ステップ8:商品・サービスのローカライズ ⑦「ウェブサイトとアプリのローカライズ:UI/UXデザインの注意点」 ステップ8:商品・サービスのローカライズ ⑦「ウェブサイトとアプリのローカライズ:UI/UXデザインの注意点」

ステップ8:商品・サービスのローカライズ ⑦「ウェブサイトとアプリのローカライズ:UI/UXデザインの注意点」

ステップ8:商品・サービスのローカライズ ⑦「ウェブサイトとアプリのローカライズ:UI/UXデザインの注意点」

1. はじめに

海外進出をめざす企業にとって、ウェブサイトやモバイルアプリのローカライズは欠かせない要素となっています。とりわけデジタルプラットフォームを介して商品やサービスを展開する場合、単にテキストを翻訳しただけでは不十分で、ユーザーが言語や文化、使い慣れたUI/UXの流儀に即してスムーズに操作できるよう設計を見直さなければなりません。もし日本向けのデザインやインタラクションをそのまま持ち込めば、「使いにくい」「支払い方法が合わない」「入力フォームの並びが違和感」といった障害が大きくなり、現地で顧客を獲得しにくくなる可能性があります。

本稿では、「海外進出10ステップ」のステップ8「商品・サービスのローカライズ」の第7回として、「ウェブサイトとアプリのローカライズ:UI/UXデザインの注意点」をテーマに取り上げます。まず、なぜUI/UX面でのローカライズが必要かを文章で解説し、続いて国や文化によって異なるデザイン習慣や使用環境を考慮するうえで重要なポイントを示します。そのうえで、企業が実際にウェブサイトやアプリのローカライズを進める際にどのようなプロセスと留意点があるかを整理し、最後にOne Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」でこうした取り組みを計画的に推進する方法を考えていきます。なお、次回(ステップ8 ⑧「ローカライズコストを抑える:効率的な進め方と外注のコツ」)では、ローカライズ全般におけるコスト削減と効率化のアイデアを紹介する予定です。


2. ウェブサイト・アプリでなぜUI/UXローカライズが必要なのか

デジタル領域では、言語を翻訳するだけでなく、ユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンス(UI/UX)全体がターゲット文化や利用習慣に合致していないと、いくらコンテンツが良くてもリテンションが難しくなります。以下のような背景が考えられます。

  1. 文字・言語構造が違う
    アルファベット以外に、アラビア文字、キリル文字、タイ文字、漢字など多様な文字体系が存在し、それに伴う文字幅や右から左への書字方向、改行ルールの違いがUIに影響を与える。文字がはみ出したりレイアウトが崩れたり、読みやすさが大きく変わる。
  2. 文化的認知パターン
    ボタンの配置や色使いが国によって異なる慣習を持つケースがある。例えば「OKボタンは右下」「キャンセルボタンは左」などの日本的習慣が海外とは逆転する場合や、赤色のボタンが危険や警告を示す場合もあれば、必ずしもそうではない文化もある。
  3. 利用環境の違い
    モバイル端末が主流の国もあれば、依然としてPCアクセスが多い市場もある。通信回線の速度や端末の性能差が大きい地域だと、画像や動画を軽量化しないとユーザーが離脱する可能性が高くなる。また、決済やID登録の方法も国によって多様であり、UI設計に影響する。
  4. 法規制とプライバシー対応
    デジタルサービスでは各国のプライバシー法やクッキー表示ルール、利用規約の明示形態などを遵守する必要がある。これらがUIの一部として大きく反映されることがあり、ローカライズで外せない視点となる。

3. 国や文化によって異なるUI/UXの具体例

3.1 文字方向とレイアウトの調整

アラビア語やヘブライ語のように右から左へ読む言語では、UI全体を右から左に反転させることが多い。ナビゲーションメニューやスクロールの方向、ボタンの位置などを反転しなければユーザーが混乱する可能性がある。単純なテキスト翻訳では対応できないため、UIフレームワーク自体がRTL(Right-to-Left)言語対応できるかどうかが開発上の大きな課題となる。

3.2 色彩と文化的イメージ

例えば、中国では赤色はお祝いの色として好まれる傾向があり、多くのウェブサイトで赤や金が主体的に使われる場合がある。逆に日本では赤は警告やエラーを連想させる場面も多い。アラブ圏で緑色はイスラムの象徴として特別な意味を持ち、使いどころを誤ると誤解を招くこともある。これらを踏まえずに日本と同じ配色をそのまま使うと、ユーザー体験やブランドイメージが損なわれる危険がある。

3.3 マルチステップフォーム vs 単ページ

ある国のユーザーは一度に全情報を入力するページよりも、ステップごとに進むウィザード形式を好む場合がある。反対に、ステップが多すぎると離脱率が上がる文化圏も存在する。こうしたフォームの分割方法やボタン配置はローカライズの対象となり得る。ユーザーテストを行い、入力のしやすさや離脱率を比較しながら決める企業が多い。

3.4 決済フローと配送情報の表示

ECサイトやアプリでは、クレジットカード使用率が低い国ではモバイル決済や代引き(Cash on Delivery)が必須となる。また、地図や配送情報の表示方式がGoogleマップ主体か、ローカルの地図サービスを利用すべきかなど、ユーザーの慣れに合わせる必要がある。これらを省略すると決済完了までのプロセスが戸惑いにより長くなり、カート放棄が増える可能性がある。


