するか、小規模チームにまとめるなどで対応可能。ややフラットにすることでコミュニケーションが早くなる利点がある。
  • 将来の拡張に備える
    事業が成長した場合、マネージャークラスや中間層を増やす余地がある構造を想定しておく。立ち上げ時点では必要最小限に留めるが、拡大シナリオでどこに新しい役職を設けるかを検討しておけばスムーズ。

4.3 駐在員と現地スタッフの配置バランス

  • トップポジション
    総経理や工場長などは、企業文化や品質基準を確実に根付かせるために駐在員が担う場合が多い。一方、営業やカスタマーサポートはローカルスタッフ中心に組むなど、業務特性に応じて役割を振り分ける。
  • コミュニケーションチャンネル
    駐在員が現地語に不慣れな場合、通訳やバイリンガルのローカルスタッフを配置し、組織図で彼らを駐在員のサポート役と明確にしておくと効率が上がる。

4.4 業務外注の検討

  • 会計・税務・給与計算のアウトソーシング
    立ち上げ期は、経理スタッフを1名置きつつ、複雑な申告や監査は外部事務所に委託するパターンが多い。
  • ITサポートや物流
    規模が小さいうちは物流やシステム保守を外注し、自社で要員を抱えないのも有効。自社組織図から外した形で、外部パートナーと連携する形態を選べる。

5. 人数の目安

企業によって大きく変動しますが、海外法人の立ち上げ期において最小限確保すべき人員の例をイメージとして示します。

  1. 総経理(拠点長)/1名
    • 駐在員か現地幹部かで要検討
    • 全体統括し、現地役所や主要取引先の交渉も担う
  2. 営業担当/1〜2名
    • 製品やサービスの種類、既存顧客数などに応じて調整
    • ローカルスタッフが望ましい場合が多いが、技術系製品なら駐在員がサポートする形も
  3. カスタマーサポート/1名
    • 技術問い合わせやクレーム対応を担う
    • 立ち上げ初期は他部門と兼務が多い
  4. 管理部門(経理・総務・人事)/1名(兼務)
    • 月次の簡易経理や給与計算、備品管理などを対応
    • 複雑な税務や年次決算は外部会計事務所に委託するパターンが多い
  5. 通訳・アシスタント(必要に応じて)
    • 駐在員が現地語を話せない場合、商談や行政対応の場面でサポート
    • スタッフ数が少ないうちはパートタイムや外部契約でもよい

このように、合計5〜6人程度を最小構成とし、業種や事業規模が拡大するにつれて部門分割や人員増加を検討していくのが典型例となるでしょう。


6. 「第二領域経営®」の活用とPDCA

立ち上げ期の組織図を作るのは一度限りの作業ではなく、海外拠点が動き出すと想定以上の業務が発生したり、優秀な人材の追加採用が急務になったりと計画の修正が不可欠になる場合が多いです。ここでOne Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」を活用すれば、以下のようなPDCAサイクルを運用できます。

  1. Plan: 週や月に行う“第二領域会議”で組織図案を共有し、必要最低限のポジションや業務量を検討。役職ごとの職務内容や兼務範囲を決定。
  2. Do: 実際に採用や駐在員派遣を行い、仮の組織体制を稼働開始。スタッフが複数業務を兼任して回せるか試す。
  3. Check: “第二領域会議”で現地拠点の稼働状況を報告し、誰がどの業務でオーバーフローしているか、どこに専門人材が足りないかを共有。
  4. Act: 必要なら追加採用や外部委託を決定し、組織図を修正。既存スタッフの兼務解除や新人の教育プランなどをアップデートして、次期目標を設定する。

こうして定期的に組織図や人員数を見直して最適化を図ることで、立ち上げ期の人的リソース不足や無駄な重複配置を防げる効果が期待できます。


7. 次回予告:ステップ7人材の確保と育成 ③「現地スタッフの採用方法:効果的な求人と面接テクニック」

今回は、「海外進出10ステップ」ステップ7の第2回として、立ち上げ期の海外子会社に必要とされる基本的な職種と人数構成、さらには組織図作成のポイントを解説しました。海外拠点では本社とは異なる文化や労働市場の事情があり、想定外のトラブルや人材不足が起こりやすいため、最初から適切な部署とスタッフを配置することが事業の安定に大きく寄与します。
次回(ステップ7 ③)では、実際に「現地スタッフの採用方法:効果的な求人と面接テクニック」を取り上げ、どのようにして海外市場で自社に合った人材を見つけ、面接・選考を進めるかを具体的に案内する予定です。ここでも国ごとに異なる労働環境や求人チャネルの特徴を踏まえながら、採用活動の成果を高める実務的ヒントを提供するので、今回の組織図構築論と合わせて確認していただければ、海外拠点の人材確保が一段と円滑になるはずです。


8. まとめ

海外子会社を立ち上げる際の組織図は、企業規模や業種、そしてコスト許容度によってさまざまな形を取り得ますが、基本的に拠点長(総経理)営業担当カスタマーサポート/技術担当、管理部門(経理・総務)などの最低限のポジションは用意しないと初期運営に支障が出るリスクが高いです。加えて、日本本社からの駐在員を主要ポジションに置くか、現地採用スタッフを中心にするかは、前回議論したようなメリット・デメリットを比較検討すべきです。
こうした検討を「緊急度は低いが極めて重要」なタスクとして位置づけ、One Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」を活用すれば、日常業務に流されずに組織図策定を計画的に進めやすくなります。第一領域(売上対応やクレーム処理)をマニュアル化・権限委譲しておけば、経営トップや幹部が週や月の“第二領域会議”で海外拠点の人材配置を最優先議題に設定し、PDCAを回しながら組織図を決定・調整できるわけです。
次回(ステップ7 ③「現地スタッフの採用方法:効果的な求人と面接テクニック」)では、実際にどのように現地で求人をかけ、面接を通じて必要スキルやカルチャーフィットを見極めるかについて詳細に解説します。今回の組織図構築論と組み合わせれば、海外子会社の初期フェーズを強固に支えるチームを築くうえでより具体的な施策が見えてくることでしょう。

海外進出のご相談はOne Step Beyond株式会社へ

CONTACT
お問い合わせ

水谷経営支援事務所についてのご意見やご要望などは
お気軽に以下のフォームからお問い合わせくださいませ。