4. ローカライズのプロセス:ウェブサイト・アプリ編

4.1 ターゲット市場の調査と設計指針の策定

まずは対象国・地域のデバイス普及状況、主要ブラウザやOS、ユーザーが好むUIパターンなどを調査する。また、文化的色彩や視覚要素の好み、法規制に関しても同時並行でチェックする。このフェーズで「日本版をどこまで流用し、どこから現地向けに大幅改変するか」の方針を概略決定する。

4.2 言語国際化とテキストエクスポート

UIやコンテンツのテキスト部分を一括で管理・翻訳できる体制を整える。多言語対応を想定して設計(i18n対応)していないと、後になってコードやデザインを大きく書き換える必要が生じる。文字列を外部リソースファイルにまとめる形や、翻訳管理システム(TMS)を活用する方法が一般的。

4.3 UIレイアウトの調整とテスト

翻訳後、文字幅や方向性が変わったことでボタンやテキストがレイアウトを崩さないか確認。RTL言語の場合の反転や、漢字圏の縦書き・横書きルール、行間などをテストする。実機やエミュレーターで実際に触ってみるユーザビリティテストを行い、問題箇所を洗い出す。

4.4 カラー、アイコン、文化的表現のローカライズ

必要に応じて、カラーリングやアイコンの意味を国別に変更する。例えば、エラーアイコンを赤三角にするのが通例な地域もあれば、別の色や形を好む文化圏があるかもしれない。写真やイラストも、宗教上NGなモチーフを避け、ユーザーに親近感を与えるローカルなビジュアルを使用するなど工夫する。単なる翻訳とは別に、デザインや映像面でのローカルレビューが欠かせない。

4.5 リリース後の分析と継続的最適化

ローカライズしたウェブサイトやアプリをリリースしたら、アクセス解析やユーザーのフィードバックを基に問題点を発見し、アップデートを重ねる。カート放棄率やフォーム入力途中の離脱ポイント、ボタンのクリック率などを見て、改良の優先順位を立てる。言語表現の細部や文言のトーンもアップデートが必要になる場合があるため、継続的にPDCAサイクルを回す体制を作ることが大切。


5. “第二領域経営®”によるUI/UXローカライズのマネジメント

ウェブサイトやアプリのUI/UXローカライズは、比較的時間とコストがかかる中長期的プロジェクトです。しかも、売上に直結しない“デザイン要素”と見なされがちなため、日常的な売上管理やトラブル対応(第一領域)に押しやられ、適切なリソース配分が行われないリスクが高いです。ここでOne Step Beyond株式会社が提唱し、商標を所有する「第二領域経営®」を導入すると以下のメリットがあります。

  1. 週や月の“第二領域会議”でUI/UXローカライズを最優先議題に
    単なる売上報告や顧客クレームに終始することなく、ローカライズ作業の進捗や成果、問題点を経営幹部が最優先で協議する場を用意する。こうすることで開発チームやマーケティングチームがスムーズに意思決定を得やすくなる。
  2. 第一領域の権限委譲で幹部を“火消し”から解放
    経営トップが店舗トラブルや問い合わせ対応に追われていると、UI/UXローカライズの優先度が下がってしまう。そこで第一領域をマニュアル化・権限移譲することで、幹部は“第二領域会議”に専念し、ローカライズ施策の合意形成やリソース割当を素早く行えるようにする。
  3. 定期的なPDCAサイクル
    リリース後のアクセス解析やユーザー満足度、離脱率などを会議でモニタリングし、必要に応じてデザインや翻訳を改修する。継続的にアップデートしていく体制を組織的に維持することで、長期的に現地ユーザーに最適化されたウェブサイト・アプリを運営できる。

6. まとめ

ウェブサイトやアプリのローカライズでは、単にテキストを翻訳するだけでなく、UI/UX全体を現地の言語・文化・デバイス環境に合わせて最適化する必要があります。これらを軽視すると、ユーザーは「使いにくい」「分かりづらい」「親しみがない」と感じて離脱し、製品やサービスの売上に直接影響を与える可能性が高いです。具体的には右から左への文字配置や色彩心理の違い、決済手段やフォント選択、法規制(プライバシーポリシー表示など)など多角的な調整が必要とされます。

こうしたローカライズ業務は、企業が短期利益に直結しないと判断して後回しになりがちな“第二領域”の活動であり、結果的にユーザー不満やブランドイメージ低下を招いてしまうリスクがあります。そこでOne Step Beyond株式会社が提唱する「第二領域経営®」を用い、週や月の定例会議でローカライズを優先議題とし、必要なリソースや施策を合意のうえPDCAを回すことで、UI/UXローカライズを計画的に成功へ導くことが可能となります。

次回(ステップ8. ⑧)は「ローカライズコストを抑える:効率的な進め方と外注のコツ」をテーマに、翻訳やデザイン、開発などローカライズに関わるコストをできるだけ低減しながら、品質を確保する方法を具体的に検討します。今回のようなUI/UXローカライズでも、外注やツール活用の工夫次第でコスト削減できる場面が多いので、あわせてご覧いただければ、海外進出の効果と効率を両立するヒントが得られるはずです。

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